Pictet Story
ジュネーブがスイスの州になるとき Ⅱ
ピクテ家の1人、シャルル・ピクテ・ド・ロシュモンは、ピクテ銀行の経営に直接関わることはありませんでしたが、ジュネーブという都市、そしてスイスの中立性をヨーロッパの大国に承認させた人物として、語り継がれています。
教育と精神
シャルル・ピクテは1755年9月21日にジュネーブで生ま れました。父親のシャルル・ピクテ・ド・カルティニー(Charles Pictet de Cartigny)は当時オランダの傭兵大佐でした。独 立的な精神を持っていた彼は、小市参事会(政府)がルソー の『エミール』と『社会契約論』を出版禁止にしたとき、公にルソーに味方した唯一の貴族でした。そのため彼は非難され、 拡大市参事会(州議会の前身)から一時的に追放されました。
息子のピクテは、1768年からハルデンシュタイン(グラウビュンデン州)の学校に入り、しっかりしたヒューマニズム教育を受けました。またそこでドイツ語、英語、イタリア語を学ぶとともに、スイス全土から集まった生徒たちと交友を深めました。 軍人を志し、10年ほどフランスのスイス傭兵として働き、1785年にジュネーブに帰るとその1年後にアデライド・サラ・ド・ロシュモン(Adelaïde Sara de Rochemont)と結婚し、ジュ ネーブの慣習に則り妻の苗字をつなげた名前を名乗り始め ました。
ピクテ・ド・ロシュモンはジュネーブで拡大市参事会に入り政治家のキャリアを積み始めました。1790年には検事(司法官)となり、ブルジョワ民兵の4つの大隊の一つを指揮し、その ための訓練指示書も作成しました。
アンシャン・レジームの崩壊
1792年、フランス革命軍がジュネーブを包囲し街中で反 乱を起こし、アンシャン・レジーム体制は崩壊しました。ピク テ・ド・ロシュモンは、革命に関して批判的ではありましたが、 ジュネーブ新国民議会の一員となりました。しかし、最初は 穏やかであった革命は徐々に激しさを増し、義弟のジャンフランソワ・ド・ロシュモン(Jean-François de Rochemont)が 革命裁判所により死刑判決を受け、1794年に刑が執行さ れました。ピクテ・ド・ロシュモン自身は、カルティニーの農民の働きかけにより、元検事として1年の自宅拘留刑のみとさ れました。政治の過激さに嫌気がさし、その後20年以上、彼は政治の世界から遠ざかることとなります。
娘のアメリ―(Amélie)が描いたシャルル・ピクテ・ド・ロシュモン(未完成) 1820年頃 水彩 21.5 x 16 cm ピクテ家アーカイブ財団所蔵
活動的な「引退」
公的世界から退いたピクテ・ド・ロシュモンは、だからといって遊んで暮らしたわけではありませんでした。1795年、アンク ル・サムの国をテーマとした初のフランス語作品の一つ『アメ リカ合衆国の光景』(Tableau des Etats-Unis d’Amérique) を出版します。またイギリスに旅行しその体制に感銘を受け、 あるいは産業革命の起源的経済活動(パキの瓦)も試みまし た。しかし特筆すべきは、その後20年間続く彼の主要な活動となる「農業」を開始したことです。
1796年には、兄と共同で『イギリス図書館』(Bibliothèque britannique)を刊行しました。フランス語圏読者に文学・科学分野の翻訳記事を紹介するこの雑誌は、ジュネーブの大部分のエリートたちのイギリスかぶれを象徴するものでした。彼はこの雑誌に農業欄を掲載し、友人のエマニュエル・ド・フェ レンベルグ(Emmanuel de Fellenberg)とそのホフヴィル研究 所(Institut d’Hofwyl)の研究を熱心に報じつつ、教育において農業がもたらす利益を主張したのでした。ヨーロッパの多く のエリートたちがこの刊行物を読んでいました。
次回は政治の世界から離れ、農業においても活躍した後、 再度政治家に復帰するまでをご紹介します。
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