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- 新興国投資編(12)そもそも債券投資のポイントは?
新興国の債券投資においても、債券投資の基本は同じです。低金利環境の長期化ということを踏まえ、債券投資のポイントを
確認しておきましょう。
債券投資のリターンの分解
まずは新興国を含めた海外への債券投資から得られるリター ンを分解してみましょう。
債券投資はお金を貸すという性格を持ち、時間をかけて利金 を積上げる投資です。利金を積上げて得られるリターンをイン カムゲインと呼びます。
債券に投資した後、景気動向、物価動向、債券に対する需 給関係等により債券利回りは変化します。債券は、発行日、 額面、利率、償還日が決められていることから、債券利回りは 債券価格の変動によって上下し、債券価格の値下がり時に売 却することで発生する損失をキャピタルロスと言い、債券価格 の上昇によって得られるリターンをキャピタルゲインと呼びます。 このように債券投資から得られるリターンはインカムゲインと キャピタルゲインですが、海外の債券に投資する場合は為替 レートが変動することで得られるリターンが加わります(図表1)。 もちろん、為替が逆方向に動いた場合にはマイナスのリターン となりますので注意が必要です。
時間をかけてインカムゲインを積上げる投資
債券投資から得られるリターンは、インカムゲインとキャピタ ルゲインということを説明しましたが、償還まで保有していれ ば、当該発行体にデフォルトが生じないかぎり、保有期間中 の利金が得られ、償還時には額面が戻ってきます。債券投 資は時間をかけて利金を積上げる投資で、図表2の例を用 いて保有(償還)年限毎の利金の積上がり状況を確認してみ ます。ここでは、利率5%で1年後、5年後、10年後を比較し てみましょう。わかりやすくするために、債券価格は変動せ ず、コストもかからないものとして計算します。
例を見ておわかりのように、1年後では5%ですが、5年後 25%、10年後では50%の累積リターンとなっています。当然 のことなのですが、つい「時間をかけて」ということが忘れがち になりますが、時間が大切なのです。
リスクと利回りのバランスが大事(その1)
国内金利よりも高い利回りを得ようとして、海外の債券に投 資する場合、日本円を投じて外貨で投資しますので為替変 動リスクを伴います。
日本の現状の金利水準では1%の金利でも高いと思います が、図表3の例で、利回り1%と5%の豪ドル建ての債券に投 資する場合を考えてみましょう。期間5年で債券価格は変 動せず、コストもかからないものとして計算します。 利回りが1%の場合、利金収入が5年間積上がったとしても 豪$5にしかならず、スタート時点よりも5円の円高豪ドル安に なっただけでも、スタート時点よりもマイナスになってしまいま す。一方、利回りが5%ですと、5年間の利金収入の積上がり が豪$25となり、スタート時点よりも10円の円高豪ドル安と なってもプラスとなります。
したがって、海外債券に投資する場合、為替変動の大きさ (リスク)を考慮し相応の利回りを得られるか、リスクと利回り のバランスはとれているか検討することがとても大切です。
リスクと利回りのバランスが大事(その2)
キャピタルゲインについても確認しておきましょう。債券投資 から得られるリターンの分解で、キャピタルゲインは利回り変 化によって債券価格が変動することで生じることを説明しま したが、ここでは例を用いて確認します(図表4)。
残存期間5年の利回り5%、債券価格100円の債券が、利回 り7%まで上昇して買い手と売買が成立する場合と、利回り 3%で売買が成立する場合を例として見てみます。利率5% の債券を7%の利回りで購入するためには価格を100円以下 にしなくてはなりません。価格の計算式は図表4の通りです。 また、3%の利回りにする場合には100円よりも高い価格で購 入することになります。このように、利回りが上昇すれば価格 が下がり、利回りが低下すれば価格が上がる、という関係に あります。
したがって、債券利回りの低い水準のところで投資を開始す るとその後の利回り上昇でキャピタルロスを被ることも想定で きますので注意が必要です。
流動性リスク
新興国債券へ投資する場合、流動性リスクについても確認 が必要となります。
流動性リスクとは、市場規模や取引量が小さい場合や市場 混乱時などの買い手が少なくなった場合、①換金したい時に 換金できない、②換金したい量に対して需要が少なく一部し か換金できない、③買い手が少なく大幅な値引きを余儀なく されるといったリスクです。 新興国はまだまだ経済規模自体が小さい国が多くあります。
新興国国債は先進国国債に比較して相対的に利回り面では 魅力的ですが、市場規模は先進国国債と比較すると小さい ことに注意する必要があります(図表5)。
通貨の流動性リスク
現地通貨建て新興国国債へ投資する場合、通貨の流動性 リスクにも留意することが必要です。新興国各国の通貨取引 量は少なく先進国通貨に比べて、相対的に流動性リスクが 大きくなります。また、カントリーリスクも忘れてはなりません。 カントリーリスクが顕現化しますと当該通貨との交換が容易で なくなったり、日本に資金を戻す回金に時間がかかったり、と いったことも起こり得ます(図表6)。
したがって、新興国の国債市場規模や通貨取引量、カント リーリスクを勘案しますと、やはり分散投資が必要になります。
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