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環境変化確認編①~運用の必要性の高まり~
2025/03/27

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概要

所得の伸び以上に物価や非消費支出等は増加しており、お金の実質的な価値減少を防ぐため資産運用の必要性が高まっているといえます。




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■日本の勤め先収入と非消費支出の移り変わり

今回は所得や物価の変遷等、私たちが置かれた環境の変化を確認しながら、なぜ運用の必要性が高まっているのかを解説いたします。まず、勤め先収入と非消費支出についてです。勤め先収入とは、勤め先から報酬として受ける月々の給与や各種手当、賞与等を指します。非消費支出とは、住民税や所得税、社会保険料等、消費に回すことができない自由に生活のために使えないお金を指します。2人以上の勤労者世帯で2000年以降の変遷を確認すると(図表1)、勤め先収入は2010年ごろまで低迷していましたが、それ以降着実に伸びてきています。一方、非消費支出は勤め先収入が低迷している時期も含め、増加を続けてきました。両者の2000年から2024年の伸び率を比較すると勤め先収入は約10%の伸びに対し、非消費支出は約28%の伸びでした。少子高齢化という構造的な問題もあり、年々増加する社会保障費等を考えると、この傾向は今後も続くことが予想されます。現時点では、収入から非消費支出を差し引いた実際の手取り収入となる「名目」可処分所得は増加傾向にありますが、物価の影響を考量した「実質」可処分所得の推移が重要となります。なぜなら、名目可処分所得が上昇したとしても、物価がそれ以上に上昇していれば、実質可処分所得は減少してしまい、私たちの暮らし向きは改善しないといえるからです。では物価の動向を確認していきましょう。


図表1:勤め先収入(注1)と非消費支出(注2)の推移(年次、2000年~2024年)



注1:世帯員が勤め先から報酬として受けた収入を指し、各種手当、賞与等を含む 注2:住民税、勤労所得税、社会保険料等
※対象先は2人以上の世帯のうち勤労者世帯
出所:総務省のデータを基にピクテ・ジャパン作成

■物価の動向

同じ期間で物価がどのように変化したかを確認すると、日本のCPI(消費者物価指数)の総合指数は約12%上昇しました(図表2)。これは勤め先収入の伸び(約10%)を上回っており、仮に勤め先以外からの収入がない場合には、購買力減退や生活水準の低下が生じてしまうリスクがあります。さらに例として学費の変化を確認すると、私立大学の授業料は同期間で79万円から96万へ約22%、円換算したハーバード大学の学費は252万円から853万円へ約238%も上昇しています(図表2、3)。4年制の私立大学であれば4年間で合計70万円ほど、ハーバード大学であれば4年間で合計2,400万円ほど負担額が増加した計算になります。


図表2:勤め先収入、非消費支出等の2000年と2024年の比較(CPIは2000年を100として算出)



図表3:勤め先収入、非消費支出等の2000年から2024年の変化率



※私立大学授業料は2023年のデータを使用(図表2、3)
※ハーバード大学の学費は円換算(2000年12月末時点レート 1米ドル=114.4円、2024年12月末時点レート 1米ドル=157.2円)
出所(図表2、3):総務省、文部科学省、ハーバード大学のデータを基にピクテ・ジャパン作成

 

■運用の必要性の高まり

図表2、3でご覧いただいたように、物価の伸びは勤め先収入のそれを上回る数字となっており、これはすなわち実質的な手取り収入の減少を意味します。同期間での名目可処分所得と実質可処分所得を確認すると、名目ベースでは若干増加しているものの、実質ベースでは大きく減少していることがわかります(図表4、5)。今後も非消費支出の増加等により、フロー(可処分所得等)が名目ベースでも実質ベースでも減少する可能性がある中、お金の実質的な価値を維持していくためには確実かつ迅速な改善が難しいフローではなく、ストック(貯蓄等)を活用すること、つまり運用の必要性が高まっているといえます。          


図表4:名目可処分所得と実質可処分所得の推移
(月次、期間:2000年1月~2024年12月、2000年1月を100として指数化)




図表5:名目可処分所得と実質可処分所得の2000年1月と2024年12月の比較
(2000年1月を100として算出)



※対象先は2人以上の世帯のうち勤労者世帯
出所:総務省のデータを基にピクテ・ジャパン作成

       

 


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