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- 外資系金融機関で働く私たちの資産運用のリアル 第5回:上司Mさんの資産運用状況
ピクテ社員の具体的な資産運用例を可能な限り公開し、どのような考え・目的で運用を行っているか実際に示し、皆様の資産運用のご参考にして頂きたいと思います。また、このコラムでご紹介する資産運用例は、あくまでも個人の意見であり、当社の見解を代表するものではありません。
上司Mさんの資産運用状況
今回は、私と同世代で女性の上司Mさんの資産運用についてご紹介したいと思います。まず①投資目的、②投資期間、③リスク許容度(リスク耐性)から見ていきましょう(図表1)。①投資目的は、主にインフレ対策と老後資金の準備、②投資期間は10年以上とのことでした。③リスク許容度(リスク耐性)は高く、資産価値が一時的に50%以上減少したとしても耐えられるとのことです。前回ご紹介した私のものとほぼ同じような内容となりましたが、資産運用の中身はどうでしょうか。
図表1:投資目的、投資期間、リスク許容度
資産運用の中身を図表2で示していますが、内容は私と全く異なることが分かります。必要以上に現預金を保有せずに運用に回している点は、同じです。しかし、投資信託を活用し徹底的に分散投資を図っている点は、私と真逆の投資行動となっています。では、どのような投資信託に投資を行っているか見てみましょう。
図表2:上司Mさんの資産運用の内訳
保有している投資信託は、内外株式ファンド、内外リートファンド、特定の業種の株式に投資を行うセクター株式ファンド、特定のテーマに関連する株式に投資を行うテーマ型株式ファンド、様々な資産に投資を行うバランスファンド、金や原油などに投資を行うコモディティファンドなど、多種多様な投資信託に投資しています。投資先資産の分散を行い、加えて投資信託を通じて幅広い銘柄に分散投資も行っています。
また、投資スタンスについて聞いてみましたので、ご紹介します。これまで基本的には、保有している投資信託を売却したことはないそうです。一方で、いくつかの投資信託は何度か買い増しを行っており、そのタイミングは基準価額が大幅に下落した際とのことでした。この投資方法は私も実践しており、長期投資を行う上で大きなヒントになると思いますので、少し説明したいと思います。
長期投資の考え方
まず投資家の一般的な投資行動を説明する、プロスペクト理論をご紹介します。プロスペクト理論とは、行動経済学における代表的な理論の一つで、不確実な将来の意思決定において人間は必ずしも合理的な行動をしないということが分かりました。この理論を投資行動に当てはめると、投資家は収益よりも損失の方に敏感に反応し、収益が出ている場合は利益確定に走りやすく、一方で損失が出ている場合はそれを取り戻そうとよりリスクを取るような投資判断を行いやすいという結果が得られます。実際に、このような投資行動を取る投資家は多いと感じます。
では、長期投資を実践するため大切なことは何でしょうか。個人的には、「淡々と投資し続ける」ということだと考えます。少し利益が出ると売却して利益を確定したいという気持ちに駆られますが、ぐっと我慢することが必要です。では下落局面に遭遇し、含み損が発生した場合はどうでしょうか。プロスペクト理論によると、投資家はいち早く損失を取り戻そうと賭け的な買いをしがちです。しかし、賭けに出たからといって、必ずしも報われる訳ではありません。投資先の価格が、更に下落してしまうことも想定されます。そうなると、投資家の心理は更に不安定になり、下落に耐えられなくなってしまった結果、損失が更に拡大したところで売却してしまう可能性が出てきます。このような事態を避けるために、様々な資産へ分散投資を行い、保有資産全体の損失を小さくすることも重要であると考えます。また、もう一歩進んで、大きな下落局面を優良な資産を割安に購入できる絶好のタイミングとして捉えても良いと思います。これは、プロスペクト理論における賭け的な買いとは異なります。外部からの資金借入れなどは行わず、余裕資金を用い複数回に分けて淡々と追加購入するという考え方です。実際に私自身も、大きく下落した局面で、自身が優良と考える資産を何回かに分けて追加購入しています。
今回のコラムでは、たとえ投資目的や投資期間、リスク許容度が同じであっても、投資手法は全く異なることがお分かりいただけたと思います。まさに、投資に正解はないということを表しています。しかし、長期投資を行う上での基本的なスタンスは共通するものがありました。長期投資家にとって重要なことは、どのような局面においてもマーケットから退出せず淡々と投資を続ける覚悟なのかもしれません。
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