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- グロイン1年 | 運用の振り返りと市場のポイント
● 2024年7月~9月のピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(1年決算型)(以下、当ファンド)の基準価額は、長期金利の低下に加えて、AI(人工知能)の普及に伴う電力需要増大への期待や相対的に良好な業績見通しなどを背景に、上昇。
● 「グリーンシフト」を目指す公益企業は中長期的な成長が期待され、株価の調整は中長期的な投資機会になるとみる。
■ 当ファンドのパフォーマンス
※長期のパフォーマンスは本レポートの最後に掲載しています。
■ パフォーマンスの変動要因
【2023年10月~2024年9月(過去1年間)】
当該期間でパフォーマンスへのプラス寄与度が大きかった主な銘柄は、ネクステラ・エナジー(米国、電力)、PSEG(米国、総合公益事業)、サザン(米国、電力)などでした。ネクステラ・エナジーは、2024年第1四半期および第2四半期決算の内容が好調であったこと、また米国における電力需要増大への期待などを受け、上昇しました。PSEGは、投資家向け説明会で、送電・配電ビジネスへの投資額増額を中心とした今後の設備投資計画を発表したこと、また同社が将来恩恵を受けるとみられる、AI(人工知能)の普及に伴う電力需要増大への期待などを背景に上昇しました。サザンは、設備投資計画を上方修正したことや、2023年第4四半期決算において増益となったことに加えて、長期間延期になっていた発電設備の運転が開始されたことなども好感され、上昇しました。
一方、マイナス寄与度の大きかった主な銘柄は、RWE(ドイツ、独立系発電・エネルギー販売)などでした。RWEは、2024年に入り欧州の電力価格が下落したこと、また電力価格下落を受けて2024年の収益見通しがレンジの下限になるとの予想を発表したことなどを背景に下落しました。また、デンマークの電力銘柄も金利上昇、税額控除の変更などを理由に、米国の洋上風力発電開発に関連する減損処理が必要であると発表したことなどにより株価が下落しました。
【2024年7月~9月(過去3ヵ月)】
当該期間でパフォーマンスへのプラス寄与度が大きかった主な銘柄は、PSEG、アメレン(米国、総合公益事業)、ネクステラ・エナジーなどでした。PSEGは、同社が所有する発電施設などが、AI・データセンターの拡大や電化の進展によって、クリーンエネルギーを用いた電力需要増加の恩恵を受けると期待されることなどから、上昇しました。アメレンは、2024年の業績予想と長期の1株当たり利益(EPS)成長見通しを再確認したことなどが上昇要因となりました。ネクステラ・エナジーは、7月に発表した2024年第2四半期の決算において、2024年の業績予想を再確認したこと、米国におけるクリーンエネルギーの需要見通しが引き続き堅調であることを確認したことなどを受け、上昇しました。
一方、マイナス寄与度の大きかった主な銘柄は、センターポイント・エナジー(米国、総合公益事業)などでした。センターポイント・エナジーは、7月に発生したハリケーンの影響で、同社のサービス地域で広範囲に渡る停電が発生したことなどが下落要因となりました。
■ 2024年7月~9月(過去3ヵ月)の投資行動
当該期間の売買に関しては、センターポイント・エナジーを、同社のサービス地域を襲ったハリケーンの影響による短期的な株価下落を好機とみて、買い増しました。相対的に割安な株価水準、良好な業績見通し、ディフェンシブ性(業績が景気に左右されにくい特性)などを評価し、アメレンや米国の電力銘柄などを買い増ししました。さらに、エクセロン(米国、電力)の設備投資計画などを評価し、同銘柄を買い増しました。
一方、PSEGや米国の陸上運輸銘柄を利益確定のため、一部売却しました。また、2024年は好調な業績を上げているものの今後の電力価格の変動を考慮し、フィンランドの電力銘柄を利益確定のため、一部売却を行いました。
■ 今後の見通し、運用方針
米大統領選、主要国の金融政策動向、地政学的リスクなどの先行き不透明感が高まるなか、株式市場や為替市場の値動きが大きくなっており、より慎重な投資姿勢が必要と考えます。
こうした市場環境下、世界公益株式は、(1)米国利下げ開始で金利面でのマイナス要因が後退していること、(2)株価収益率(PER)は相対的に割安な水準であること、(3)データセンターの増加などによる電力需要増加、グリーンシフト(クリーンエネルギーによる発電への移行)による設備投資の拡大などを背景に、業績見通しが良好であること、(4)市場の不透明感が高まるなかでは、特に当ファンドが注目する規制下の公益事業の、業績が底堅くかつその見通しの確実性が高く、ディフェンシブ性(業績が景気に左右されにくい特性)に注目が集まると考えられること、などが、公益株式の株価を下支えするとみています。
米大統領選後のエネルギー政策による公益企業への影響に関しては、米国規制下の公益事業は、一定の利益を確保したうえで、税金や燃料費、資金調達コストなどの増加を料金に転嫁できる仕組みを有していることから、政策如何による利益への中長期的なマイナスの影響は少ないとみています。
■ 中長期保有に当たってのポイント
中長期的には世界的に電力などの需要拡大が予想されており、公益企業の事業環境は良好との見方には変わりありません。
ウクライナ危機をきっかけとしたエネルギー安全保障問題などを背景に、主要国・地域の脱炭素化に向けた政策強化の動きが進展しています。これらの動きは、風力、太陽光、水力などのクリーンエネルギー発電の拡大やこれらの発電を支えるための送電網の拡大を後押しするとみられ、長期にわたって公益業界の成長に寄与し、グリ-ンシフトを目指す公益企業の株式にプラスになるものと期待されます。
当ファンドでは、クリーンエネルギーによる発電の割合が高い企業に注目しています。さらに、米国の規制下事業の比率の高い銘柄は景気に左右されにくく、収益見通しが安定していることから、組入れを高位にしています。また、公益企業に対してエンゲージメント(対話)を行い、グリーンシフトを促しています。
(以下、当該期間の注目すべきトピックについて解説します。)
■ 世界公益株式は年初来高値を更新し、主要金融資産と比べて堅調に推移
世界公益株式は、2024年9月に入ってからも年初来高値を更新し、対世界株式相対パフォーマンスの直近のボトムから足元(2024年2月26日~10月1日)にかけては、主要金融資産を上回って上昇しています。
これまで足枷となっていた米国の長期金利の急上昇が一服したことや、膨大なデータを処理する生成AI(人工知能)の利用が広がり、電力消費の多いデータセンターの建設が相次いでおり、関連する公益銘柄に注目が集まったことや、また、世界経済の先行き不透明感が高まるなか、業績が景気に左右されにくく、見通しの安定しているディフェンシブ性が注目されたことなどが、株価の押し上げ要因になったと考えられます。
■ 公益株優位に転換した2000年当時と足元の市場環境が類似
過去の実績では、およそ2000年から2008年にかけて、世界公益株式のパフォーマンスは世界成長株式に対して優位となりました。その後、2009年以降は世界成長株式が優位となりました。
足元では、公益株優位に転換した2000年当時の市場環境との類似点がいくつかみられることから、再び公益株が優位となる可能性もあるとみています。
以下が類似している点です。
1)高い水準だった米国の政策金利の引き下げ開始
(過去:6.5%をピークに2001年1月から利下げ開始、現在:5.5%をピークに2024年9月に利下げ開始)
2)世界公益株式の株価収益率(PER)は世界株式と比べて相対的に割安な水準
3)世界の公益企業の設備投資の拡大
(過去:2000年代は石炭から天然ガスへの発電源のシフト、
現在:足元では、グリーンシフトやデータセンター増加による電力需要拡大)
■ 株価収益率(PER)は世界株式と比べて割安な水準
世界公益株式の対世界株式の相対PERは、増益が予想されているにも関わらず株価は依然として出遅れており、割安な水準となっています。過去の実績では、世界公益株式の対世界株式の相対PERが底打ちした後に投資を開始した場合、その後の世界公益株式のパフォーマンスをみると、堅調に推移しており、現在は世界公益株式の中長期的な投資機会であると考えています。
■ 公益株式の1株当たり利益は増加が予想される
データセンター拡大などによる電力需要の増加や、グリーンシフトの進展などを背景に世界公益株式の1株当たり利益(EPS)の市場予想(12ヵ月先)は、足元で増加基調が継続しています。
■ 世界的に風力や太陽光発電中心に電力設備の拡大が予想される
世界的に、1)ネットゼロを推進する政策の動きや風力、太陽光発電などのクリーンエネルギーの発電コストの低下、2)AI(人工知能)関連、データセンターや電気自動車(EV)の増加などによる電力需要の拡大などを背景に、風力や太陽光発電中心に電力設備の拡大が予想されています。
風力、太陽光発電などのクリーンエネルギーの発電コストは技術革新による発電効率化や発電施設の大規模化等により低下し、これまでの石炭などの化石燃料による発電に対して経済合理性が伴う(=低コストで発電できる)ようになっています。
■ (ご参考)設備投資の拡大は、世界公益株式の業績、パフォーマンスに寄与
過去の実績では、世界公益株式のパフォーマンスは設備投資と連動性が高くなっています。この背景には、主な規制下の公益事業では設備投資による新規設備の増加により、電力料金認可の元になる資産額が増加することに加えて、多くの場合、発電容量も増加することから、設備投資の拡大は、増益につながりやすく、株価の上昇要因になると考えられます。
■ (ご参考)米国の規制下の公益事業では、設備投資の拡大は利益増要因に
一般的に世界の規制下の公益事業では、発電などのコストに加えて、そこから得られる利益水準も考慮して、電力料金などの公共料金が各国・地域の規制当局によって決められています。
規制下の電力料金をはじめとした公共料金の計算方法は複雑で国や地域によって異なりますが、当ファンドの投資比率の高い、米国の規制下の電力料金決定の例を簡略化してみると、料金は発電施設等の設備の金額(資産価値、レートベース)に対して一定の利益を確保する算定レート(長期金利の水準や利益率等などを勘案し算定)を掛けて、燃料費などのコストをプラスして設定されます。このため、設備投資を拡大し、発電施設の資産価値が増加すれば、増益要因となる仕組みになっています。
米国の規制下では、電力不足による停電や設備の老朽化による事故などを防ぐため、公益企業に設備投資を増やすと電力料金の値上げが可能になり、利益を増やすことができる仕組みを提供することで、状況に応じて公益企業の設備の更新や拡大を促しています。
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ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(1年決算型)
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