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- FRBは長期金利をコントロールできるのか? <萩野琢英 × 市川眞一>
マーケットを知り尽くしたプロが多様なトピックを語り合う動画コンテンツ「Pictet Market Lounge」。萩野琢英とシニア・フェローの市川眞一が、注目される米国の政策運営や金融・経済政策について語りました。
以下は二人の対談の中で触れられたトピックです。
- 誕生間もないが米国のバイデン政権は、非常にうまく政策をコントロールしている。
- ただし、これからは格差の拡大を抑制しつつ、景気を立て直していくという難しいかじ取りを迫られていく。
- バイデン政権の一挙手一投足にも注意を払いながら、資産運用を考えていくことが重要になる。
対談の概要
米国でバイデン政権が誕生して1ヵ月が経った。バイデン政権は、自分たちの実現したい政策や人事を優先したことに加え、経済環境も改善傾向が見えてきたことで、予想以上にスムーズなスタートを切ったという印象だ。
要職に多種多様な人材を採用し、ダイバーシティ(多様性)を重視した布陣を敷いたことも特徴的だが、オバマ政権時代に仕事をしたメンバーが政権に多いことで、バイデン政権の安定感は高いと言える。
経済政策の要職では、財務長官となったジャネット・イエレン氏の手腕に注目。オートメーション化やAIの導入が進みつつあったところに、新型コロナウイルスの感染拡大があり、社会や経済は大きく変化した。中間層を中心に雇用対策が課題となる中、元労働経済学者である同氏を財務長官に据えたことは、雇用対策を重視することのメッセージだとも解釈できる。
社会や経済が変化する中、企業の生産性は高まるが、人々が新たな産業や職種に移るのには時間がかかる傾向がある。そのため、現在は改善しつつある雇用も、今後は回復ペースが緩やかになる可能性がある。
優先課題としては、新型コロナウイルス感染対策はもちろんだが、地球温暖化対策も重要。国境炭素税(環境対策が十分でない国からの製品輸入に対して追加的に課す関税)をG7で議論しようという動きなども出てきているが、米国はグローバルなルール作りで主導権を握り、それを経済成長につなげたいという思惑があると見られる。
外交面では国際協調を強く打ち出しており、注目の対中姿勢についても、対話と厳しい対応のメリハリを出している印象。これまでは、米国と中国が対立する構図が続いていたが、バイデン政権は同盟国も巻き込みながら中国が技術覇権を握ることに対抗していくだろう。一方の中国政府も、こうした動きに対抗すべく、自国の技術をさらに磨くことに投資をしてくる可能性がある。
日本では日経平均株価が30,000円を超えたことがニュースとなった。新型コロナウイルス感染拡大による落ち込みを脱し、企業業績は確かに改善しつつあるが、構造的には人口減と高齢化という課題が立ちふさがる。そのため、他国も含めて、足元では世界中を駆け巡っている緩和マネーが株高を演出していると考えられる。
金融緩和政策の出口戦略に向けて、各国が難しいかじ取り迫られていることも押さえておく必要がある。特に金利急騰は、株価やビットコインなどの急落につながる可能性もある。そのため、中央銀行は極端なインフレを回避しながら、金利は抑制しなければならない状況にある。
物価連動国債と10年国債の差から計算される「期待インフレ率」。米国では、この期待インフレ率が2%を超えて名目金利を上回っており、実質的にはマイナス金利だと言える。FRB(米連邦準備理事会)は、政策目標で短期金利を、量の部分で長期金利をコントロールし、株式などの市場を崩さないことに細心の注意を払っていくことになるだろう。
足元では順調なスタートを切ったバイデン政権であるが、今後も順風満帆という訳ではなく、多くの課題を抱えている。こうした米国の動向に注意をしつつ、資産運用に向き合っていくことが大切だと言えるだろう。
対談のトピック
- 「バイデン政権」スムーズな滑り出し
- ダイバーシティ(多様性)を重んじる
- 経済立て直しにおける重要課題「雇用対策」
- 進む“2極化”への対策が鍵になる
- 「地球温暖化対策」更なるアクション
- 譲れない“国益”
- 求められる「経済合理性」
- 米中関係の今後は?
- 問われる“日本の立ち位置”
- 巡り巡る・・・「緩和マネー」
- “難しい出口戦略”による“通貨価値下落”の可能性
- スタグフレーション(不況にも関わらず物価が上昇すること)
- ①雇用の安定 ②物価の安定 ③長期金利の安定
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