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- ロシアをSWIFTから排除、抑えるべきポイント
ロシアがウクライナに軍事侵攻する一方で、西側からより厳しい経済制裁措置が発表されています。特に効果が期待されているのが、ロシアの銀行のSWIFTからの排除と、ロシア中央銀行との取引禁止により、巨額の外貨準備が実質的に凍結される措置です。当レポートでは、ロシアのSWIFTからの排除について主なポイントを述べます。
ロシアへ経済制裁:SWIFTから排除される銀行について草案内容の一部が報道される
報道ベースながら、欧州連合(EU)は、ロシア軍のウクライナ侵攻に対する新たな制裁措置として、国際銀行間通信協会(SWIFT、世界の銀行決済取引網)から排除の対象となるロシアの銀行が草案で明らかになったと伝えています。
草案にある銀行リストには7行が含まれていると伝えられる一方で、そのリストにはロシア最大手の銀行や、国営天然ガス独占企業傘下の銀行は含まれていないと伝えられています。欧米経済の副作用への配慮と見られます。
なお、正式発表はこれからで、制裁対象銀行の変更もありうることから、最終確認は必要です。
どこに注目すべきか:SWIFT、ロシア、イラン、核合意、天然ガス
SWIFTからの排除が経済に与える影響について、イランのケースを参照します(図表1参照)。イランの核開発疑惑を受けEUは12年にイランの全ての銀行を対象にSWIFTから排除を行いました。その後イラン核合意を受け、16年にイランの銀行はSWIFTへのアクセスが再開されましたが、米トランプ政権時代の18年に再度SWIFTから排除されました。
イランのGDP(国内総生産)成長率とインフレ率(消費者物価指数、CPI)の動きを見ると、成長率は12年と18年に急低下しました。反対にインフレ率は急上昇しています。
成長率とインフレ率の内容を見るため、イランの輸出と輸入を振り返ると、12年と18年以降に共に大幅な減少となっています。産油国イランにとってSWIFTからの排除により原油輸出が滞ったことが深刻であったことがうかがえます。また、原油生産には油田掘削などへの投資が求められますが、イランへの投資も事実上凍結していました。ロシアへの投資にもブレーキがかかることが想定されます。
ここで、SWIFTについて簡単に紹介すると、SWIFTの実態は金融機関同士の取引に必要な情報のネットワークで、安全度が極めて高いとされています。国際金融のGメールなどと呼ばれることもあります。決済そのものはSWIFTでなく(コルレス)銀行が行います。したがって、メールやFAXで送金情報のやり取りをすることも想定は出来ますが、安全性の観点から現実にはほぼ不可能と見られます。
SWIFTのホームページによると、200余りの国または地域で1万1000社を上回る金融機関などが参加し、安全なメッセージをやり取りしていると示されています。これと同等のシステムは見当たりません。ロシアはクリミア侵攻後、独自のシステムSPFSがありますが、参加は主に国内の400行程度に限られます。中国の同様のシステムであるCIPSの共同利用も考えられますが、それでも規模は限られると思われます。
なお、そもそもSWIFTからの排除はどのように決めるかについてですが、通常であれば、EUが特定の機関や国に対する制裁を承認した場合にSWIFTから排除されると理解されています。先のイランの場合も、最終的にはEUが承認した格好となっています。
今回のロシアのSWIFTからの排除ではロシア全ての銀行でなく、一部にとどめています。ロシアからの天然ガスに依存するドイツは当局がロシアのSWIFTからの排除を支持した後も、天然ガスの輸入は確保されると述べています。それでもロシアへの打撃は深刻になると見られます。今回はSWIFTからの排除だけでなくロシアの中央銀行の孤立化という強力な手段を併用したこと、そして何よりも、ロシアのSWIFTからの排除において国際社会の結束を示せたからです。さらに、この動きの中で、世界の様々な企業がロシアとの関係を見直していることはプーチン大統領も誤算であったのではないかと思います。
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