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- RCEP、巨大経済圏誕生とその思惑
地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が日本や中国など国内手続きを終了した10ヵ国で先行して発効され、韓国やインドネシアなど国内手続きを残す5ヵ国と合わせ15ヵ国による巨大な経済圏が誕生します。日本当局の試算によるとRCEPが無かった場合に比べ、経済成長率は2.7%程度上昇すると見込まれています。
RCEP発効:中国、韓国を含んだ地域的な包括的経済連携が発効
日本、中国、韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)などが参加する東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が2022年1月1日に発効しました(図表1参照)。
RCEPにより国内総生産(GDP)で世界の約3割を占める巨大経済圏が誕生することとなります。なお、日本は中国や韓国と初めて自由貿易協定(FTA)を結ぶこととなります。
どこに注目すべきか:RCEP、TPP、CPTPP、関税撤廃率、中国
地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が日本や中国など国内手続きを終了した10ヵ国で先行して発効され、韓国やインドネシアなど国内手続きを残す5ヵ国と合わせ15ヵ国による巨大な経済圏が誕生します。日本当局の試算によるとRCEPが無かった場合に比べ、経済成長率は2.7%程度上昇すると見込まれています。
RCEPは参加国の間で既に締結されている経済連携協定を踏まえた上で、この地域の貿易・投資の促進やサプライチェーンの効率化に向けて、市場アクセスを改善し、制度の異なる国々の間で知的財産や電子商取引等など幅広い分野のルールを整備することが期待されています。
とはいえ、RCEPのような経済協定を実感するのは関税の引き下げでしょう。RCEPでは約9割の品目で関税が撤廃される模様です。即時撤廃率は中国で25%程度ですが時間とともに撤廃率が高まる見込みです。
RCEPの次の特色として、規模の大きさと多様性があげられます。日本は欧州などとの自由貿易協定や、米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)参加11カ国による新協定「包括的かつ先進的TPP協定(CPTPP)」を結んでいます(図表1参照)。しかし、GDP、人口で世界の約3割をカバーするRCEPは規模のメリットが大きいと見られます。日本当局の試算では成長率の押し上げが期待されています(図表2参照)。成長への寄与度を見ると民間消費の割合が高く、関税引き下げによる消費の伸びが想定されます。
なお、RCEPの意義を日本の立場から見ると、中国と韓国の間で初めて自由貿易協定を結ぶ点で、その意義は大きいと思われます。
次にRCEPを中国の立場から見ると、中国の貿易圏の拡大戦略が浮かび上がります。このことを説明するために、TPPとRCEPを比較します。TPP(並びにCPTPP)は中国が加入するには厳しいルールを設定して中国の行動を抑制する思惑がありました。しかしトランプ政権は多国間でなく、二国間での交渉を選好し、TPPから離脱しました。バイデン政権になってもTPP復帰の目処は立っていない状況です。
一方、RCEPはCPTPPに見られた厳しいルール、例えば政府が企業に電子取引のデータやコードを求めることの禁止や、国有企業への援助の禁止、環境規制の遵守などが緩やかで加入しやすかった面があると見られます。さらに、昨年9月に中国はCPTPPへの加入申請を行っています。中国は途中加入の場合ルール作成に関与できないことから、先のルールを受け入れる必要はあります。その準備が出来ているようには見えませんが、米国のアジア太平洋における経済協定が手薄となった現在、けん制の意味があるのかもしれません。
米中対立の影がRCEPに色濃く反映されているようです。
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