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- 外資系金融機関で働く私たちの資産運用のリアル 第6回:上司Mさんの資産運用状況② 日本の年金制度
私と同世代の方の中には、自分たちの年金額や受給開始年齢に、あまり期待できないと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回の解説では、日本の年金制度がどのような仕組みになっているかを理解していただき、その上で私たちの年金額がどのくらい想定されているか見ていきたいと思います。
日本の年金制度の概要
日本の公的年金制度は、20歳以上60歳未満の全ての方が加入する国民年金(基礎年金)と、会社員・公務員の方が加入する厚生年金の2階建て構造となっています。更に、企業が従業員の福利厚生の一環として運営を行っている企業年金や、自分自身で将来の年金の一部を用意する個人型確定拠出年金(iDeCo)なども存在します。これらは、公的年金ではありませんので、年金制度の3階部分と言われています(図表1)。
図表1:日本の年金制度の概要
出所:厚生労働省「知っておきたい年金のはなし」のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
日本の公的年金は賦課方式を採用しており、国からの拠出金が一部ありますが、現在給付されている年金は、私たちを含む現役世代が支払う保険料が原資となっています。私たちの世代が年金を受け取る年齢に達したときに、生活費をまかなうために十分な金額の年金を受け取ることができないと考える理由がここにあります。なぜなら少子高齢化が進む日本では、現役世代が納める保険料が減っていくと予想できるからです。しかし、年金システムを持続可能にするために、次のような仕組みが設けられています。それは、①保険料の上限を固定、②国民年金(基礎年金)の半分を国庫負担、③年金積立金の活用、④マクロ経済スライドの導入、です(図表2)。
図表2:年金システムを持続可能にするための仕組み
①については、少子高齢化が進んでも現役世代の負担が重くなりすぎないように、国民年金の保険料を16,900円、厚生年金の保険料率は毎月の給与と賞与に対して18.3%に固定されています。②については、国民年金(基礎年金)の給付費の半分を税金(国庫負担)でまかなっています。③については、将来世代の給付に充てるため、余剰分を積立金に回し、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が管理・運用を行っています。④については、現役人口の減少や平均余命の伸びなどそのときの社会情勢に合わせて、現役世代への負担が集中しないように、一定の期間、年金の給付水準を自動的に調整する「マクロ経済スライド」が導入されています。
私たちの年金額の予想
では、私たちの世代が受け取れる年金額はどのくらいになると予想すればよいのでしょうか。この点についても厚生労働省から、「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し-2019年財政検証結果-」の中で公表されていますのでご紹介します。財政検証とは、少なくても5年に一度、人口動態や出生率、日本経済の成長率、物価の見通し等の点検を行い、年金システムの持続性や健全性についての検証のことを言います。
今回の検証では、長期的な経済成長率を6つのケース※に分類し、それぞれについて現在の平均的な所得に対して年金がどの程度支払われるかを示す所得代替率※※を試算しています。弊社ストラテジス市川が詳細なレポート(年金制度は「100年安心」か?)を発行しておりますので是非そちらも合わせてご覧と思いただきたいと思いますが、要約すると、技術革新などによる生産性の向上により経済成長が進み、労働参加も進んだ場合(ケース1から3)、私たちの世代(30代~40代)が受け取る年金は、所得代替率50%程度と試算されています。ただし、経済成長と労働参加が一定程度しか進まなかった場合(ケース4から5)、所得代替率が50%を下回ると想定しています。更に最悪の場合(ケース6)、2052年度に積立金が無くなって完全な賦課方式に移行し、その後保険料と国庫負担でまかなうことができる年金給付水準は、所得代替率36%から38%程度になると予想されています(図表3)。
このように私たちの年金は、長期に渡って年金の支払いが行えるようシステムの設計がなされていますが、肝心の年金額は十分なものとは言えず、自分たち自身である程度老後資金を準備することが求められるでしょう。
※ケース1からケース6があり、最良のシナリオであるケース1から順に前提は悪化し、ケース6が最悪シナリオとなっています。
※※所得代替率:現役世代の平均手取り収入額(ボーナス込み)に対する年金額の比率。年金の給付水準のものさしとして使われています。
図表3:財政検証による年金額の試算(ケース1、ケース3、ケース5について)
※①標準的な厚生年金の額は、夫が厚生年金に加入して平均的な男子賃金で40年間就業し、その配偶者が40年間にわたり専業主婦の夫婦に2人の基礎年金と夫の厚生年金の合計額というモデル年金を前提としている。
※所得代替率50%を下回る場合は、50%で給付水準調整を終了し、給付および負担の在り方について検討を行うとされている。
※2019年財政検証で設定された長期の経済前提(6ケース)から抜粋して「ケース1」、「ケース3」、「ケース5」の3通りを示している。
※四捨五入の関係により、表中の数値による計算結果と所得代替率が一致しない場合がある。
出所:厚生労働省「2019年財政検証結果」のデータを用いてピクテ投信投資顧問が作成
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