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新NISAの年代別活用方法と注意点
森永 康平
2023/03/16

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概要

日本における個人投資家の資産運用文化のすそ野を広げることに貢献したNISA(一般NISAとつみたてNISA)ですが、2024年から制度が拡充され新しいNISAに生まれ変わります。まだ内容がすべて明らかにはなっていませんが、概要はある程度見えてきました。既に新NISAをどのように活用すべきなのか、という情報がネット上には溢れかえっていますが、今回は年代別の活用方法と注意点について見ていきます。



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新NISAの魅力とは?

まず、新NISAの魅力を確認しましょう。今回の制度変更によって拡充される内容を把握していない人もいるでしょうから、ポイントを5つにまとめてみました。1つ目は「制度の恒久化」です。これまでは「一般NISA」が2023年まで、「つみたてNISA」が2042年までと期間が限定されていましたが、恒久化されたことで誰にでも利用しやすくなりました。2つ目は「非課税保有期間の無期限化」です。従来の一般NISAでは5年間という期限が定められていたため現金化やロールオーバー(翌年の一般NISA非課税投資枠に移すこと)の手続きが必要でしたが、新NISAではその必要がなくなります。3つ目は「生涯非課税限度額の設定」です。新NISAでは1人あたり1,800万円という非課税限度額が設定されており、これまでは併用不可だった一般NISAとつみたてNISAが合体するかたちになっています。4つ目は「年間投資上限額の引き上げ」です。イメージとしては年間投資上限額がつみたてNISAで3倍、一般NISAは2倍に引き上げられました。そして5つ目は利益を確定した際に、「再び投資枠が利用可能になる」という点です。

読者のなかには既に一般NISAやつみたてNISAを活用している方も多いかと思いますが、新NISAの拡充内容は多くの個人投資家から高い評価を受けている印象です。

 

年代別活用方法

つぎに、年代別活用方法をみていきましょう。まず、20代や30代は現行のつみたてNISAと同じ感覚で活用していくことが良いのではないでしょうか。現行のつみたてNISAでは年間の投資上限額が40万円ですから、毎月3.3万円をつみたてていくことが上限となりますが、新NISAでも毎月3万円のつみたてを50年、または3.75万円を40年というように、非常に長い期間での資産運用を前提にしていいと思います。40代、50代となると、20代、30代に比べれば投資に回せる金額が増えることや、老後生活までの期間が短くなることから、毎月の投資金額を5万円や7.5万円などに増やすこともいいかと思います。

また、投資対象はインデックス投信がメインになると思いますが、20代、30代は比較的リスクを高く運用して高いリターンを期待できるように株価指数に連動するインデックス投信等を選ぶといいと思いますが、40代、50代はバランス型投信も組み込むとリスクを少し抑えることが出来るでしょう。

複利の観点からは一度始めた投資はやめないで続けた方がいいのですが、新NISAでは途中で一部解約しても、投資枠が回復するという制度になりました。住宅購入の頭金や子どもの学費などで一時的に大きな金額が必要になるかもしれないと考えてNISAの利用を控えていた方達はこれを機に新NISAの活用を考えてみてください。

また、新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠と投資資金の性質が分かれていますので、基本的にはつみたて投資枠でインデックス投信やバランス型投信をつみたて、成長投資枠で高配当/安定成長株や、新興国株の投信に投資するなど、少しアグレッシブな運用に挑戦してみてもいいでしょう。

 

新NISAの注意点

新NISAについては良いことばかりを書いてきましたが、活用を検討する価値が十分にあるというだけであって、基本的には現行のつみたてNISAの活用方法から大きく外れる必要はありません。肩肘張って、新NISAだからこれまでとは毛色の違う運用方法をやってみよう、などと考える必要はありません。

また、ネットを見ていると、いわゆる投資系のインフルエンサーがSNSや動画で生涯非課税枠の1,800万円を最短で使い切ることを推奨するシーンを目にします。新NISAでは年間投資上限額がつみたて投資枠で120万円、成長投資枠で240万円であり、成長投資枠でもつみたて投資は可能ですから、1年間で最大360万円のつみたて投資が出来るため、最短では5年間で生涯非課税枠を使い切ることが出来ます。

たしかに、その5年間がその後の何十年よりも株式市場が軟調な局面にあたれば、効率的に投資資産は増加していきますが、必ずしもそうなるとは断言できません。誰にも将来は正確に予測できないという前提があるからこそ、機械的に定額を定期的につみたてる投資スタイルが長期の資産運用には推奨されてきたわけです。

制度は個人投資家にとって改良されていきますが、資産運用をする際に心がける基本には変化はないということを胸に刻み付けたうえで、引き続き新NISAの情報への感度を高めて、2024年を迎えるべきでしょう。

 

 

森永 康平
株式会社マネネCEO
経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
​著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
日本証券アナリスト協会検定会員。


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