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金価格、過去最高値更新とその先
2025/03/17

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概要

・金には長期的な価格の上昇を下支えする複数の要因が存在する
・金は変動の大きい資産だからこそ長期的な視点での投資が重要



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過去最高値を更新した金価格 

金のスポット価格は2025年3月14日に過去最高値を更新し、一時3,000ドル/トロイオンスを上回る水準となりました。2025年1月の米国のトランプ大統領の就任以降、米国の強硬な追加関税政策や、中国や欧州連合(EU)などによる報復措置を受けて世界経済の先行き不透明感が強まったほか、米国の景況感の悪化に伴い米国の金利が低下したことなどが金価格の上昇要因になりました。


今後については、目先は3,000ドル到達の達成感による利益確定売りなどから値動きが大きくなる可能性がある一方、これまで金価格の上昇を支えてきた複数の要因の多くは、短期的には大きく変化しないことが想定されます。以降では、金価格の上昇トレンドを下支えすると考えられる要因についてご紹介します。

短期的には米国の金利や米ドルの動向が金価格の変動要因に

今後数ヵ月といった極めて短期の見通しにおいては、米国の景気見通しを背景とした米国金利や米ドルの動向が注目されます。金は利息を生まない資産であるため、金利の低下は金の相対的な魅力の向上に繋がり、金価格が上昇する傾向があります。また、金は一般的に米ドルの代替資産と見なされることから、米ドルが下落(米ドル安)する場面で金価格は上昇する傾向があります。関税や行政改革などの米国の政策が景気見通しに関する不確実性を高めている中で、米国の景気減速懸念に伴い米国の金利が低下した場合や、これに伴う米ドル安などが、金価格の押上げ要因になると考えられます。

中長期的にはインフレと通貨価値の低下が金価格の支援材料に

金価格を支える中長期的な要因として、インフレの高進が考えられます。世界的に保護主義が台頭する中、世界の分断が進むことで(=グローバリゼーションの後退)、人やモノの流れが滞留し、結果として多くの財やサービスの価格が上昇する可能性があります。そうした中、金は希少性などからインフレに対するヘッジ手段として選好される傾向にあり、中長期的には金への需要が高まるものと考えられます。

また、主要国の政府債務の増加が見込まれることも、金価格の上昇要因になると考えられます。米国では、減税や軍事費の増額などにより財政赤字の拡大と政府債務の増加が懸念されるほか、欧州でも、歴史的に緊縮財政を維持してきたドイツが防衛費の増額などのため財政拡大路線に転換する方針を示すなど、先進国を中心に世界の政府債務の増加が懸念されています。一般的に、政府債務の増加は通貨供給量の拡大を伴うことから、通貨価値の低下要因になるほか、通貨に対する信認の低下に繋がる可能性があります。このような場合においては、実物資産としてそのもの自体に価値を持ち、より希少性の高い金に対する需要が高まると考えられます。

不確実性の高まりを背景とした金需要の増加

主要先進国に対して安全保障の傘を提供してきた米国の方針転換に伴う、世界情勢の不安定化も資金の逃避先として金の需要を高めることに繋がると考えられます。

さらに、中央銀行による金購入の継続も金価格を下支えする要因になると予想されます。近年、インフレや世界経済の見通しが不透明となる中で世界の中央銀行の金購入は急速に拡大し、2022年以降は過去最高水準で推移しています。金価格の上昇に伴い、今後の購入量は過去数年を下回る可能性があるものの、中央銀行による金購入は世界経済の見通しが不透明となる中で継続し、引き続き金価格を支える要因になると考えられます。

金価格が足元で過去最高値圏で推移する中では、利益確定の動きなどを受けて短期的には価格変動が大きくなる可能性があります。また、米ドル安・円高が進行した場合、円ベースでは金価格が下落する可能性があることには留意が必要です。しかしながら、今後も金にとって好ましい投資環境が続くと考えられることから、中長期的な金価格の上昇トレンドは継続することが予想されます。


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