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- 商品開発の視点で分析するマーケット ~流動性リスクに用心~<萩野琢英 × 北根久之>
マーケットを知り尽くしたプロが多様なトピックを語り合う動画コンテンツ「Pictet Market Lounge」。萩野琢英と資産運用コンサルティング本部長・北根久之が、マーケットにおける流動性の重要性について語りました。
- 投資対象を選ぶ際には、その価値と価格にズレが生じていないかを見極める必要がある。
- 規模が小さく、流動性が低い市場では、大量の資金流入で要因となって価格の急上昇が起こることがある。
- 流動性リスクは、上昇しながらそのリスクを抱え込んでいくが、上昇局面ではあまり注目されない。
対談の概要
暗号通貨ビットコインが、大幅な価格上昇により注目を集めている。そんなビットコインは日本では、暗号通貨の取引所で取引されているが、米国ではETFなどでの取引も始まっている。そのビットコインETFで、基準価額を上回って推移していたETFの価格が、ここにきて基準価額を下回る動きを見せている。この動きは何を意味しているのだろうか。
まずは、ETFにおける基準価額と価格の違いを理解する必要がある。「基準価額」がETFの価値を表すのに対して、「価格」は市場で取引されるときの値段を表している。ビットコインETFの場合は、基準価額は実質的にはビットコインそのものの値段に連動している。そして、基準価額と価格の間にズレがある状態というのは、ビットコインそのものの値段とは異なる値段でETFが取引されていることを表している。
こうした値段のズレが起こる理由は、売買のしやすさや換金のしやすさを表す「流動性」の低さに求めることができる。買いたいとき・売りたいときに、すぐに売買できる資産は流動性が高い資産だと言われる。一方、流動性が低い資産は、なかなか売買が成立しない。流動性が低い資産の大きな問題は、人気が冷めたときに買いたい人がいなくなって値段が付かないくらい下がる可能性がある一方、値段が上がっているときは、買いたい人が次々と現れるので問題が見えづらくなる点にある。
投資信託の商品開発の担当者をしていた萩野と北根は、投資対象を選ぶ際にこの流動性が十分にあるかどうかを重視していると言う。なぜなら、投資対象となる資産の流動性が低い場合、売買できる資産の規模に制限が出てしまい、時には自らの資金量の多さから市場価格を歪めてしまう可能性もあるからだ。例えば、2005年~2009年のベトナム株価指数の動きは象徴的だ。当時、株価指数が2年で6倍に上昇した後、2年で6分の1に下落した。株価が上昇していたとき、ベトナムのまじめな国民性などを上昇の理由に挙げる声が聞かれていたが、大きな要因は小さな市場に大量の資金が流れ込んだことにあると言える。つまり、市場規模が小さく流動性が低い市場では、資産そのものの価値とかけ離れた価格で取引が成立してしまうことが起こりやすいということだ。ビットコインETFの動きでも、人気化することでETFの価格が基準価額を上回って推移していたが、過熱感が意識されたことでETFの価格が基準価額を下回ったと捉えることができる。
現在は、各国中央銀行による金融緩和の影響で、大量の資金が世界中を駆け巡っている。そのため、資産そのものの価値が変わっていないにもかかわらず、資金が流入して値段だけが吊り上げられるといったことも起こりやすくなっている。歴史を振り返ると、市場がクライマックス(最終局面)に向けて上昇していくときには、この流動性のリスクを抱えながら上昇していくことが多かった。長年にわたって上昇相場が続いてきた今だからこそ、投資する資産の本質的な価値を見極めることが必要だと言えるだろう。
対談のトピック
- ビットコインETFの価格と基準価額が逆転
- 価格(PRICE)と価額(VALUE)
- 流動性:換金のしやすさ
- ビットコインとETFと主要ETFとのサイズ比較
- 「売買代金」と「時価総額」を最初に確認
- 2005年-2009年のベトナム株価指数の推移
- 米クラブハウス・メディア・グループの株価
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