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- 苦境に直面するドイツのエネルギー戦略
地球温暖化抑止に向けたエネルギー戦略でフロントランナーであったドイツが苦境に直面している。ベースロード電源の燃料として期待されてきた天然ガスの調達に支障が生じている上、再生可能エネルギーが伸び悩んでいるからだ。電力価格の高騰を受け、ショルツ政権は石炭の活用を検討せざるを得なくなった。これは、日本のエネルギー戦略にも大きな影響を与えるだろう。
ドイツ:石炭・褐炭回帰の可能性
ドイツでは、昨年、電源構成における再生可能エネルギーの比率が、18年ぶりに低下した(図表1)。2020年の44.9%から、一気に4.0%ポイント下落している。主な理由は、欧州全体を襲った異常気象により、主力の風力が陸上、洋上合計で3.6%ポイント落ち込んだことだ。もっとも、太陽光、バイオマスもそれぞれ前年を0.1%ポイント下回っており、同国の再エネシフトは全般に停滞の兆しを見せた。
一方、電力料金は大幅に値上がりしている(図表2)。ドイツ政府は、昨年10月15日、再生可能エネルギー法(EEG)に基づく2022年のサーチャージを1kWhにつき3.72セントと決定、2021年の6.50セントから42.8%引き下げると発表した。それでも、今年上半期の家庭向け電力料金は37.14セントであり、昨年の31.89セントから16.5%上昇している。最大の理由は、燃料費の増加だ。結果として、調達・販売コストは昨年の7.83セントから14.46セントへほぼ倍増している。
ドイツのエネルギー戦略は、再エネ比率を高めると共に、今年中に脱却する原子力、段階的に使用を削減する石炭・褐炭火力の穴を天然ガスで埋めることを軸としてきた。そのため、ロシアとの間で新たなパイプライン、「ノルドストリーム2」の計画を進めてきたのである。しかしながら、ロシアによるウクライナ侵攻により、この戦略には大きな狂いが生じた。
5月8日のシュレスウィヒ・ホルシュタイン州、同15日のノルトライン・ウェストファーレン州の州議会議員選挙では、オラフ・ショルツ首相率いる社会民主党(SPD)が大敗を喫した。電力価格など物価の急上昇が、与党批判になったのだろう。
6月23日、ドイツ政府は今冬の燃料不足を回避するため、燃料管理の警戒レベルを3段階の2に引き上げた。緑の党出身のロベルト・ハーベック経済・気候保護大臣は、休眠している石炭火力発電所の再稼働を示唆している。同国にとっては大きな戦略転換と言えるのではないか。
日本:参院選後に新たな方向が示される可能性
ドイツの直面するエネルギー問題は、日本にとり極めて示唆に富む。再エネ比率の引き上げが重要な課題であると共に、計算できるベースロード電源の確保も併せて行う必要があることを浮き彫りにしたからだ。また、資源大国ロシアによるウクライナ侵攻を通じて、エネルギーは経済問題であるだけでなく、安全保障上の課題であることが再確認された。
岸田文雄首相は、参議院選挙の論戦において、原子力発電所の再稼働に強い意欲を示している。一方、古い発電所の建替え、新設については明確な表現を避けてきた。
ウクライナ戦争が長期化の様相を見せ、ロシアによる西側諸国へのカウンター制裁が実施されつつある。そうしたなか、参議院選挙後、日本政府が原子力政策に関し新たな方向を示す可能性が高まったと言えるのではないか。
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