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インドに忍び寄るインフレ懸念
梅澤 利文
2022/04/14

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概要

インドのインフレ率が上昇傾向です。足元のインフレ率はインド中銀のインフレ目標の上限を明確に上回っています。インドはエネルギー輸入国で今後も潜在的に物価が上昇する余地がありそうです。インド中銀はこれまで経済成長戦略を支持してきましたが、今後はインフレ対応に金融政策の重点を置くことが想定されます。



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インド3月CPI:政策金利は市場予想通り据え置くもインフレ見通しを上方修正

 インド統計局が2022年4月12日に発表した3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比6.95%上昇と、市場予想の6.40%、前月の6.07%を上回りました(図表1参照)。インド準備銀行(中央銀行)のインフレ目標は4%±2%です。

インド中銀は6日~8日の会合で主要政策金利であるレポレートを市場予想通り4.00%で据え置きました(図表2参照)。決定は全会一致で、インド中銀は引き続き緩和的な政策を維持しました。ただインフレ見通しは引き上げました。

どこに注目すべきか:インドCPI、インフレ見通し、上方修正、コロナ

インドのインフレ率が上昇傾向です。3月はほぼ7%にまで上昇し17ヵ月ぶりの水準となると共に、3ヵ月連続でインド中銀のインフレ目標の上限(6%)を上回りました。

インドのCPIの中身を見ると、食料品の構成割合はCPI全体の約4割を占めています。この食料品が3月は前年同月比で7.68%上昇しています。3月CPIが市場予想を上回る大幅な上昇となったひとつの背景と見られます。もっとも他の項目についても燃料は同7.5%上昇し、衣服も9.4%上昇となるなど、幅広い項目に価格の上昇が見られます。

インドは燃料の輸入国で今後、燃料価格の上昇が想定されます。一方インドは食料品は輸出国の面もありますが、ロシアの軍事侵攻を受けた小麦価格の上昇などの影響が食料品価格を押し上げた可能性が考えられます。

インド中銀は8日の会合ではロシアのウクライナ侵攻に伴う景気リスクを防ぐため金融緩和姿勢を維持しました。ただ、インド中銀は今後はインフレ対応に政策の重点をシフトさせることを示唆しました。

まず、インフレ見通しの引き上げです。インド中銀は23年度(22年4月-23年3月)のインフレ率予想を従来の4.5%から5.7%に上方修正し、インフレへの警戒感を示しました。

次に今後の政策の方針を示すフォワードガイダンスにも変化が見られました。「成長を支援し続ける一方で、インフレ率を政策目標の範囲内に抑えるため、緩和の解除に注力する」としており、インド中銀はインフレ対応への準備を進めていると見られます。

なお、経済環境にもインフレ対応へのシフトを正当化する要因が見られます。それはインドの新型コロナウイルスの新規感染者拡大が大幅に減少していることです(図表3参照) 。インド中銀は2月に開催された前回の会合ではオミクロン株対策を重視して据え置きを決定しました。当時のインフレ率は約5.6%程度で、インフレ対応を検討してもおかしくない水準でしたが、見送られました。

一方、現局面は経済環境が変わったと見られます。コロナの新規感染者数は落ち着いた一方で、ロシアの軍事侵攻でインフレが起こりやすくなっています。また米国金利は上昇傾向です。これが仮にインドルピー安をけん引すればインフレが悪化する可能性もあります。インド中銀は比較的早い時期に利上げを決定する可能性があると思われます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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