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投資では中途半端な姿勢が最も危険
森永 康平
2020/07/05

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概要

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を背景に、2020年は株式市場の急落とその後の急速な戻りという激しい相場展開を見せています。一昔前であれば、この激しい値動きを見て、「やはり投資は危険だからやめておこう」という意見が散見されたのでしょうが、現在では少し様子が違います。ネット証券大手5社のNISA(少額投資非課税制度)口座は4月に約11万件と、前年同月比で2.8倍も増加しました。株式市場が大きく下落したタイミングで投資を始めて、将来の資産形成に役立てようと考える人がこれほど増えているのです。



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機械的な投資が重要な理由 

株価が下がっているから投資を始めてみよう。きっかけとしては良いと思います。しかし、実際に投資を始めたら、そのような相場の見方に基づいた投資はやめた方がいいでしょう。なぜなら、将来のことは誰にも分からないからです。株価が下がっている時に投資を始めれば有利かもしれませんが、その下げが下降トレンドにおける下げ始めの位置にあるのか、それとも終盤にあるのか。この予測は出来ません。将来が分からない以上、自分の感覚を基に根拠なくお金を投資してしまうと、ある意味ではギャンブルに近くなってしまいます。

株価が一方方向に動き続けるということは基本的には起こりえず、上がったり下がったりしながら、波を打って動きます。一番安い所で買って、一番高い所で利益を確定するのが最も効率がいいのは間違いないですが、残念ながらそんなことは出来ません。変にタイミングをはかって投資すると失敗してしまいます。

そこで、安い時に仕込もうというような欲を徹底的に排除して、淡々と機械的に投資をすることを勧めています。「ドルコスト平均法」と呼ばれることもありますが、一定のタイミングで一定の金額を投資し続けるのです。

具体的な事例を見ていこう

それでは、具体的に一括で投資をするケースと、定期的に定額を投資するドルコスト平均法の違いについて見ていきましょう。たとえば、1月の時点で基準価額が10,000円の投資信託を5万円分買うとします。これは一括投資になりますが、この場合は合計口数50,000口、投資合計金額50,000円、平均取得単価は10,000円となります。

一方で、毎月10,000円を5カ月にわたって定期的に投資するとします。当然、基準価額は変動していきます。1月に投資した方がよかったと後悔する月もあれば、1月より有利な値段で投資が出来たと喜ぶ月もあるでしょう。

下表のような値動きになった場合は、ドルコスト平均法合計口数は50,258口、投資合計金額は一括投資と同じ50,000円、平均取得単価は9,949円となります。

投資期間の値動きによって結果は変わるため、必ずドルコスト平均法が一括投資よりも有利な結果をもたらすという訳ではありません。しかし、ほとんどの人は将来の資産形成のために投資をしてみたいと思う一方で、常に相場を見続けたり、経済や企業業績を分析するなど、人生の多くを投資の為に使いたいとは思わないでしょう。ドルコスト平均法による投資のメリットは、投資にリソースを割かなくてもよいということが一番なのかもしれません。

実際のデータで検証してみる

理屈では分かるけど、実際にどうなんだろうと思う方もいるでしょう。それでは、この半年における日経平均のデータを使って検証してみましょう。昨年の最終営業日である2019年12月30日の日経平均の終値は23,657円でした。そして、ここから5月の月末まで、月の半ば(15日が営業日でない場合は直前の営業日)と月末に投資をしていったと仮定します。

ちょうど、この半年間は新型コロナウイルスの影響で、日経平均は大きく波を打ちました。グラフ中のオレンジ色の点を見てください。同じ金額を月の半ばと月末に投資していくにつれて、平均取得単価も動いているのが分かります。

年末に一括投資していた場合は取得単価は23,657円ですが、ドルコスト平均法で投資していた場合は平均取得単価は21,023円です。6月4日時点の終値は22,614円ですから、一括投資の場合は未だに元本割れになっていますが、ドルコスト平均法であれば既に利益が出ているのです。何も難しいことはしていません。月の半ばと月末に同じ金額を投資し続けただけです。これが、ドルコスト平均法の強みなのです。

中途半端な姿勢はやめよう

ドルコスト平均法をやれば投資も簡単に出来ると思いましたか。最後にもう1つ注意すべき点を書いておきましょう。それは、「中途半端な姿勢はやめよう」ということです。今回の新型コロナウイルスの影響で株価が急落して、新たに証券口座を開いた人が増えたというニュースを共有しましたが、一方で急落していくなかで、これまで積み立てていた投資をやめてしまった人も多かったという事実があります。

ドルコスト平均法は非常に優秀な投資法の1つだと思いますが、当然弱点もあります。相場が一方方向に動き続けるような展開には弱く、上下に波を打ってくれている方がいい成績を残しやすいのです。つまり、今回のような急落の時にも淡々と続けるからこそ、上昇に転じた時に早々に利益が発生するのであり、右肩上がりの時に淡々と投資をしていて、急落すると恐くなって逃げるというのは最も避けなくてはいけない行為です。

中途半端な姿勢は最も危険です。相場が下がった時にすぐやめてしまうのであれば、そもそも投資はしない方がいい。または、投資に充てる金額が大きすぎるのかもしれないので、精神的に疲弊しない金額に落として投資をすることを勧めます。

森永 康平
株式会社マネネCEO
経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
​著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
日本証券アナリスト協会検定会員。


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