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環境変化確認編③~日本のCPIについて~
2025/04/24

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概要

日本のCPIを確認する際は、代表的な総合指数やコア指数等のみならず、持ち家の帰属家賃を除く総合指数や10大費目別の動向を確認することも重要です。




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■総合指数、コア指数、持ち家の帰属家賃を除く総合指数

今回は日本のCPI(消費者物価指数)に焦点を当て、詳しくその変化を確認いたします。総務省より公表されるCPIは代表的なものとして、総合指数、コア指数(生鮮食品を除く総合指数)、コアコア指数(生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数)の他、各品目別に詳細なデータが存在します。まず、物価全体の動向を確認する先述の代表的な3つ(総合、コア、コアコア)の指数に加え、持ち家の帰属家賃を除く総合指数を確認しましょう(図表1)。コア指数については、生鮮食品は天候に生産量が左右されやすく、価格の変動が他品目と比較して非常に大きいため、これを除くことで物価変動の基調を確認できます(図表2)。一方、エネルギーまで除くコアコア指数ですが、米国等ではこちらの定義注1がコア指数として利用されており、コア指数と併せて確認が必要です。持ち家の帰属家賃とは、持ち家を借家として仮定したうえで、持ち家から享受している住宅サービスの価値を見積もり、それを家賃と見なして、計上するものを指します。ただし、持ち家は実際に市場で売買されず、出費を伴うものではありません。かつ総合指数に占めるウエイトが15.8%あるため(図表3)、これを除いた出費ベースでの物価動向を確認することも重要です。また、帰属家賃そのものはここ数年、ほぼゼロ近辺で推移しているため、総合指数を押し下げる効果があることも理解する必要があります(図表2)。

注1:米国のコアCPIは総合指数から食料(酒類を除く)とエネルギーを除くもので、厳密には定義が異なります

図表1:日本のCPIの推移(前年同月比、2020年1月~2025年2月)


出所:総務省のデータを基にピクテ・ジャパン作成

図表2:生鮮食品、帰属家賃の推移(前年同月比、2020年1月~2025年2月)




図表3:10大費目別の寄与度(2025年2月時点)

出所(図表2、3):総務省のデータを基にピクテ・ジャパン作成

総合指数、コア指数ともに2022年4月以降、日本銀行が設定しているインフレ目標の2%を上回り続けていますが、持ち家の帰属家賃を除く総合指数をみると、先述の通り、同期間で持ち家の帰属家賃は総合指数を押し下げてきた効果が確認できます。また、同指数は平均的に3%を上回り、この指数をもとに考えるのであれば、物価の影響を除いた実質賃金は、総合指数やコア指数で考えるよりも、より少なくなります。

いずれにしても、インフレ目標を超える上昇が続いているという事実は投資の必要性をより高めるものであり、また、持ち家の帰属家賃を除いた総合指数を一つのベンチマークにするのであれば、目標リターンは年率2%ではなく、もっと高い数字に設定する必要があるともいえます。


■費目別推移

物価動向を費目別で確認することも運用に求めるリターンを考えるうえで欠かせないことだといえます。10大費目のうち、相対的に総合指数に占めるウエイトが高いものについて、2023年以降の変遷を確認すると(図表4)、その中でも特に食料や教養娯楽は総合指数等を上回り、高い上昇率を示しています。たとえば家計に占める食料や教養娯楽への出費が多い場合、運用の目標リターンとして総合指数をベンチマークにするのか、先の2費目の変化率程度に設定するのかを考える必要があります。ほかにも、インフレから資産を守るのであれば、運用に求めるリターン=インフレ率となりますが、実質的に増やしたいと考えるならば、インフレ率+αの目標リターンを設定する必要があります。このように、物価動向を確認することは、ご自身の運用に求める、あるいは求めなければいけないリターンを考えるうえで非常に重要であり、毎月確認することも大切です。


図表4:日本の10大費目別(一部抜粋)CPIの推移
(前年同月比、2023年1月~2025年2月)


出所:総務省のデータを基にピクテ・ジャパン作成

 


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