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- 米国小売売上高の光と影
4月の米小売売上高は、GDPの推定に利用されるコア小売売上高がプラスに転じ、米国個人消費の底堅さが示されました。サービス分野を中心に経済再開の需要は残されているようです。これを過剰貯蓄と堅調な雇用市場が後押ししている格好です。しかしながら、金融引き締めが続く中、米国消費の先行きに不安材料が増えている面もあるようです。
4月の米小売売上高は、市場予想を下回るも、前月は上方修正された
米商務省が2023年5月16日に発表した4月の小売売上高(速報値)は前月比0.4%増と、市場予想の0.8%増は下回るも、前月のマイナス0.7%減(速報値のマイナス1.0%減から上方修正)を上回りました(図表1参照)。
4月の米小売売上高の発表を受け、米国債市場では利回りが上昇しました。全体の小売売上高は市場予想を下回ったものの、小売売上高の構成指数で、GDP(国内総生産)の推定に利用されるコア小売売上高(飲食店、自動車ディーラー、建材店、ガソリンスタンドを除く)は4月が前月比0.7%増と、前月のマイナス0.4%減から急回復しました。米個人消費の底堅さが米国債利回り上昇の一つの背景と思われます。
4月の米小売売上高は回復を示したが、品目によりばらつきも見られる
4月の米小売売上高は品目により売上高にばらつきがみられましたが、サービス分野である飲食店が前月比0.6%増と、3月を上回りました(図表2参照)。米雇用統計でも同分野の採用は増加傾向を維持しており整合的な動きとなっています。ピクテでは米国の個人消費はサービス分野に支えられ底堅い動きを当面は維持するとみています。
一方で、家具や高級服を中心とした衣料、スポーツ等(スポーツ・書籍・趣味用品)などは苦戦しています。米国家計は、これらの商品に対し選別的な消費行動を行っている可能性がありそうです。
ガソリンスタンドでの売上高は4月がマイナス0.8%減となり、これで6ヵ月連続でのマイナスとなりました。店頭ガソリン価格は4月の平均で見ると上昇しましたが、売上高の増加にはつながりませんでした。ガソリン需要を示す別の統計では、米国の今年のガソリン需要は昨年に比べ低いとのデータもあり、今後の動向に注目しています。
米個人消費を支える要因に注意が必要な面も見られる
4月の米小売売上高は13あるカテゴリーのうち、自動車ディーラーや総合小売店、無店舗小売りなど7つのカテゴリーで前月比プラスを確保し、トータルで見れば底堅かったと見られます。
米国の個人消費はインフレや借入れコストの上昇などマイナス要因がある一方で、コロナ禍に積みあがった過剰貯蓄、堅調な労働市場が押し上げ要因となっていると見ています。過剰貯蓄は一部取り崩され消費に回されましたが、それでも1兆ドルを上回る規模の過剰貯蓄が残されていると見ています。
ただし、今後は消費の内容にも目を向ける必要があると見ています。米消費者の一部はクレジットカードに依存する割合が高まる傾向がみられるからです。例えば、米連邦準備制度理事会(FRB)が5月5日に発表した3月の消費者信用残高統計(速報値、季節調整済み)で、クレジットカードなどの「リボルビング払い」ローンが前月比で約176億ドルと急増しています(図表3参照)。このことは、米国全体では過剰貯蓄が残っていても、一部の消費者はクレジットカードでのリボルビング払いを利用して利払いを負担していることが想定されます。この背景として、過剰貯蓄の残高が人によっては、少ないもしくは使い切ってしまったことが考えられます。各個人が過剰貯蓄をどの程度保有しているのかは分かりませんが、所得分布別に保有割合を推定するサーベイがいくつか行われています。結果にばらつきはありますが、消費性向の高い低所得層の保有割合が低下しているように見受けられます。また、米国景気の先行きに懸念が高まる中、過剰貯蓄を貯蓄としてそのままにするという選択肢も考えられます。過剰貯蓄は消費を支える要因であるとともに、消費動向を占ううえでは不確定要因となっている面もあるようです。
米国個人消費は4月の小売売上高は3ヵ月ぶりのプラスとはなりましたが、今後の展開には注意も必要です。
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