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米国株か?世界株か? PART 2
田中 純平
2020/08/07

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概要

前回のDeep Insightレポートでは、バブルの歴史を振り返りながら米国株に対する世界株の優位性について考察した。今回はバリュエーションや相関係数といった定量的な分析から、世界株の投資意義について検証する。結論から言えば、長期的な視点に立った世界株への分散投資は、定量的な観点からも正当化されるのではないかと考える。



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バリュエーション格差が拡大する米国株

PBR(株価純資産倍率)でみたMSCI米国株とMSCI世界株(除く米国株)のバリュエーション格差は2007年以降、拡大傾向にある(図表1)。米国株の場合、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoftの頭文字)といったROE(自己資本利益率)の高い大型成長株が米国株を牽引したこともあって、PBRは上昇傾向にある。一方、世界株(除く米国株)は、GAFAMのような大型成長株が不在だったこともあり、PBRにおける米国株に対するディスカウント率(世界株(除く米国株)PBR÷米国株PBR-1)は今年7月末時点で-58%と、すでに2000年のITバブル期のピークを超えており、米国株の割高感が高まっている。

また、MSCI米国株のMSCI世界株(除く米国株)に対する相対パフォーマンスは2010年から米国株優位の展開となっており、一極集中の傾向が長期化していることが分かる(図表2)。しかし、過去の歴史を振り返れば、特定の国・地域が継続して高いパフォーマンスを示すことはまれであり、いつまでこの傾向が続くかは定かではない。

世界株=米国株ではない理由

MSCI世界株指数における米国株の構成比率は今年7月末時点で66%だ。一見すると世界株では十分な分散効果が得られないようにも思われる。しかし、MSCI世界株指数と同米国株指数の相関係数の推移を見ると、直近こそ0.99と非常に高い相関を示すものの、相関係数は常に変化しており、過去必ずしも高い数値を示していたわけではなかった(図表3.)。むしろ、86年~96年当時はかなり相関が低かったといえる。これは、局面に応じて株価パフォーマンスや国別構成比率が大きく変化することなどが背景にある。国際分散投資が容易になったことで近年は相関係数が高く出やすいとの指摘もあるが、それでも2006年4月、2013年5月、2017年10月の前後では相関係数が低下しており、今後も相関係数が高止まる保証はどこにもない。好調が続く米国株に投資しつつ、割安な米国以外の国にも分散投資を行う世界株への投資は、理にかなっているのではないだろうか?


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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