議決権行使に関する方針


I.議決権行使にあたっての基本的な考え方

当社は、顧客からの資産を預かり運用する受託者として、顧客に最善の利益を提供する責任があります。その責任を果たすため、議決権行使の判断は、形式的な判断にとどまらず、投資先企業の持続的な企業価値向上とその価値の毀損の防止に資するよう主体的に行います。また、顧客の利益を損なう可能性のある利益相反についての管理を適切に行い、顧客の利益を最優先するよう議決権の行使をします。日本企業における上場株式の議決権行使の際には、下記「Ⅲ. 個別の議案に対する議決権行使の考え方」に基づいて判断を行います。

また、ピクテ・グループは、1805年に設立されて以来、常に顧客資産を長期的に保全することに努めてきたことから、サステナビリティ(持続可能性)という考え方を経営理念の中核をなすものとして位置づけています。これはピクテ・グループの運営から顧客資産の運用まで、当社が行う全ての事業についての考え方です。当社は、投資先企業の議決権行使についてもこの考え方を考慮しています。

 

II.議決権行使の意思決定プロセス

当社は、「議決権行使に関する方針」に基づき日本企業における上場株式の議案の賛否判断を行っています。適切な議決権行使をする上での多様な論点を参照すべく議決権行使助言会社の助言を参考にしつつ、運用部門のファンドマネージャーおよびアナリストが当該企業の調査活動や対話などの内容を考慮のうえ、判断します。

また、ピクテ・グループでは、投資先企業に対する議決権行使をより有効なものとすべく、グループ一体にて賛否判断・行使をしています。当社を含むピクテ・グループ各社の運用チームの当該企業の議案に対する判断は、当該株式を保有する各運用チーム間の協議のうえ共通のものとし、グループのESGチームの判断と整合されます。運用部門とESGチームの判断が異なる場合は両者間で協議を行います。両者の協議が整わない場合は、グループの株式部門のチーフ・インベストメント・オフィサー、さらに必要に応じグループ最高投資責任者へ上程されて判断の決定が行われます。

 

III.議決権行使ガイドライン(国内株式)

1.取締役選任

取締役は、株主から会社の業務執行を託され、取締役会を通じて日々業務執行の意思決定および監督をする重要な責務を負います。したがって、取締役は、企業価値を最大化すべく、高度な専門知識と経営能力を持つだけでなく、高い倫理観を持って業務執行をする必要があると考えます。また取締役会は、活発な議論と迅速な意思決定を可能とする実効性のある会社の意思決定機関として機能する必要があると考えます。

取締役の選任議案については、長期にわたり資本効率が低く改善する見込みがないと考える場合や、株主の利益に反する行為または取締役としての資質に欠ける行為があった場合は、その選任議案については慎重に検討します。検討の結果、企業価値を毀損するという結論に達した場合は、原則として反対します。社外取締役の選任議案については、上記に加え、当社の定める独立性基準や取締役会への出席率についても検討します。独立性基準は、主に大株主、関連会社、主要取引先における勤務経験や取引関係、株式の政策保有関係等を考慮します。

取締役会は、実効性ある機関として機能するため、業種、企業規模の観点から適正な人数であることが必要と考えます。取締役会の構成に関する議案はこの観点に加え、多様性についても検討します。また、監督機能を高める機関設計の変更や、監督と執行の分離を推進する方策については肯定的に判断します。

 

(1)取締役会の構成

①監査役設置会社においては、下記のいずれかに該当する場合、原則として反対。

株主総会後の取締役会に社外取締役(独立性を問わない)が3分の1未満、または2名未満の場合、経営トップである取締役選任に原則として反対

親会社や支配会社を持つ会社において、株主総会後の取締役会に、独立性基準を満たした社外取締役が  3分の1未満、または2名未満の場合、経営トップである取締役選任に原則として反対

株主総会後の取締役会に女性取締役が一人もいない場合、代表権を持つ取締役選任に原則として反対

社外取締役が独立性基準を満たさないと判断された場合、それのみを理由に反対しない。

 

②指名委員会等設置会社においては、下記のいずれかに該当する場合、原則として反対。

株主総会後の取締役会に社外取締役(独立性を問わない)が3分の1未満の場合、経営トップである取締役選任に原則として反対

親会社や支配会社を持つ会社において、株主総会後の取締役会に、独立性基準を満たした社外取締役が  3分の1未満、または2名未満の場合、経営トップ、及び指名委員である取締役選任に原則として反対 (ただし、指名委員が独立性基準を満たす社外取締役の場合を除く)

株主総会後の取締役会に女性取締役が一人もいない場合、代表権を持つ取締役、及び指名委員会委員長の取締役選任に原則として反対

株主総会後の取締役会の過半数が独立していない場合、独立性基準を満たさない社外取締役選任に原則として反対

 

③監査等委員会設置会社においては、下記のいずれかに該当する場合、原則として反対。

株主総会後の取締役会に社外取締役(独立性を問わない)が3分の1未満の場合、経営トップである取締役選任に原則として反対

親会社や支配会社を持つ会社において、株主総会後の取締役会に、独立性基準を満たした社外取締役が  3分の1未満、または2名未満の場合、経営トップである取締役選任に原則として反対

株主総会後の取締役会に女性取締役が一人もいない場合、代表権を持つ取締役選任に原則として反対

監査等委員である取締役のうち、2名以上の社外取締役が必要だが、監査等委員でない取締役はその必要はない。

監査等委員である場合、独立性基準を満たさない社外取締役選任に原則として反対

監査等委員ではない社外取締役の場合、独立性基準を満たさないと判断されても、それのみを理由に反対しない。

 

(2)独立性基準

以下のケースでは独立性の基準を十分に満たしていないと考えられる。

①当該企業の大株主である組織で勤務経験がある

②当該企業の主要な借入先で勤務経験がある

③当該企業の主幹事証券で勤務経験がある

④当該企業の主要取引先である組織で勤務経験がある。主要かどうかは当該企業と取引先の双方から見た取引の規模によって判断。取引が売上に占める比率など具体的な開示がない場合は、独立性があるとは判断できない

⑤当該企業の監査法人で勤務経験がある

⑥コンサルティングや顧問契約などの重要な取引関係が現在、または過去にあった。この場合も、当該企業と双方から見た取引の規模によって判断。取引額など具体的な開示がない場合は、独立性があるとは判断できない

⑦親戚が当該企業に勤務している

⑧当該企業で勤務経験がある

⑨当該企業が政策保有目的で保有すると判断する投資先組織で勤務経験がある。政策保有株式の定義は有価証券掲載の「保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式」および「みなし保有株式」を用いる

 

(3)出席率

前会計年度において、取締役会の出席率が75%未満の社外取締役の取締役再任には原則として反対。加えて、指名委員会等設置会社の場合は、監査委員会の出席率が75%未満の監査委員である社外取締役、監査等委員会設置会社の場合には監査等委員会の出席率が75%未満の監査等委員である社外取締役の再任に原則として反対。

 

(4)政策保有株式基準

政策保有株式の過度な保有(政策保有株式の保有額が純資産の20%以上)が認められる場合、経営トップである取締役選任に原則として反対。通常は前年度有価証券報告書の政策保有株式の情報を利用するが、株主総会議案に直近のデータが開示されている場合は、議案のデータも参考に検証する。企業再編などによりその企業に入社したばかりの経営トップなど例外的な状況においては個別判断。政策保有株式の判断には、有価証券報告書掲載の「保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式」を用いている。

 

(5)資本生産性基準

資本生産性が低く、過去5期平均の自己資本利益率(ROE)が5%を下回っている場合、経営トップである取締役選任に原則として反対。ただし、直近の会計年度のROEが5%以上で改善傾向にある場合はこの限りではない。

 

(6)業績不振・不祥事・株主の利益に反する行為など

株価の極端な下落や業績の大幅な悪化など経営の失敗が明らかな場合、企業不祥事が発生した場合、株主の利益に反する行為に責任があると判断した場合、個別の取締役、委員会委員、あるいはすべての取締役選任に反対を検討。また、経営陣の入れ替えが必要であるにもかかわらずそれを行わない、他社での取締役・監査役としての行動に重大な懸念があると判断した場合にも、個別の取締役、委員会委員、あるいはすべての取締役選任反対を検討。少数株主にとって望ましいと判断される株主提案が過半数の支持を得たにもかかわらず、その提案内容を実行しない、あるいは類似の内容を翌年の株主総会で会社側提案として提案しない場合には、経営トップである取締役選任に原則として反対。

その他、株主の利益に反する行為として、株主総会決議のない買収防衛策の導入、株主総会決議のない過大な希薄化を伴う第三者割当増資、合理的な説明のない大規模な公募増資なども取締役選任議案の際に検討する。

 

(7)Climate Action 100+ Focus Group Listに基づく温室効果ガス排出量の多い企業においては、気候変動リスクを軽減するための対策を講じているか、その結果について適切に開示されているかを判断し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みに基づいた気候変動リスク情報が適切に開示されていないと判断された場合は、経営トップの取締役選任に原則として反対。

 

2.監査役の選任

監査役は、取締役の職務執行を適切に監査するため、公正不偏の態度による積極的な意見表明とコーポレートガバナンスの確立に努めることが求められます。監査役および社外監査役の増員については原則として賛成し、減員については合理的理由の有無につき慎重に検討の上で判断します。

 

(1)独立性基準

独立性基準を満たさない社外監査役の選任には原則として反対。独立性基準については、社外取締役の独立性基準に準じる。

(2)出席率

前会計年度における取締役会もしくは監査役会の出席率がどちらか一方でも75%未満の社外監査役の再任に原則として反対。

(3)株主の利益に反する行為に責任があると判断される監査役選任に原則として反対。たとえば、株主価値の毀損を伴う不正や犯罪行為などの企業不祥事があった場合や、本人の適正に大きな懸念がある場合など反対を検討。また、他社での取締役・監査役としての行動に重大な懸念があると判断される場合も反対を検討。

 

3. 会計監査人の選任

原則として賛成しますが、会計監査人の変更については、慎重に検討した上で判断します。

 

4. 役員報酬

(1)取締役報酬枠の増加については、提案に合理的理由があり、かつ業績連動報酬の導入や業績連動部分の増加を目的としている場合は、原則として賛成。固定報酬の増加を目的とする場合や取締役報酬枠の増加の目的が不明な場合は、業績等を考慮し判断します。ただし、著しい株価の下落または大幅な業績の悪化が見られ経営責任が明らかな場合や株主の利益に反する行為がある場合は、原則として反対。

(2)監査役報酬枠の増加に関する議案については、株主の利益に反する行為がある場合を除き、原則として賛成。

 

5.役員賞与

原則として賛成しますが、著しい株価の下落または大幅な業績の悪化が見られ経営責任が明らかな場合や株主の利益に反する行為があると判断される者が対象者に含まれる場合は、内容を慎重に検討の上で判断。

 

6.役員退職慰労金

社外取締役および社外監査役への役員退職慰労金に関する議案については、監督機能低下の懸念があるため、原則として反対します。社内監査役への役員退職慰労金に関する議案については、監督機能への影響を慎重に検討の上で判断します。

(1)支給対象者に社外取締役もしくは社外監査役が含まれる場合は反対。ただし支給額が個別開示され、それが過大でない場合は賛成を検討。

(2)個別の支給額もしくは支給総額が開示されない場合、反対。

(3)著しい株価の下落または大幅な業績の悪化など経営責任が明らかな場合や、株主の利益に反する行為があると判断されるものが対象者に含まれる場合、反対。

 

7.ストックオプション・譲渡制限付株式報酬・報酬型ストックオプションなど

(1)ストックオプションについては、提案されているストックオプションとすでに発行済ストックオプション残高を合計した希薄化が成熟企業で5%、成長企業で10%を超える場合、支給対象者に取引先や社外協力者のような社外の第三者が含まれる場合、また、提案されるオプションの対象となる上限株数が開示されていない場合は原則として反対。

(2)譲渡制限付株式報酬や報酬型ストックオプションについては、(1)の条件に加え、行使条件として経営計画における目標など業績を達成することが条件となっていない場合、原則として反対。ただし、行使条件として、付与から3年間未満は行使が禁止されている場合や、退職前の行使が禁止されている場合、業績条件がなくても原則として賛成。

 

8.剰余金の処分

長期的な経営戦略をもとに会社の財務状況を考慮し、適切な水準で株主に還元されることが重要であると考えます。合理的理由なく配当性向が低い場合や財務健全性への懸念が生じるほど配当性向が高い場合については、慎重に内容を検討の上で判断します。また、会社が長期的な経営戦略のもとに内部留保を行う場合は、その妥当性を慎重に検討の上で判断します。通常、配当性向が15%から100%の場合は原則として賛成。配当性向がその範囲にない場合は、個別判断とする。

 

9.自社株式の取得

原則として賛成しますが、具体的な理由の説明がなく、発行済株式総数の10%以上の自己株式を取得しようとする場合や、自己株式の取得が、株主価値の毀損につながるおそれがある場合は、内容を慎重に検討の上で判断します。

 

10.定款変更

持続的な企業価値向上とその価値毀損の防止の観点から、個別に判断します。複数の変更が単一の議案に含まれる場合は、反対すべき内容が一つでもあれば、原則としてその議案に反対。主な定款変更については以下参照。

(1)目的事項の変更については原則として賛成。継続して企業の業績に問題があり、本業と無関係のリスクの高い分野への参入を求める場合や、多岐にわたる事業分野への参入を求める場合は、原則として反対。

(2)指名委員会等設置会社への移行については、原則として賛成。

(3)監査等委員会設置会社への移行については、原則として賛成。また、監査等委員会設置会社における重要な業務執行決定の取締役への委任についても原則として賛成。ただし、指名委員会等設置会社から監査等委員会設置会社に移行する場合は、個別判断。

(4)買収、合併、第三者割当増資に伴う授権資本の増加の場合は、それらの妥当性に基づき個別判断。また、以下のいずれかに該当する場合は原則として反対。

①提案された授権枠の増加分が現在の授権枠の100%を超える場合

②発行済株式総数が増加後の授権枠の30%未満となる場合

③弊社基準によって反対すべき買収防衛策を目的とする場合

(5)種類株式の創設、変更については個別判断。

(6)自己株式取得の取締役会授権の定款変更については、バランスシートの状況、資本生産性とROE、過去の自社株取得と配当の状況、取締役会構成、株主構成などの観点に基づき、個別判断。ただし、自己株式取得の株主提案権が排除される場合は、原則として反対。

(7)株主の権利行使の手続きを株式取扱規程にゆだねることには、原則として反対。

(8)単元未満株主の権利制限については、原則として賛成

(9)株主総会の定足数の緩和については、原則として反対。

(10)バーチャルオンリー型株主総会の開催を目的に「場所の定めのない株主総会」の開催を可能とする定款変更は、その開催を感染症拡大や天災地変の発生時に限定する場合を除き、原則として反対。

(11)買収防衛策関連の定款変更はその企業の買収防衛策に賛成する場合を除き、原則として反対。

(12)取締役会の定員の減少については、株主総会後の取締役の人数と員数が同数となる場合を除いては原則として賛成。取締役の実際の人数と定員数が同数であれば、株主提案で取締役選任を議案にあげるためには、現在の取締役を解任する必要があるので、株主提案で取締役選任が困難となるため、原則として反対としている。

(13)取締役解任の要件過重について、原則として反対。

(14)取締役の任期の短縮については、原則として賛成。

(15)取締役の期差任期制の導入については、原則として反対。

(16)取締役、監査役の責任減免の取締役会授権および責任限定契約については、原則として賛成。(非業務執行取締役および社外監査役でない監査役に対する責任限定契約を含む)

(17)相談役、顧問、名誉会長、ファウンダーなどの制度の新設については、取締役の役職として提案される場合除き、原則として反対。

(18)会計監査人の責任減免の取締役会授権および責任限定契約については、原則として反対。

(19)剰余金配当の取締役会授権については、原則として反対。ただし、指名委員会等設置会社もしくは監査等委員会設置会社(またはそれら形態への移行が提案される場合を含む)で、かつ、配当の株主提案権が排除されなければ、賛成を検討。

(20)株主総会の分散化を目的とする定時株主総会の基準日の変更については、原則として賛成。

(21)非公開化関連の定款変更については個別に判断。

 

11.    買収防衛策

買収防衛策の導入および更新は、下記の条件のすべてを満たす場合を除き、原則として反対。

(1)株主総会後の取締役会に出席率に問題のない、独立性基準を満たした社外取締役が過半数。(出席率、独立性基準については「取締役選任」の基準に準じる。)

(2)取締役の任期が1年である

(3)特別委員会の委員全員が出席率に問題のない、独立性基準を満たした社外取締役もしくは社外監査役である

(4)買収防衛策の発動基準が20%以上である

(5)有効期限が3年以内である

(6)買収防衛策の導入時点から、今回提案されている買収防衛策の有効期間終了までの合計期間が3年以内である

(7)取締役解任に特別決議を要する、安定株主が3割程度以上の株式を保有している、取締役定員上限まで取締役を選任しているなど、ほかに防衛策として機能しうるものがない

(8)招集通知が株主総会の4週間前までに証券取引所のウェブサイトに掲載されている

(9)買収されやすい状況の改善を目的とする具体的な株主価値向上施策に加え、買収防衛策導入により与えられる一時的な保護が、どのようにしてその施策の実行に役立つかを招集通知で説明しており、その内容が妥当であると考えられる

 

12.株主提案

投資先企業の持続的な企業価値向上とその価値毀損の防止の観点から、個別に判断。これらの観点から適当と判断される議案については原則として賛成し、不適当と判断される議案については原則として反対。

 

13.経営権の争いを理由に株主提案による取締役選任議案が提案され、プロキシーファイトの状態にある場合、会社提案・株主提案とも個別判断

 

IV. 議決権行使結果の開示

当社の議決権行使の結果は、こちらをご覧ください。