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- “持たざるリスク”顕在化の兆し~新興国株式市場の意外な姿~ <萩野琢英 × 野中靖>
マーケットを知り尽くしたプロが多様なトピックを語り合う動画コンテンツ「Pictet Market Lounge」。萩野琢英と投資情報部長の野中靖が、堅調な動きを見せる新興国株式市場について語りました。
以下は二人の対談の中で触れられたトピックです。
- 新興国企業の業績は、昨年4-6月期を底に大きく改善の動きを見せている。
- 資源関連などで堅調な動きを見せる新興国株式の傍らで、その保有を減らしていた投資家も多いことから、新興国株式への需要は続く可能性がある。
- 新興国株式はあまり注目されていなかったが着実に動きが出てきており、持たざるリスクも意識され始めているのかもしれない。
新興国投資で抱えるトラウマ「為替」
新興国の株式市場は堅調な動きを見せている。一方、それほど注目が高まらない理由の一つには、トルコやブラジルなどの債券や為替で損失を抱えた人も多く、新興国のイメージ自体が悪いことがあるのではないか。
“中国の景気回復”が各国GDPを押上げる要因に
資源価格上昇の背景も“中国の需要増加”
最近発表された日本の10-12月期のGDPは大幅なプラスとなった。その内訳を見てみると輸出が伸びており、特に中国向けが増加している。
中国の粗鋼生産の動きを見てみると、昨年7月の時点で前年同期比プラスとなり、2020年を通してみると過去最高水準となっている。足元では様々な資源の価格に上昇の動きが見られているが、その背景には中国の需要増加があり、このトレンドはしばらく続く可能性がある。
資源国ブラジルに要注目
好調な資源価格の動きは、ブラジルのような資源国にとってはプラスに働きやすい。一方、為替の動き自体には警戒を払う必要がある。
振り返って気付く「投資のタイミング」
新興国に対しては、通貨安の影響もあってあまり良い印象を持っていない投資家が多い。ただ、イメージ先行で皆がそうした資産に注目しないときが、実は長期的にみると絶好の投資タイミングであったということがある。
MSCI新興国株価指数の約6割を占める「中国、台湾、韓国」
「業種別」でみる新興国株式
新興国経済が好転の動きを見せ始めるとそこからワンテンポ遅れる形で株価指数も反応を示すことがある。新興国株式の代表的な指数にMSCI新興国株価指数があるが、中国、台湾、韓国が全体の6割を占めており、続いてアジアや南米、ロシアなど26ヵ国で構成されている。こうした国々を見るとき、例えば、アジアは工業国、南米は資源国といった具合に、業種単位で見る視点も持っておきたい。
グロース株(成長株)からバリュー株(割安株)の流れに要注目
株式を大きく分類するとき、グロースかバリューかといった見方をすることがよくある。昨年以降の世界的な株高はグロース株がけん引してきたが、足元ではバリュー株と見られている日本株に資金が流れているという一面がある。一方で新興国株式の中には、中国ネット大手のアリババのようなグロース株もあるが、全体としては「成長力のあるバリュー株」といったイメージが強い。
“素材系”に動きあり
変化が出てきている新興国株式としては、素材やエネルギーといった資源関連の株式を挙げることができる。例えば、ブラジルの鉄鋼大手ヴァーレは、昨年の春先に下落していた株価が、7月頃にはコロナ前の高値を超えていた。同社の10-12月期の中国向けの鉄鉱石の売上高は過去最高といなっており、同じようなことは資源高の恩恵を受ける他の企業でも起こっているのではないか。
需給のひっ迫が価格高騰を招く恐れも
過去の供給過剰やコロナによる需要減退予測の影響で、供給を絞っていた企業があるが、その影響で足元では需給がひっ迫してきている。これは資源に限った話ではなく半導体などでも同じようなことが起きている。今後もこうした状況が続き、供給が需要に追い付かない状況になってくると、本格的にモノの値段が上がるという事態も考えられるのではないか。
新興国株を“持たざるリスク”
資源国が多い新興国の企業においては、現状の資源高などの動きは追い風となっているが、投資家の多くは新興国の保有を減らしていたのが実態だろう。そうした中で改めて新興国株式に投資をするという決断をするには、今の動きが一時的なものなのか続くものなのかを見極める必要がある。そうした決断を迫られる一方で新興国の株価は上がっており、投資家、特に機関投資家にとっては新興国株を持たないこと自体をリスクだと捉えることすらできるようになっているのではないか。こうした投資家は、投資比率を少しずつ引き上げることが多いので、新興国株への需要は継続する可能性がある。
企業業績は“4-6月期ボトム”が市場コンセンサス
昨年9月のマーケット・ラウンジ「〜歴史は繰返す〜”新興国”投資は人気のない時に仕込むが基本」の収録時はまだ4-6月期の業績しか見えていなかったが、当時の業績はこれからどこまで悪くなるのかという悲観色が強かった。ただ、振り返ってみると4-6月期が業績の底であり、その後はポジティブ・サプライズが出てきているというのが市場の認識のようだ。
ロシアはどうか?
ロシアは、原油や天然ガス、銀行が主要企業となっているため、代表的な株価指数のPBR(株価純資産倍率)は、他国に比べても低い傾向がある。ただ、最近では、銀行がオンライン化、デジタル化の動きを見せていたり、新型コロナウイルスのワクチンを開発するなど、技術の面でも注目をしておきたい。
ぜひ動画もご視聴ください。
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