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- イタリア総選挙と投資戦略
●イタリア総選挙で9月26日の開票作業がほぼ終了しました。極右「イタリアの同胞(FDI)」を中心とした右派連合が、近く連立政権を発足させ、FDIのメローニ党首がイタリア初の女性首相に就任するとみられます。
●欧州連合(EU)とイタリアのエネルギー政策については、複数の施策が議論されており、いずれも不確実性が大きく、リスクが高いとみています。
●当ファンドでは2022年の早い時期にイタリアの銘柄の組入比率を引き下げ、展開次第では投資妙味があると判断した銘柄の少額保有にとどめています。
【イタリアで右派連合による連立政権が発足~エネルギー政策は不確実性が大きく、リスクが高い】
2022年9月25日投票のイタリア総選挙は26日、開票作業がほぼ終了し、内務省が公表した開票結果によると、極右「イタリアの同胞(FDI)」を中心とした右派連合が下院(定数400)で235議席、上院(同200)で112議席を獲得し、両院の過半数を制しました。政党別ではFDIが両院で約26%の票を獲得し、第1党になりました。FDIと極右「同盟」、中道右派「フォルツァ・イタリア(FI)」による右派連合は近く連立政権を発足させ、FDIのメローニ党首がイタリア初の女性首相に就任するとみられています。
右派政党の中では、FDIが相対的に強い立場にあるため、新政権による経済政策のアプローチは積極的でない可能性が高いとみられます。選挙戦では、FDIは財政支出の拡大に慎重な姿勢を示し、欧州連合(EU)や米国、北大西洋条約機構(NATO)などに関連する外交政策ではより穏健な立場を示しています。投資家は内閣の構成、特に財務相の人選を注意深く見守ることになります。市場に親和的な人選は好意的に受け止められる可能性が高いとみられます。
長期的には、右派連立の有力政党が、EUやEU予算法に対してより融和的で現実的なアプローチをとることは、小さなプラス材料ととらえるべきでしょう。とはいえ、EUとイタリアのエネルギー政策については、複数の施策が議論されており、大きな不確実性が残っているため、注視が必要と考えます。
【エネルギー政策~メローニ氏の選挙の公約の中核ではない】
エネルギー政策は、メローニ氏の選挙の公約の中核をなすものではありませんでした。これまでのところ、エネルギー関連料金支援のための政府支出には賛成していないとみられます。エネルギー価格の上限設定や、現行の天然ガスと電力の市場価格の連動性を切り離す政策をとらずに、エネルギー関連料金を抑えるためだけに多額の借り入れをすることは、結果として投機筋に資金を提供することになるからです。ただし、社会改革(最低市民所得の支給廃止など)の資金の一部を、エネルギー支援に充てることを検討することには、メローニ氏は前向きであることを示しています。
電力企業の負担増となる可能性のある政策に関しては、メローニ氏は選挙前の演説で、欧州のガス価格上限設定を提唱しています。もし、EU全体としての提案が迅速に行われない場合、イタリアの新政権が現在連動している、天然ガスと電力の市場価格の切り離しを一方的に行う可能性があります。この上限設定は、公益企業に対する政府の代替の支援策の内容次第では、公益企業の負担が増す可能性があります。また、「消費者が支払い不能に陥った場合でも、電気やガスの供給を停止することがないようにする」とも言及しています。この場合は公益企業の不良債権が増加するリスクがあります。
中長期的なエネルギー政策に関しては、FDIは再生可能エネルギーによる発電容量を増やすことに賛成しています。ただし、この点については一般的な発言にとどまっています。むしろ、国内ガス生産量の増加や原子力発電の導入を前提としたエネルギー自立計画の必要性に言及しています。
【その他の政策~EUの政策準拠の姿勢は市場に安心感】
メローニ氏は、イタリアの国際的な立場(NATO、対ウクライナなど)について、市場に対して安心感を与えるメッセージを発しています。また、EU加盟継続に関しては、起こりうる変化についてEUや関連機関と交渉する意志を強調しました。
同氏は一般市民の生活費・光熱費高騰の危機を救済し、経済成長を促すために拡張的な財政政策を支持する一方で、EU予算法を尊重することを約束し、市場に安心感をもたらしました。イタリアにとってコスト負担が大きい財政政策には、債務増加の懸念があるため、市場は重要視しています。しかし、この観点から、同氏の政策の影響を判断するのは時期尚早と考えます。
【運用チームの見解と当ファンドへの影響~現在は不透明な新政権の政策の動向次第で、関連銘柄の株価は大きく左右される展開】
今後は、10月下旬に行われるであろう新内閣の組閣を前に、政策の行方が市場の注目点となります。
新内閣が2023年の目標とする予算と財政赤字の提示は、イタリアの国債利回りに大きな影響を与える可能性があります。イタリアの経済成長率の鈍化と、追加的な財政支出圧力(借入コストの上昇、インフレに連動する年金、再交渉予定の公共部門給与など)が相まって、次年度の財政赤字の水準が従来の目標である対GDP比3.9%から押し上げられそうです。このことは、イタリアの電力会社の株価に影響を与えることが予想され、当ファンドでも注視している点です。
エネルギー政策では、風力発電事業者にとっては、風力発電税に関して不透明であり、新政権が欧州委員会(EC)の提案に沿うようにするのか、より制限的な措置を講じようとするのか、が注目点です。電力をはじめとしたエネルギー小売業者にとっては、消費者のエネルギー関連料金負担を軽減するために、支援策が施行される一方、事業者に対して代替の支援が行われない場合には、事業者の負担が増加する可能性があります。
風力発電事業および電力小売事業を行う、イタリア電力にとっては、政策が同社にとって厳しいものになった場合には、株価にマイナスの影響を及ぼすことになります。一方、新政権がEUと協調し、欧州のエネルギー市場の構造改革など公益業界にとって中長期的に好ましい政策が実行されれば、イタリア電力の株価は大きく上昇する可能性もあります。運用チームでは、イタリア電力 にも直接、状況を確認しています。
【運用方針~年初にイタリアの銘柄の組入比率を大幅に引き下げるも、展開次第では投資妙味がある銘柄の保有を継続】
当ファンドでは、公益業界への政府の介入を懸念し、2022年の早い時期にイタリアの銘柄の組入比率を大幅に引き下げています。
イタリアの関連銘柄に関しては、「イタリアの政治的不確実性が高まっている」という現在のシナリオを、銘柄選別のためのスコアに反映させ、展開次第では投資妙味があると判断した銘柄の組入れを、少ない割合で保有継続しています。この水準は、現在の環境下で適切な組入比率であると考えています。イタリア関連の銘柄では、公共料金がインフレに連動する規制の下で事業を行うテルナと、再生可能エネルギーに注力し、EUの政策の恩恵を受けると期待されるイタリア電力を保有しています。当社は引き続きイタリアの動向を注視し、投資機会を捉えていきます。
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