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- 資源価格が高騰するも料金に転嫁ができる公益企業の業績の安定的な成長見通しは変わらず
●資源価格が高騰するも料金に転嫁ができる公益企業の業績の安定的な成長見通しは変わらず
●バリュエーションはPERでみると相対的に高いが、世界の多くの企業の業績下方修正の可能性に比べ公益企業の業績は下方修正の可能性が低いと見られるということを勘案すると、魅力的な水準
キーポイント
米国では規制下の公益事業の足元の業績見通しは、規制上、発電燃料価格や設備投資コスト増加などの価格転嫁のタイムラグが比較的短く、株価を見るうえで良い指標となります。一方、欧州の多くの公益事業の業績は、価格転嫁のタイムラグが大きく、政府の介入リスクも比較的大きいため、株価を見るうえで他の要素も勘案する必要があります。
欧州では資源価格が高騰すると政府が介入し、コスト上昇分を料金に転嫁できないといったリスクが、以前からあるため、各国の動向を注視しながらポートフォリオを構築しています。
資源価格の上昇は、既存または新規の風力および太陽光などのクリーン・エネルギー開発計画やその収益に重大な影響を与えず、これらの設備投資が減速することはないとみています。
グリーンシフトは、各国政府がエネルギーの安定供給と価格変動の抑制を求めるなかで、資源価格の上昇によって加速すると考えます。
公益事業セクターは現在のバリュエーション(投資価値評価)でみると、MSCI世界株価指数に対して割安には見えませんが、市場全体の収益期待が低下し、業績の下方修正の可能性が高まるなかで、電力会社の業績予想は他の業種よりも景気に左右されにくく、下振れリスクが小さいことを勘案すると依然投資妙味があると考えます。
足元の状況は、公益セクターのパフォーマンスにとっては有利な環境が整っており、市場は、景気サイクルの後退に移行する中で、このセクターの相対的な魅力を織り込み始めていると当社は考えています。
収益動向~価格転嫁のタイムラグが比較的短い米国公益企業の業績は堅調
米国では、規制下の電力事業の比率が高く、規制の仕組みや、事業の基本的な傾向から業績を正確に予想することができると考えています。
欧州では(テルナ(イタリア、電力)やナショナル・グリッド(英国、総合公益事業)のような規制の厳しい送配電事業を行う企業などを除き)、規制の仕組みが米国と異なる点もあり、自由化事業の比率の高い企業も多く、米国の電力会社とは異なったビジネスモデルとなっています。
欧州では、風力発電や太陽光発電などの新しいプロジェクトに設備投資をする場合、収益を上げるのに5年程度かかるプロジェクトであることを前提に投資を決定します。
プロジェクトの資本コストは計画段階からかかりますが、その収益の実現は完成後の5年経過してから始まり、その時になって初めてコストがプロジェクトのライフサイクルにわたって償却されることになります。そのため、例えばRWE(ドイツ、総合公益事業)のような企業が、収益をあげている既存の石炭発電所を閉鎖して、現在は収益をあげていない新しい風力発電などのクリーンエネルギーに切り替える場合、石炭発電所の閉鎖により現在の収益は減少する一方、将来の収益の計上は5年先となります。
そのような企業は、ファームダウンという方法でそれを管理することができます。ファームダウンとは、顧客を見つけて電力供給契約(PPA)を締結した後、プロジェクトの少数株式持分を売却する方法です。これにより、将来の収益を前倒しで得ることができます。現在、ファームダウンの際の売却価格は、投入した資産の1.5〜2.0倍であり、これらの資産に対する強い需要があることを示しています。
このように、欧州企業の業績見通しは単純ではないことから、米国の規制対象企業のように、収益見通しを単純に直線的な見通しで示せない仕組みとなっています。
したがって、米国公益企業の収益動向は、その基本的な事業の進捗を判断するのに非常に良い指標となりますが、欧州の企業の場合はあまり良い指標とはなりえません。
このことは、米国公益企業の株式が比較的高い株価収益率(PER)でも取引される理由はとして、その先の長期的な収益見通しの実現性が高いことを反映しています。
政府の介入 ~欧州の一部の国では注意が必要
欧州ではエネルギー価格の上昇から消費者を守るために電力料金に上限を設定するなどの政治的な介入が大きな問題点となっていますが、これは今に始まったことではありません。当ファンドの運用チームでは以前からこのことを考慮しており、2021年の半ばにポートフォリオの入れ替えを行いました。政治、規制リスクの高いフランス電力会社(フランス、総合公益事業)を売却し、イタリア電力公社(ENEL)(電力)の組入比率を引き下げました。スペインでも政治圧力がかかりました。一方、ドイツでは介入の可能性は極めて低く、英国では起こりそうにないと考えています。実際、スペインとイタリアは既に介入がありましたが、その後、影響はごくわずかであることが確認されています。米国では、規制により管理するという方針であり、あまり問題にはならならないと見られます。当ファンドのおよそ7割は米国の公益企業となっています。このため、今後も政府の介入リスクの影響は全体では大きくならないと考えています。
むしろ、電力価格が上昇し、政府が介入の必要性を感じているのは資源価格に関してであり、風力や太陽光発電には燃料費がかからないため、経済的にグリーンシフトがより魅力的になっていることも重要な点です。
資源コストと風力や太陽光発電への影響~価格転嫁できるため大きな影響は無し
電力会社向けの既存プロジェクトについては、既にコストが確定していることから、足元の資源価格の上昇は結果的に影響は大きくありません。新規プロジェクトについては、より高い価格でプロジェクト契約を結ぶことになるため影響はありますが、直近の電力取引では、こうしたコストの上昇が入札価格の上昇につながることが確認されています。つまり、電力会社はプロジェクトに対して同程度のマージン、同程度のリターンを維持できています。現在までのところ、新規プロジェクトの入札環境は、資源コストの上昇を考慮した上で、非常に適正であることが証明されています。
実際の入札においては、風力や太陽光におけるこうした設備投資コストの上昇は、強い事業者や当社が投資している大企業にとって好材料となると予想されます。しかし、これまで新規プロジェクトや成長を確保するために積極的な入札を行ったにもかかわらず妥当なリターンを得られなかった弱小企業は、現在、利幅が圧迫されています。当ファンドでは、RWE、イベルドローラ(スペイン、電力)、ネクステラ・エナジー(米国、電力)、SSE(英国、総合公益事業)など、規模、当局との関係、経験において優れた企業に投資しており、これらの企業は業界シェアを獲得するのに非常に有利な立場にあります。
当ファンドの運用チームは先週、新しい太陽光発電所を建設中の、ある規制下の企業の経営陣と電話で話をしました。彼らは、そのプロジェクトのコストが当初の計画より8-10%高くなったと言っています。このコストアップは、電力料金に反映されます。なぜなら規制当局は、化石燃料である天然ガス価格が風力や太陽光などのコストよりはるかに高くなるのを見てきたからです。そのため、たとえ代替エネルギーの設備投資コストが10%増加したとしても、最終顧客にとっては、化石燃料の価格上昇よりもはるかに小幅な電力価格の上昇となるのです。
政府は、風力や太陽光などの開発を促進し、グリーンシフトを加速させ、供給の安定性を確保するために、許認可ルールを緩和する方向にシフトしています。許認可プロセスが容易になれば、新規プロジェクトの開発コストが下がり、設備投資コストの増加を一部相殺することができます。
つまり、将来の設備投資が資源価格の上昇に影響されることはなく、現在の状況はグリーンシフトを加速させるだけだと確信しています。
非規制下事業への影響~独立系発電・販売事業者(IPP)には注意
純粋な独立系発電・販売事業者(IPP)の中には、コストが大幅に上昇しているにもかかわらず、政府が電力の卸売価格に上限を設定している場合には、収益への圧迫を受ける企業も出てくると思われます。しかし、当ファンドではそのような銘柄には投資していないので、当ファンドにとって直接の問題とはならないと考えています。
石油・天然ガスのパイプライン運営企業については、短期的には、資源価格の上昇は良いことであり、株価に反映されてきました。しかし、パイプライン運営企業にはグリーンシフトによる長期的な成長ストーリーの恩恵を受けられず、長期的にパイプライン資産をどうするかという疑問が残ります。従って、現在これらの企業に投資することは、当ファンドの「グリーンシフト」のシナリオに沿わないため、長期的な観点からは正当化されないと考えます。
バリュエーション~世界の多くの企業が業績を下方修正する可能性を勘案すると、相対的に業績見通しが安定している公益企業の投資妙味は高まっている
世界公益株式(MSCI世界公益株価指数)を世界株式(MSCI世界株価指数)と比較すると、このセクターは現在、1年先の株価収益率(PER)は世界株式市場に対してわずかなプレミアムで取引されています。対世界株式の相対株価純資産倍率(PBR)は過去平均以下であり、配当利回りはほぼ平均となっています。
とはいえ、もし市場が景気減速を懸念する時期に入れば、世界株式の平均的な期待収益は減少し続けることになります。特に米国における公益事業の成長の見通しと長期的な安定性を考えると、公益事業セクターよりもはるかに減少幅が大きくなる可能性があると考えられます。そうなると、世界株式の株価収益率(PER)は上昇する傾向になり、公益事業セクターの相対的な株価収益率(PER)は、現在よりもずっと魅力的に見えることになります。収益分析では、公益セクターの業績は(特に前述したように米国では)非常に安定しているのに対し、世界株式市場の全体としての業績予想は不安定で、足元でも低下傾向にあります。このため、こうした業績動向を勘案すると、相対的に公益セクターの投資妙味は高まっていると考えられます。
結論~市場はグリーンシフトがもたらす今後数十年にわたる長期的な成長を十分に評価していない
電力会社がコスト増を顧客に転嫁できないのではないかという懸念は理解できますが、当ファンドではその点を非常に注意深く価格転嫁に問題がないということを確認しています。当ファンドの2/3は、この問題が大きくない米国に投資しており、実際これまで大きな問題はありません。そして、残りの1/3は、各国政府の介入リスクを勘案して銘柄選別を行っています。
公益事業は、歴史的に景気サイクルの初期には良いパフォーマンスを示さないという傾向がありますが、現在はサイクルの後期段階に移行しています。バリュエーション(投資価値評価)は以前ほど割安ではありませんが、相対的に安定した業績の見通しがみえています。
公益事業は非常に力強い長期的な成長期を迎えようとしているとみています。公益セクターは相対的に以前ほど割安ではありませんが、市場はグリーンシフトがもたらす今後数十年にわたる長期的な成長を、まだ十分に評価していないと考えています。
※当資料はピクテ・グループの海外拠点が作成したレポートをピクテ投信投資顧問が翻訳・編集したものです。
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