Pictet Story


ジュネーブがスイスの州になるとき Ⅳ

ピクテ家の1人、シャルル・ピクテ・ド・ロシュモンは、ピクテ銀行の経営に直接関わることはありませんでしたが、ジュネーブという都市、そしてスイスの中立性をヨーロッパの大国に承認させた人物として、語り継がれています。




大会議 交渉術と人脈の力

ピクテ・ド・ロシュモンは、60歳にして外交という新たなキャリアを始めることになります。それはほんの2年ほどですが、この間に彼はパリからウィーンへ、そして再びパリへ、最後にトリノへと奔走しました。一見そうは見えませんが、彼の経歴の全てがこの時のための準備となっていたのです。独立的精神に満ちた家族、多言語の習得、政治に対する穏健な考え方、フランスでの軍人経験、『イギリス図書館』の編集、そしてヨーロッパの多くの統治者に売ったメリノの羊毛…。


パリ会議:最初の敗北

しかしピクテの国際舞台へのデビューは複雑なものでした。1814年春にジュネーブ政府からパリに派遣された彼の主な目的は、フランス側の複数のコミューン(自治体)の譲渡を獲得し、ジュネーブの領土の飛び地をなくすということでした(当時のプレニーとヴェルソワはフランス領でした)。この最初の会議において、無経験のこの外交官は、ジュネーブからの矛盾した命令を受けた上、フランスを代表する外交の達人タレーラン(Talleyrand)と対立し、結局は、ヴェルソワの道路の通行権以外ほとんど何も得ることができませんでした。

パリではフランスの運命が定まりました。条約に従い、ヨーロッパは数か月後ウィーンに再集結することとなりました。


ウィーン会議

1814年10月、ウィーンで交渉は再スタートします。7カ月に渡り、ヨーロッパ中の国々が、ナポレオンから取り戻した領土の今後を定めるためオーストリアの首都に集まりました。このウィーン会議は非常に不思議で、全員出席の審議はほとんどなく、様々な決定はプライベートサロンや舞踏会の合間、あるいはその他の社交界の催しの場といった所で行われました。

この会議にはシャルル・ピクテ・ド・ロシュモンに加えてジャン-ガブリエル・エナール(Jean-Gabriel Eynard)とフランシス・ディヴェルノワ(Francis d’Ivernois)が同行していました。



また、当時皇帝アレクサンドル1世に仕え経験豊かな外交官であったケルキラ島のジャン・カポディストリアス伯爵 (Jean Capo d’Istria)も相談役として同行し、素晴らしい助言を惜しみなく与えました。

ピクテの姪でありエナールの妻アンナ(Anna)(旧姓リュラン (Lullin))も貴重な切り札となりました。というのも、交渉につながる社交界の催しへの魅力的なジュネーブ人女性の参加は多くのサロンの扉を開かせ、そこでピクテ・ド・ロシュモンは、特にサルデーニャ王からの重要な譲渡獲得に成功し、レマン湖左岸のジュネーブ領地の飛び地を無くすために必要なコミューンを手に入れました。

しかしパリの時と同様、ピクテらの前にタレーランが立ちはだかります。この外交官は、敗北し最初は孤立していたフランス側に、ナポレオン戦争の勝者たち(イギリス、ロシア、オーストリア、プロイセン)が自国に定める運命に不安を抱いていた一連の小国を巧みに集めていました。ジュネーブに対しては、タレーランは情け容赦ない態度を見せ、レマン湖右岸のコミューンに関して一切譲渡しませんでした。小さな共和国の要求に苛立ったタレーランは、「世界には5つの大陸と、ジュネーブがある」と評したほどでした。

1815年4月、このウィーン会議は突然中断されました。蓋然性のないナポレオンの復権と百日天下が起こりましたが、それは1815年6月にワーテルローで終わりを迎えました。ボナパルトは決定的に敗北、セントヘレナ島に幽閉され交渉は1815年8月にパリで再開されることとなります。


次回は第2回パリ会議での決定的な成功についてご紹介します。



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