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投資家に求められる資質とは?
森永 康平
2020/03/12

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概要

新型コロナウィルスの感染が世界中に拡大したことで、投資家が経済への影響などを懸念して株式などのリスク資産を売り始めました。その結果、米国株式市場ではNYダウが2月27日から7営業日続落となり、その間の下落幅は3,939ドルにもなりました。その後は米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)による緊急利下げもあり、過去最大の値上がり幅を記録するなど、株式市場が大荒れとなっています。



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誰にも将来は予測できないという事実

株式市場が荒れているため、投資を始めたばかりという方や、ここ数年で投資を始めたという方は不安や恐怖を感じていることでしょう。2000年代後半以降でもリーマンショックや東日本大震災、欧州債務危機など何度か株式市場が荒れた局面はありましたが、それらを経験していない投資家からすると、今回の急落局面には驚いた方も多いと思います。

しかし、今後もずっと投資をしていくのであれば、このような局面ともうまく付き合っていかなければいけません。先程、過去に株式市場が荒れた局面をいくつか書きましたが、もっと歴史をさかのぼれば枚挙に暇がありません。

投資歴が長くなり、ある程度知識もついてくると、このような株式市場の変動を予想しようという気持ちも出てくるのは理解できますが、それは諦めましょう。ある程度のシナリオを立てることは重要ですが、それは所詮シナリオに過ぎず、誰にも将来を正確に予測するということは出来ません。投資家としては認めたくないことかもしれませんが、自分も含めて誰にも将来は予測できないということをまずは胸に刻みましょう。

機械的な投資行動が重要な理由

それでは、将来が予測できないなら、投資家はどのように行動すればよいのでしょうか。まずは投資先を集中させずに分散させましょう。1社の株式に投資するのではなく、投資先を複数にします。そして、可能であれば投資する資産も株式だけではなく、債券などの他の資産に分散します。更に、地域も日本だけではなく米国や新興国と分散させましょう。分散することによって、予期せぬイベントが発生しても、損失を縮小化することができます。

また、投資をするタイミングや金額も、事前に決めたルールに沿って機械的に運用しましょう。急落したから投資金額を増やしたり、そのタイミングで投資をするのではなく、毎月最終営業日など特定のタイミングで、決まった金額を投資すると決め、それを黙々と続けましょう。安いところでたくさん投資して、高いところで売れば大きな利益が出るというのはその通りですが、そのようなことは誰にも出来ません。

そして最後に、必ず長期の視点で投資には臨みましょう。タイミングを計って投資をして、短期間で大きく利益を出せる瞬間もあるかもしれませんが、それは投資ではなく丁半博打に近い行為です。いつかは損失を被ります。投機ではなく投資をするのであれば、長期の視点こそが重要です。

休むも相場という格言

下図はこの1年のNYダウの推移です。上下を繰り返しながらも右肩上がりのトレンドを形成していた株価は、一瞬にして急落し、その後は大きく上下に動いています。昨今、1回急落が起きると、その後は市場の変動が大きくなる傾向にあります。

 

おそらく、今回も暫くは株式市場は乱高下を続けるでしょう。乱高下する株価を見ていると、ついついトレーディングをしたくなったり、または精神的に不安定になる方がいるかもしれません。しかし、それは投資家にとっては非常によくない状態です。相場の世界には「休むも相場」という格言があります。気になりすぎる方は、この相場格言に従って、しばらく相場から距離を取ってもいいかもしれません。

何のために投資をするのか?

このような状況だからこそ、いま一度、「何のために投資をするのか?」ということを自問自答してみてもいいかもしれません。多くの方は将来のための資産形成として投資をしていると思います。そうであれば、短期間の株価の変動によって投資方針を変えるべきではありませんし、更には短期取引をするべきではありません。

この急落局面、そしてその後の乱高下する株式市場を背景に、短期取引やレバレッジをかけた取引をしている個人投資家の話も聞きますが、少なくともそれらは「投資」ではなく「投機」だと筆者は考えます。

どうしても自分のお金を投資に使っていると、日々の株価の変動が気になります。SNSで個人投資家をフォローしていたり、ニュースサイトをフォローしていると、相場に関する情報や各個人の意見・予想が絶え間なく流れてくるため、更に気持ちが揺さぶられるかもしれません。しかし、大事なのは外部のノイズに惑わされず、自分が最初に立てた目的と方針に沿って着々と投資をすることです。そう考えると、投資家に求められる資質は鋭い分析能力や流れを読む能力ではなく、何にも惑わされない胆力なのかもしれません。

森永 康平
株式会社マネネCEO
経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
​著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
日本証券アナリスト協会検定会員。


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