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- 期待される債券市場の正常化~債券投資に光明を見いだす~<萩野琢英 × 石原豪>
マーケットを知り尽くしたプロが多様なトピックを語り合う動画コンテンツ「Pictet Market Lounge」。萩野琢英と運用商品共同本部長・石原豪が、債券市場や金価格の動向について語りました。
- 足元で急上昇している米国債券利回りの動きが、幅広いマーケットに影響を与えている。
- 米国の「財政リスク」と「規制緩和措置の解除」といった懸念もあるが、期待先行で利回りが上昇していると考えられる。
- 債券利回りの上昇は、債券の投資家にとっては良いことではないが、債券市場が正常化に向かっている過程だと捉えることもできる。
対談の概要
米国債券市場の動きが注目を集めている。足元の急上昇が、幅広いマーケットに影響を与えているからだ。そもそも金利が上昇している背景には、ファンダメンタルズ(国や企業などの経済状態)の改善期待がある。市場の期待通りに米国経済が回復すれば、債券の利回りも上昇するため、それを織り込んでいると考えられる。
コロナ後の世界を見据えて景気が回復するという期待から、米国の債券利回りが上昇すること自体はおかしなことではない。ただし、そのスピードは急速だと考えられる。米国の消費者物価指数は1%台半ばにあるが、市場の期待インフレ率はすでに2%を超えている。新型コロナウイルス感染拡大前の水準が、1.5%~1.6%程度であったことを考えても高いと言わざるを得ない。現在の債券利回りは、市場の思惑が含まれる期待インフレ率を織り込んだものであり、経済実態とはやや乖離があると考えられる。
景気回復期待のほかに、米国債券利回りを上昇させている要因としては、「財政リスク」と「規制緩和措置の解除」が挙げられる。米国では、大規模な経済対策が行われているが、これにより悪化する財政への懸念がある。実際、米国国債の入札が不調に終わる例も出てきている。また、新型コロナウイルスの感染拡大を機に、金融機関への規制を緩和する措置が取られたが、3月に期限を迎える。これは延長の可能性もあるが、延長されなかった場合は大きな変動要因になり得ると考えられる。
当初、米国の債券利回りが上昇し始めたころは、米国国内だけの問題だったが、今年の2月以降は為替相場や欧州・新興国の債券市場、株式市場などにも影響を及ぼし始めた。債券利回りが急上昇したことで、実質利回りも上昇し、中央銀行による金融緩和策が解除の方向に動くことを懸念する思惑がその背景にある。例えば、現地通貨建て新興国債券の利回りは、コロナ・ショック以降も低下基調をたどっていたが、米国実質利回りが上昇し始めたタイミングで、上昇に転じている。また、株式市場も時を同じくして下落の動きが見られている。
昨年8月に史上最高値を更新した金の価格動向も、期待インフレ率や債券利回り上昇の影響を受けている面がある。金価格は2019年から上昇基調をたどり、昨年8月に2,000ドルを超えた。しかし、その後は頭打ちとなり、上下に動きながらも緩やかに下落している。そして、足元では、米国の実質利回りが上昇するタイミングで、他の資産同様に下落が見られた。短期目線の投資家が売却に動いている可能性があり、金価格は260日の移動平均線を割り込んでいる。次は、520日移動平均線の水準もにらみながらの動きとなるのではないか。
債券利回りの上昇は、債券の投資家にとってはよいことではないが、債券市場が正常化に向かっている過程だと捉えることもできる。1.5%~2.0%という利回り水準は、分散投資の観点からも債券への投資妙味が出てくる可能性がある。現在、債券利回りの動向が市場の変動要因になっているが、あくまでもスピードが急なだけで、経済回復とともに金利が上昇するという方向感自体が間違っているわけではない。
対談のトピック
- 米国10年国債利回り
- ブレーク・イーブン・インフレ率(市場が予想する期待インフレ率)
- 米国実質利回り(10年)
- 現地通貨建て新興国債券利回り
- “財政リスク”が金利上昇要因になる
- 金価格と米インフレ連動10年国債利回り
- 金価格と米国10年国債実質利回り
- 2019年からの金価格推移
- 金価格と520日移動平均線との乖離率
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