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8月のユーロ圏PMIは鈍化するも回復傾向は維持
梅澤 利文
2021/08/24

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概要

8月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)は60の大台を超えた前月を下回るも高水準を維持しました。やや過熱気味と見られた製造業PMIが前月に比べ悪化した一方で、サービス業PMIは前月と同水準を維持したことが下支えとなっており、バランスは悪くないとも見られ、ユーロ圏の7-9月期の経済成長に回復も期待されます。ただ、政治動向などに注意は必要です。



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ユーロ圏PMI:8月のPMIは製造業が減速するも、サービス業は底堅く推移した

IHSマークイットが2021年8月23日に発表した8月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI、速報値)は59.5と、市場予想の59.6、前月の60.2を下回りました(図表1参照)。8月のユーロ圏サービス業PMIは59.7と、前月の59.8と概ね同水準を維持し、市場予想の59.5を上回りました。

一方、8月のユーロ圏製造業PMIは61.5と依然高水準ながら、市場予想の62.0、前月の62.8を下回りました。IHSは、デルタ変異株の感染拡大に伴う需要の落ち込みや深刻な供給問題を悪化の背景と指摘しています。

どこに注目すべきか:ユーロ圏PMI、デルタ変異株、GDP成長率

8月のユーロ圏総合PMIは60の大台を超えた前月を下回るも高水準を維持しました。やや過熱気味と見られた製造業PMIが前月に比べ悪化した一方で、サービス業PMIは前月と同水準を維持したことが下支えとなっており、バランスは悪くないとも見られ、ユーロ圏の7-9月期の経済成長に回復も期待されます。ただ、政治動向などに注意は必要です。

まず製造業PMIの内容をサブ指数で見ると、生産指数、新規受注、雇用は共に前月を下回りました。特定の部門の悪化より、先月の製造業PMIが62.8と高水準であったことの反動とも見られます。また別のサブ指数である入荷遅延は78.1と、前月の80.0を下回りましたが依然高水準で、供給問題が生産を抑制していると見られます。

一方、サービス業PMIは8月が59.7とほぼ前月並みの水準を確保しました。ユーロ圏の一部に観光客の動きが見られるなど、ワクチン接種の進展と、移動の自由がある程度確保されたことはサービス業の下支え要因と見られます。

なお、ユーロ圏でもデルタ変異株の感染拡大が下押し要因と見られます。ただ、新規感染者数は昨年末や今年の春の感染拡大期を下回っています。日本や米国のように足元の感染者数が過去のピークに迫る、もしくは超えるといった状況に、ユーロ圏の主要国は(今のところ)直面していないと見られます。

次に、国別で見ると、フランスのPMIは小幅な低下に留まりましたが、ドイツは減速感が目立ちました(図表2参照)。輸出にピークアウト感が出た可能性が考えられそうです。

ユーロ圏の総合PMIは7月、8月と減速感は見られるも高水準を維持しました。PMIとGDP(国内総生産)成長率の関連性の高さから前期比で2.0%となった4-6月期に続いて、7-9月期の成長率も高水準での推移が想定されます。市場予想を見ても前期比で2%を超える成長が見込まれています。ユーロ圏は財政政策の拡大が想定されることもプラス材料です。

しかし、デルタ変異株の今後の感染動向は、今夏、ユーロ圏では人の移動が見られただけに不安は残ります。主要輸出先である中国の景気も気がかりです。また、注目はドイツの総選挙です。ユーロ圏に財政政策拡大の道を開いたのはドイツのメルケル首相の力量が大きかったと思われます。引退を表明しているメルケル氏の後継を決める選挙ですが、不透明な要因が多く残されており、今後の動向に注意が必要です。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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