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共同投資におけるサステナブルなアプローチ
2024/09/10

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概要

ピクテのプライべート・エクイティ・インベストメント・マネージャーである二コラ・トーマス(Nicolas Thomas)が、ESG要因を組み入れた共同投資について質問にお答えいたします。



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共同投資案件のデューデリジェンスに、どのようにESG(環境・社会・企業統治)要因を組み込んでいますか?

私たちは、データを収集することは、それを活用しなければ意味を持たないと考えています。ピクテは、ジェネラル・パートナー(GP) のESG投資の経験と投資慣行を評価し、ベンチマーク比較を行い、ESGに対する取り組みに遅れがみられるマネージャーとのエンゲージメント(対話)を通じて積極的にフィードバックを行い、業界全体の水準の引き上げを目標に期待を共有したりします。また、より質の高いデータが入手出来るよう、2021年秋に設立された「ESGデータ・コンバージェンス・イニシアチブ(EDCI)」に、運営委員会メンバーとして、参加しています。EDCIが収集・統一したデータは、投資業務を行う際にも、マネージャーとのエンゲージメントに優先順位を付ける際にも役立っています。

ピクテが共同投資に求める条件は、5つの柱、即ち、温室効果ガス排出量の削減、持続可能な消費財および農業、汚染防止、循環経済の4つの柱と、それら4つの柱を支える技術、のいずれかに合致していなければならないということです。投資案件が1つ、または複数の柱に合致している場合には、売上の伸びが見込まれるかどうかや、環境関連の重要業績評価指標(KPI)が正しい方向に向かっているかどうかを確認します。

企業の環境寄与度の測定も重要ですが、特に中小企業にとっては、測定が困難な場合もあり得ます。そのような場合には、製品の環境ライフサイクルと温室効果ガス排出量に対する理解を増すために、投資対象企業の経営陣との連携を図ります。これにより、新たな資金調達や事業売却に際して、データを示せることができれば、潜在的な投資家の数が増え、バリュエーション(評価)にも好影響を与えることができます。これは、最終的に価値を創出することにつながります。


プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)の枠組みについてご説明いただけますか?

プラネタリー・バウンダリーは、スウェーデンにあるストックホルム・レジリエンス・センターが開発した概念です。ピクテは、投資機会の総合的な評価的を行うために、この枠組みに基づいた独自のモデルの開発に多くの資源を費やしました。この枠組みは、様々な事業セグメントと投資の関連付けを可能にし、プラネタリー・バウンダリーの9項目に基づいた、企業の経済活動に起因する温室効果ガス排出量の予測を可能にします。

ピクテでは、このモデルを数年前から株式投資に活用しており、プライベート・エクイティ(未公開株式)投資にも導入し始めたところです。もっとも、ビジネスモデルが革新的で、開発後間もない技術が使われているような場合には、事業セグメントと企業との関連付けがやや難しく、ある程度の調整と、調整のための時間を要します。

プラネタリー・バウンダリー・モデルを使えば、投資案件が実行したいものかどうかを、短時間で評価することが可能です。企業の事業活動の平均的な環境負荷が大き過ぎる場合には、投資を断念します。しかし最も興味深いのは、企業の事業活動が9つの限界値のそれぞれに及ぼし得る負荷がモデルによって示されることで、エンゲージメントの機会が創出されることです。

例えば、温室効果ガス排出量を削減することで多大な貢献をする一方で、生物多様性に負の影響を及ぼす企業があったとしたら、原因を究明し対応策を講じるためにジェネラル・パートナー、企業経営陣とのエンゲージメントを行う機会が生まれます。




ESG投資の規模はどのようなものですか?

ピクテには、少なくとも週に3件から4件の共同投資案件が持ち込まれます。アーリーステージの中でも特に初期の段階にある企業や、ジェネラル・パートナーが優れた実績を持っていない場合など様々な状況がありますが、案件数やその規模が実感出来ることは利点です。環境に特化した企業が増えていることもあり、ピクテは多くのESG特化型ファンドに投資をしています。

同時に、大手のベンチャー・キャピタルや、グロースおよびバイアウト・ファンドの多くが、環境テーマ投資への資金配分を引き上げていることも注目されます。


環境が説得力あるテーマである理由は何ですか?また、最も興味深いと考えるサブセクターにはどのようなものがありますか?

ピクテは、喫緊の環境課題に取り組む企業に投資することで、高い投資収益が実現出来ると確信しています。バイアウト投資では、事業を確立した企業が、高い利益率と20~30%の投資収益をあげている状況が散見されます。環境特化型投資の場合には、技術革新あるいは法規制の変更に関するリスクが相対的に低いと考えますが、これは、環境投資が将来の経済に投資しているからです。

収益期待に見合う環境投資テーマの好例が、高インフレを背景に優先度が高まっているリサイクル事業です。ピクテは、空調システムから排出される有害ガスのリサイクル事業に投資しています。環境課題に積極的に取り組みつつ、高い利益率を維持し、力強い成長を続けている企業です。

 

「ピクテは、喫緊の環境課題に取り組む企業に投資することで、高い投資収益が実現出来ると確信しています。」

 

どれほど魅力的なセクターでも、効果的なバリュエーション水準で買うことが極めて重要です。電気自動車(EV)を例に取ると、電池生産分野はバリュエーションが既に高過ぎると判断し、バリューチェーン上の他の分野を調査し、EV生産に不可欠な磁石生産に特化する企業への投資を決めました。EVの普及に伴って上値余地が見込まれることに加えて、相対的に魅力的なバリュエーションで上昇トレンドに乗ることが出来たのです。

セメント事業も有望だとみています。建設セクターは、世界の温室効果ガス排出量の6~8%を占めています。カーボンニュートラルなセメントの生産に必要な技術が多数開発されているものの、採算が取れるものは見当たりませんが、投資可能な機会を探し続けたいと考えています。人工培養肉にも注目していますが、今のところは投資価値があるように思われません。


環境分野の共同投資で成功する鍵は何ですか?

共同投資の成否は、確立されたネットワークと、的確かつ迅速な決断を下すための専門知識があるかどうかで決まります。ピクテは、常にパートナーシップの精神を重視してきました。また、支援するジェネラル・パートナーと緊密な関係を保ち、パートナーや資産を熟知する、信頼に値する存在だと自負しています。



また、提案を即座に断ることは、受け入れることと、恐らく同等に重要であることも理解しています。ピクテのチーム・メンバーは、ほぼ全員がPEに直接関わった経験を持っています。従って、投資案件についての綿密な調査を行い、価値を創出する手段について、経営陣と対話する意思と能力を持っています。ピクテは、投資案件の規模には柔軟な姿勢で臨み、過去30年を通じて投資家との約束を実現してきました。チームは豊富な経験を持ち、効率のよい共同投資を行っています。


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