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70年代の再来か?データで読み解くスタグフレーション・リスク
田中 純平
2022/03/14

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概要

70年代前後では米CPIの上昇率が加速すると米ISM製造業景気指数が急落する傾向が見られたことから、今後さらにインフレ率が加速すれば景気の下振れリスクが高まるだろう。また、米ミシガン大学消費者態度指数が大幅に低下する中で、米FRBが利上げを開始した前例が無い点も気掛かりだ。いよいよスタグフレーション・リスクに備える局面が到来した可能性がある。



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1970年代前後では米CPIが上昇トレンドに入ると米ISM製造業が下降トレンドに入る傾向に

主要先進国によるロシアへの経済制裁等を背景としたコモディティ価格の上昇によって、米国CPI(消費者物価指数)の上振れリスクが高まっている。

3月10日に発表された米国2月CPI(季調前)は前年比+7.9%と約40年ぶりの高い伸び率となったが、2月の米国CPIはウクライナ情勢が緊迫化した後のコモディティ価格の上昇が十分反映されていないため、3月以降のCPIはさらに上昇圧力が高まる可能性がある。

警戒すべきは景気の下振れリスクだ。1970年代前後の米国では、CPIが上昇トレンドに入ると景気先行指標として注目される米ISM製造業景気指数が時間差を伴って下降トレンド入りする傾向があり、最終的には好不況の境目である50を下回っていたことが確認できる(図表1)。つまり、CPIの絶対水準よりも方向性(インフレが加速しているか)のほうが景況感を左右しやすいと考えられる。

直近の両指数の動きをみると、米国CPIの上昇トレンドは加速しているものの、米国ISM製造業景気指数の下降トレンドはまだゆるやかであり、依然として50を上回っている(図表2)。1970年代前後の経験則が今回も当てはまるとすれば、今後は米国ISM製造業景気指数がさらに低下し、景気が下振れるリスクも視野に入れる必要がある。

米消費者態度指数が60を下回る場面で、米FRBが利上げを開始した前例は無い

景況感の悪化リスクは企業だけではない。米国の消費者マインドを示す3月米ミシガン大学消費者態度指数(速報値)は59.7と、2月(確報値)の62.8からさらに低下した。この指数が60を下回ることはまれであり、統計開始(1978年1月)以降で計13回しか発生していない(注:3月確報値で数値が修正される可能性あり)。さらに注目すべきは米FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策だ。過去、同指数が60を下回った局面では米FRBは緩和的な金融政策を行っていた(図表3)。逆に言えば、60を下回った局面で利上げを開始した前例は無いことになる。

インフレを抑制するための利上げは必要だが、過度に利上げを行えば景況感をさらに悪化させるおそれがある。いよいよ本格的にスタグフレーション・リスクに備える局面が到来した可能性がある。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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