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- グロイン | 物価高騰、金利上昇による景気後退懸念が増すなかでの世界公益株式の投資戦略は?
●過去の実績では、世界公益株式は金利急上昇時は下落だが、金利上昇局面を通じては上昇
●インフレ耐性が強く、景気の変動の影響をより受けにくい米国の規制下事業比率の高い銘柄やクリーン・エネルギーに注力している銘柄の組入比率を高位に
■ 利上げ懸念などから世界公益株式は下落
金融市場では物価が高騰するなか、主要中央銀行の利上げ動向を懸念する展開となり、株価の変動が大きくなっています。
世界の株式市場は、9月の中旬以降大幅に下落しています。背景には、8月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが市場予想を上回り、9月下旬には、米連邦公開市場委員会(FOMC)で3会合連続となる0.75%の大幅利上げの決定や引き締め姿勢の継続が示されたこと、欧州中央銀行(ECB)をはじめ欧州の主要中銀による積極的な利上げが続くとの見方などを受けて世界的に景気後退懸念が高まったことがあると考えられます。こうしたなか、世界公益株式も長期金利の急上昇や、エネルギー価格高騰に対する欧州での電力価格の上限設定などの政治介入などが、足かせとなり、9月中旬以降大きく下落しています。
過去の実績では、長期金利が急上昇した際には、世界公益株式は下落する傾向がみられました。ただし、中長期的にみると金利上昇局面では世界公益株式は上昇しています。
■ 金利上昇の影響は?~長期金利の急上昇局面では注意が必要だが、中長期的には投資機会を提供している可能性も
長期金利の急上昇局面では、配当利回りが高い株式や金利負担の大きい企業の株式などが下落する傾向がみられ、注意が必要です。ただし、過去の実績では、金利急上昇時の株価の調整は、その後の長期金利の落ち着きとともに、比較的、短期間で終わったことが多く(下図参照)、中長期的には投資機会を提供している可能性があると考えることもできます。
公益株式はディフェンシブ性(景気の変動に左右されにくい特性)が強く、株式のなかでも配当利回りが高い傾向があることから、債券の代替としての投資対象となる場合があります。このため、債券利回りが上昇すると、公益株式の配当利回りの魅力が相対的に低下します。金利の上昇は企業の将来の利益や配当の割引現在価値の低下要因にもなります。また、公益企業は他の業種に比べて設備投資が多く、負債比率が高いことから将来の利払いや資金調達への悪影響が想定されます。金利が急上昇する局面ではこれらの点が投資判断に影響を与えるため、株価の調整が一気に起こると考えられます。実際、過去の実績では米国10年国債利回りが急上昇した際には、短期的に世界公益株式が下落する傾向がみられました(下図参照)。
一方、金利上昇局面では、物価が上昇していることが多く、燃料費なども上昇している傾向にあります。また、利払い負担も増加します。しかし、規制下の公益事業では、通常、こうしたコストの上昇はタイムラグをおいて電力、ガス、水道などの公共料金に価格転嫁することになります。電力、ガス、水道などは日常に不可欠なことから、他の業種と比べて価格転嫁が容易です。また、米国では規制下の電力料金は長期金利の水準が料金決定基準の収益率のベースとなっています。このため、金利上昇はタイムラグをおいて公益企業の収益にプラス要因となると考えられます。実際、中長期でみると、金利が上昇する局面では世界公益株式は上昇しています(下図参照) 。
■ 物価上昇下での景気後退による世界公益株式への影響は?
公益セクターは、株式市場のなかで、相対的に物価高騰や景気の影響を受けにくいセクターのうちの一つです。当ファンドの組入れの中心である規制下事業の比率が高い公益銘柄に関しては、発電燃料コストや支払利息、人件費などの変動費の価格転嫁が容易にできるため、物価高騰は収益に大きな影響を与えにくい傾向があります。特に、風力や太陽光発電などの再生可能エネルギーは燃料コストがかからないため、コスト優位性が高まります。また、電力、ガス、水道などは日常に不可欠であることから、景気後退時でも他の業種と比べて需要は大きく減少しないとみられます。
このため物価上昇下での景気後退局面では、公益企業は他の業種よりも収益見通しが安定する傾向がみられます。
■ 電力価格高騰に対する政治介入リスクは?
欧州では、ロシアのウクライナ侵攻による天然ガス価格高騰による、電力価格の急騰に対して、価格上限設定や超過利潤課税などの政治介入の動きがみられます。こうした政策は、化石燃料による発電から太陽光・風力などのクリーン・エネルギー(再生可能エネルギー)による発電への移行、グリーン・シフトを目指す公益銘柄にはマイナスの影響は少ないとみており、国や地域、規制環境、事業形態などを厳選した銘柄選別が重要であると考えます。
米国の公益銘柄に関しては、運用チームでは当ファンドで組み入れている公益企業各社と、「金利上昇は現在のところ問題ではなく、電気料金等への政治的介入のリスクは低く、規制当局もグリーン・シフトの加速を強く支持していること、業績や設備投資計画などに対する見通しは底堅いこと」を確認しています。
エネルギー安全保障の懸念に対応するために、米国インフレ抑制法案をはじめグリーン・シフトを促す政策が相次いでおり、グリーン・シフトが加速すると考えられます。当ファンドが注目するクリーン・エネルギーに注力する公益企業にとっては、より多くの設備投資をすることが容易になり、より大きな収益を得ることができるようになるとみられます。
■ 投資戦略~引き続き、「米国の規制下事業比率の高い銘柄」の組入比率を高位に
当ファンドでは、引き続きインフレ耐性が強く、景気の変動の影響をより受けにくい「米国の規制下事業比率の高い銘柄」や「クリーン・エネルギーに注力している銘柄」の組入比率を高位としています。欧州の銘柄に関しては、「クリーン・エネルギーに注力している銘柄」、「政治介入によるリスクが相対的に小さい地域で事業を行う銘柄」、「インフレに連動した料金設定を行う規制下で事業を行う銘柄」、などを厳選して投資しています。
■ (ご参考) 欧州のエネルギー高騰に対する政治介入による公益企業への影響は?~再生可能エネルギー発電事業者は、高水準の利益を維持することが可能
2022年9月14日、欧州委員会(EC)は、エネルギー価格の高騰に対処するための緊急介入として、1)電力価格の上限設定、2)超過利潤課税を提案し、 2022年10月6日に、この規則が採択されました。
電力価格の上限設定は、再生可能エネルギー、原子力、褐炭など、よりコストの低い電力企業に対して、一時的に上限を180ユーロ/MWhに設定します。また、エネルギー業界が、困難な時期に公平にコストを分担するよう、「超過利益」(過去3年の平均利益を20%上回る利益)に対して課税を行います。超過利益税は、施行後1年間に限って適用され、2022年の利益に対して欧州連合(EU)諸国が徴収し、加盟国の最終消費者に再分配されます。
欧州の電力卸売市場は発電源によるコストの違いにかかわらず、同一の売電価格が適用されています。この売電価格は、発電コストが最も高い天然ガス価格に左右されます。ウクライナ危機による欧州の天然ガス価格高騰で電力価格が急騰した結果、再生可能エネルギー発電事業者を含む、限界コストが相対的に低い発電事業者の収益は急拡大しました。
EU域内の再生可能エネルギー発電事業者にとって、1)上限価格は当初想定されていた価格を上回ったこと、2)超過利潤課税の導入等を巡る不確実性に対して利益予想が可視化されたことは好材料です。また、上限価格の180ユーロ/MWhは、2022年に入ってから付けた異常とも言える売電価格(およそ450~700ユーロ/MWh)を大きく下回るものの、再生可能エネルギーによる発電の限界コストを大幅に上回っており、引き続き高水準の利益を維持し続けることができるとピクテでは予想しています。
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