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外資系金融機関で働く私たちの資産運用のリアル 第8回:同僚Sさんのポートフォリオのご紹介とインプリケーション
渡久地 海
2024/09/06

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概要

ピクテ社員の具体的な資産運用例を可能な限り公開し、どのような考え・目的で運用を行っているか実際に示し、皆様の資産運用のご参考にして頂きたいと思います。また、このコラムでご紹介する資産運用例は、あくまでも個人の意見であり、当社の見解を代表するものではありません。

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同僚Sさんのポートフォリオ


久々の投稿となり大変恐縮でございますが、私が所属する部署に新たなメンバーとしてSさんが加わりましたので、Sさんのポートフォリオと共に資産形成層のポートフォリオの考え方についてもご紹介したいと思います。

まずSさんの投資目的についてですが、インフレ対策、お子様の教育費の準備、老後資金の準備となっています。投資期間は10年以上であり、リスク許容度も高いとのことです。実際のポートフォリオを図表1で示していますが、比較的リスクの高い資産が大半を占めています。その他、ご自身の運用に関するコメントもまとめておりますので、ご参考になさってください。

Sさんのポートフォリオが株式中心の構成である点は、私のポートフォリオと重なる部分です。もちろん安定的なポートフォリオという観点で見ると、投資先を債券や金といった資産に広げ、より分散化させるべきです。しかし、「人的資本と金融資産を合計したトータル資産」という概念を用いるのであれば、株式中心のポートフォリオも許容できるという考え方もありますので、ご紹介させていただきます。

図表1:Sさんのポートフォリオの概略


人的資本を考慮したポートフォリオ


本題に入る前に、ポートフォリオ構築の基礎的な考え方についてご説明します。通常ポートフォリオを構築する際、投資家のリスク許容度やリスク選好度に応じて、株式と債券の組み合わせ比率を決定します。これをアセット・アロケーションと呼び、長期的な運用成果の約9割を決定するといわれています。一般的には投資家のリスク許容度が低く安定的な運用を行いたい場合は、債券の割合が高く株式の割合が低くなり、逆にリスク許容度が高く積極的な運用を行いたい場合は、債券の割合は低く株式の割合は高くなります(図表2)。
 


図表2:ポートフォリオ構築の基礎的な考え方

投資家のリスク許容度・リスク選好度に応じて、株式と債券の投資比率を決定 → アセット・アロケーション:長期的な運用成果の約9割を決定

 



では、本題の人的資本を含めたトータル資産でポートフォリオを構築する考え方をご説明します。人的資本とは、「退職までの自分の稼ぎの現在価値を合計したもの」です。現在価値という聞きなれないワードが出てきましたが、金融の世界ではよく用いられますので簡単に解説いたします。金利が年率1%の世界において、現在の10,000円と1年後の10,000円、どちらの方が価値が高いでしょうか。正解は現在の10,000円です。なぜなら、現在10,000円は、1年後に10,100円になるためです。では逆に1年後の10,000円を現在の価値で表すためにはどうすればよいでしょうか。それは、1年後の価値を現在の金利1%で割り引くことで算出できます(図表3)。つまり人的資本とは、退職までの毎年の稼ぎを現在の金利で割って現在価値に引き直し、それを合計して計算します。



図表3:現在価値の考え方

金利1%(年率)、1年後の10,000円の現在価値は…





しかし、残念ながら人的資本を正確に計算することは難しいです。なぜなら、将来の給与や金利の予想などが非常に困難であるためです。ただし、資産特性を知ることはできます。それは、債券に近いという特性です。私たちが受け取っている給料は比較的安定したキャッシュフローであり、債券の利息収入に近いというのがその理由です。この人的資本に金融資産を合計したものを、トータル資産と考えます。資産形成層は、トータル資産に占める人的資本の割合が相対的に高いと考えられています。したがって、既に債券的な資産を多く保有している状況といえ、株式といったリスクの高い金融資産を多くもつことが可能といえるわけです(図表4)。



図表4:トータル資産で考えたポートフォリオのイメージ

トータル資産 = 金融資産 + 人的資本

 






人的資本を含めたトータル資産でポートフォリオを構築するという考え方は少し特殊ですが、資産形成層のポートフォリオを考える際の一つにヒントになると思います。しかし繰り返しになりますが、投資をこれから始める方や投資を始めたばかりの方、リスク許容度が高くない方は、まずは金融資産における分散投資の徹底を行うことが基本形といえるでしょう。


渡久地 海
ピクテ・ジャパン株式会社
資産運用推進部 シニア・コンサルタント

明治大学経営学部を卒業後、日系証券会社でリテール業務に従事し、外資系銀行を経て、2014年よりピクテへ入社。入社後はフィールド・マーケティング部にて勉強会やセミナーの講師を務め、2015年より資産運用推進室へ。2018年より投信営業第一部にて投信営業に従事し、2021年から資産運用推進部にて主に販売会社の営業員や一般投資家向けのコンテンツ作成を行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。



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