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- 株価を下支えしてきた流動性が縮小~市場に左右されにくい公益株
各国・地域の中央銀行による金融緩和政策(超低金利)や各国政府による景気対策、ワクチンの接種開始などによる景気回復期待などを背景に成長性が期待される情報技術(IT)株式などが株式の上昇をけん引してきました。一方、世界の公益株式は、市場の動きと異なる値動きとなっています。こうしたなかこれまでの株価の上昇を下支えしてきた一因と考えられる主要各国・地域の流動性供給は縮小しており、今後の動向に注視が必要と見ています。
コロナショック後の株式市場~特異な局面の中で進んだ二極化
世界の株式市場は2020年3月にはコロナショックで大きく下落しましたが、その後回復し上昇してきました。背景には、各国政府や中央銀行による大規模な景気対策、金融緩和やそれに伴う経済活動再開への期待が挙げられます。
企業の設備投資の手控え、金融緩和による金利低下やリーマンショックの水準を超える主要国・地域の中央銀行の流動性供給などとあいまって、行き場のない資金が大量に株式市場に流れ込み、中でも、情報技術(IT)株式などを中心に世界の株式市場はコロナショック前の高値を更新し、上昇する展開となっています。
一方、世界の公益株式は、コロナショック前の高値をようやく更新しましたが、それまで相対的に堅調であったこともあり、出遅れ感が見られます。
株価上昇をけん引してきた流動性供給が縮小
世界的な株価の上昇の一因となってきたのは、世界的な流動性供給の拡大だと考えています。景気の急減速を下支えするために米、ユーロ圏、中国をはじめとした主要国・地域の中央銀行が資金を市場に供給したことで、流動性の供給は急拡大してきました。コロナショックを経て、世界の流動性はリーマンショック時を上回り、民間の流動性供給をあわせると、主要5地域・国(メジャー5)ではGDPの25%以上に達しました。その後、主要国の経済・財政政策や新型コロナワクチンの接種開始などを経て景気回復の兆しがみられ、主要国の流動性供給の伸びも2020年8月をピークに縮小傾向となっています。
過去の実績では、この流動性の変化と世界株式の株価収益率(PER)の変化とは相関が高く、この流動性の変化はPERの変化に数ヵ月先行しています。流動性は、2020年8月にピークアウトし、大きく低下しており、これまで株価の上昇とともに上昇してきたPERの動向には注視が必要と見ています。
流動性変化とPER変化の相関~業種により異なる
ただし、流動性とPERの変化の相関の高さ(株価との連動性)は、業種によって異なると考えられます。
過去の実績では、世界情報技術(IT)や一般消費財サービスなどの成長が期待される業種は、流動性の変化と株価収益率(PER)の変化との相関(連動性)が高くなっています。金融市場への流動性供給が拡大し、長期金利の低下により景気回復期待が高まると、その成長性が正当化されやすくなることなどが一因と考えられます。
一方、公益株式は好不況にかかわらず業績が相対的に安定しており、流動性の変化とPER変化はマイナスの相関(逆の動き)となっています。これが、コロナショック後、流動性拡大にもかかわらず、株価の上昇が鈍い要因の一つであると見ており、逆に流動性が縮小した場合にもその影響を受けにくいとも考えられます。
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