- Article Title
- 米国の金利体系が大きく変化する可能性
米国1月の雇用統計はマーケットの予想を大きく上回り、労働市場の改善を映すものとなった。特に注目されるのは平均時給で、コア消費者物価指数との連動性の強さから、米国のインフレ率が高止まりする可能性を示唆している。3月の次回FOMCにおいて、50bpの利上げも検討対象になるだろう。今後、米国の長期金利に一段の上昇圧力が掛かる可能性は否定できない。
上昇する賃金:市場はインフレに依然として懐疑的?
1月の米国雇用統計では、平均時給が前年同月比5.7%上昇した。これは、新型コロナ禍による特殊要因で統計がぶれた2020年を除けば、1982年7月以来の高い伸びだ。産業別求人数が7か月連続で1千万人の大台を超え、空前の売り手市場となるなか、事業主は十分な賃金を払わなければ必要な人員を確保できない状態と言える。結果として、就業を回避していた層も雇用市場へ復帰しつつあるようだ。
賃金の大幅な上昇はインフレ圧力に直結する。横軸に1971年以降の平均時給上昇率、縦軸にコア物価上昇率をとると、2次回帰曲線は右肩上がりだ(図表1)。決定係数(R2)が0.64なので、この曲線には統計的に見た一定の説明能力が認められる。つまり、賃上げ率とコア消費者物価上昇率には正の相関関係があり、賃上げ率が高くなれば、物価へのインパクトはより大きくなると言えるだろう。
1月の雇用統計の結果を受け、10年国債の利回りは2019年12月以来の1.9%台になった。もっとも、10年国債とインフレ連動債の利回りから算出された市場が織り込む期待インフレ率は、足下、2.4%台に止まっている(図表2)。
従来、期待インフレ率は12ヶ月後のコア消費者物価上昇率を概ね正確に予測してきた。しかし、現状、大きなギャップが存在しているのは、30年間に亘る物価安定期を経て、市場がインフレの定着について未だ懐疑的だからではないか。
次回FOMC:3月の雇用統計次第で50bpの利上げ検討も
今年に入ってFRBによる利上げ観測が強まり、2~5年債の金利は急上昇した(図表3)。他方、10年債以上の市況が相対的に落ち着いているのは、マネタリーベースの供給残高が依然として歴史的高水準にあるなか、利回りの高さが資金を惹き付けていることも要因と言えよう。
ただし、雇用のひっ迫による高い賃金上昇率はインフレの長期化を示唆している。2月の雇用統計の結果次第では、3月15、16日のFOMCで50bpの利上げが検討される可能性も否定できなくなった。長期金利には上昇圧力が掛かるだろう。
金利の変化は、資産市場のバリュエーションに大きく影響する。長期債のみならず、ハイイールド社債や株価収益率(PER)の高い成長株などについては、より慎重なスタンスで臨むべき時期が来たのではないか。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。
手数料およびリスクについてはこちら
ディープ・インサイトの記事一覧
日付 | タイトル | タグ |
---|---|---|
日付
2024/12/20
|
タイトル USスチール買収審査は分断の象徴か!? | タグ |
日付
2024/12/20
|
タイトル 日銀植田総裁は想定よりハト派だった | タグ |
日付
2024/12/18
|
タイトル スイス中銀はマイナス金利へと向かうのか? | タグ |
日付
2024/12/13
|
タイトル 企業倒産件数が示す変化 | タグ |
日付
2024/12/12
|
タイトル 史上最高値を更新したS&P500に死角はないのか? | タグ |
日付
2024/12/06
|
タイトル 日本企業の問題点 法人企業統計より | タグ |
日付
2024/11/29
|
タイトル 大型経済対策は役に立つのか? | タグ |
日付
2024/11/29
|
タイトル 米短期金融市場とQTの今後を見据えた論点整理 | タグ |
日付
2024/11/25
|
タイトル 日銀金融政策決定会合、どこに注目すべきか | タグ |
日付
2024/11/22
|
タイトル トランプ政権下における金融政策 | タグ |