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ブラジル中銀が見守り姿勢の理由
梅澤 利文
2019/05/09

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概要

ブラジル中銀は16年後半から18年前半まで政策金利をほぼ一貫して引き下げ、その後1年ほど6.5%で据え置いています。今回の声明には、足元上昇の兆しも見られるインフレ率への警戒感も示唆されており、当面利下げは見送り、様子見姿勢を維持するものと見ています。



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ブラジル中銀:政策金利を市場予想通りに据え置き、利下げは視野にないことを示唆

ブラジル中央銀行は2019年5月8日、政策金利を市場予想通り過去最低の6.5%に据え置くことを発表しました。世界経済の先行きに不透明感が残ること、ブラジル経済は昨年の景気減速の影響が残っていることを認めつつも、ブラジルは緩やかな回復過程に戻ると中銀は見込んでいます。

インフレ率は上昇にも低下にもつながり得る可能性があるため、当面は様子見の姿勢であることが示唆されました。

 

 

どこに注目すべきか:ブラジル、インフレ率、レアル、年金改革法案

ブラジル中銀は16年後半から18年前半まで政策金利をほぼ一貫して引き下げ、その後1年ほど6.5%で据え置いています。今回の声明には、足元上昇の兆しも見られるインフレ率(図表1参照)への警戒感も示唆されており、当面利下げは見送り、次の点から、様子見姿勢を維持するものと見ています。

まず、声明文の中に、インフレ率への懸念が示されています。ブラジル中銀は声明文でインフレ率に対する評価として、前回(3月21日)は「適切または居心地が良い」とやや楽観的な表現でしたが、今回は「適切」とだけ表現し、居心地の良さの部分を取り下げています。

また、ブラジル中銀の19年インフレ率見通しを見ると、前回は4.1%を予想していましたが、今回は4.3%に引き上げています。ブラジル中銀の予想の前提条件を見ると、為替レートがレアル安に修正されています。例えば、19年の想定レートを前回の1ドル=3.70レアルから3.75としています。

ブラジルのインフレ率はレアル変動の影響を受ける傾向が見られます。また過去のパターンを見ると、ブラジルではインフレ率が上昇すると個人消費(小売売上高)が減速するかなり明確な傾向が見られます。ブラジル中銀が世界経済の先行き懸念や、ブラジルの経済成長率を低いと認識しつつも、利下げは想定しにくいと思われます。

さらに、レアルは米国の金融政策に左右されやすい面がありますが、米連邦準備制度理事会(FRB)は当面据え置きが見込まれる点で据え置きは居心地が良いと思われます。

最後に、声明で構造改革と表現されている年金改革法案は期待と不安が交錯しています。レアルが19年2月頃からややレアル安となっているのは、年金改革への不安も含まれると見られます(図表1、2参照)。

年金改革は政府法案が提出され、その第一歩である合憲性が4月23日に認められたに過ぎません。今後特別委員会で内容が審議(ここで年金改革の内容が骨抜きにされる懸念)されたうえで、下院、上院共に6割の賛成票を確保する必要があります。幸いボルソナロ政権への支持率は高いのですが、年金改革法案の内容が具体化すると、世論の支持が変化するリスクも念頭に入れる必要があります。ブラジル中銀も当面、年金改革法案の行方を見守る姿勢と見ています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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