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- 米国大統領選、トランプ氏勝利の公益株式への影響
●共和党トランプ氏が掲げる政策は、一部の洋上風力発電に注力する欧州企業にマイナス、ガス関連の公益企業にプラスですが、公益業界全体では中長期的な成長トレンドに大きな影響はないとみています。
■ 米国の大統領選でトランプ氏勝利の公益株式への影響~中長期的な成長トレンドに大きな影響なし
米国の大統領選でトランプ氏が勝利し、上院でも共和党が過半数を獲得しました。11月6日の公益セクターの株価は、米国のS&P公益事業株価指数-0.98%、欧州のユーロストックス600公益事業株価指数は-2.55%下落しました(いずれも現地通貨ベース、前日比)。なかでも、洋上風力発電関連銘柄の下落が目立つ一方、パイプライン関連銘柄などは上昇しました。
共和党トランプ氏が掲げる政策は、洋上風力発電に注力する一部の欧州企業にマイナス、ガス関連公益企業にプラスになると考えます。短期的には政策によって、特定の技術が促進されたり、阻害されたりする可能性はありますが、今後、数十年にわたって、公益業界の成長をけん引すると考えている第1の波「グリーンシフト」や第2の波「電化の拡大」は、4年ごとの米大統領選のような政治サイクルを超越して継続すると考えられることから、公益業界の長期的な成長トレンドは大きな影響を受けることはないとみています。
■ 考えられる直接的な影響(1)~インフレ抑制法(IRA)の廃止
バイデン政権下で制定されたインフレ抑制法(IRA)では、再生可能エネルギーの開発の促進や関連した事業に対する税額控除が定められています。今回の政権交代により、特に米国の洋上風力発電に関わる業者の株価をめぐって、投資家センチメントに短期的にマイナスの影響があるとみていますが、公益業界全体への影響は限定的と考えます。
理由は以下のとおりです。
【影響を受ける可能性のある洋上風力発電の割合は小さい】
米国の洋上風力発電の発電容量の全発電容量に占める割合は0.03%と非常に小さく、また、当ファンドでは関連銘柄の保
有比率がMSCI公益株価指数に比べて小さく、影響は限定的です。米国の陸上の再生可能エネルギー発電に関しては、大
きな悪影響を与えるとは考えていません。多くの公益企業の経営陣の見解も同様です。
【インフレ抑制法(IRA)と関連の税額控除を完全に廃止するのは困難】
IRAに関しては、共和党支持者の多い州が、民主党支持者の多い州より、多くの恩恵を受けています。変更の可能性はありますが、政策の基本方針は維持される可能性が高いとみています。トランプ氏の勝利演説ではIRAについては全く触れられていませんでした。
【IRAによる税額控除が廃止されたとしても公益企業全体に大きな影響なし】
仮に税額控除の廃止や削減などがあったとしても、1)米国の風力・太陽光発電はすでにコスト競争力がある、2)規制下の公益企業は税額控除がなくなっても法人税等は電力料金に価格転嫁が可能、3)一度決定した税控除はすぐには撤廃できない、ことなどから、影響は限定的だと考えられます。
■ 考えられる直接的な影響(2)~化石燃料開発と液化天然ガス(LNG)輸出解禁
【エネルギー・インフラ(ガス・パイプライン)に対する投資家のセンチメントに短期的に好影響があるとみる】
トランプ氏が大統領となり、LNGの輸出禁止を撤廃すれば、わずかながら生産量の増加要因になるとみられ、パイプラインを運営する企業などが恩恵を受けるとみられます。現在、ガス価格は低水準であり、ガス会社は経済的でなければガスを増産することはないとみられることから、影響は限定的と考えられます。
■ 考えられる間接的な影響~ウクライナ 戦争の早期終結
【一部の欧州電力企業の短期的な業績見通しにマイナスの影響があるとみる】
トランプ氏は、ウクライナでの戦争を早期に終結させるために努力すると主張しています。仮に実現した場合には、ロシア産ガスへのアクセスが改善されるため、欧州のガス価格にはマイナスの影響を与えるとみられます。ガス価格は依然として欧州の電力価格に大きな影響を与えるため、ガス価格の下落は、一部の欧州電力企業の短期的な業績見通しにマイナスの影響を与える可能性があります。
■ 注視すべき点~金利が上昇した場合の短期的影響
【短期的にマイナスですが、中長期的には利益成長を反映すると考える】
公益株式は債券の代替としての投資対象にもなるため、金利が上昇すると、公益株式の配当利回りの魅力が相対的に低下します。また、金利の上昇は企業の将来の利益や配当の割引現在価値の低下要因にもなります。更に、公益企業は他の業種に比べて設備投資が多く、将来の利払いや資金調達への悪影響が想定されます。金利が急上昇する局面ではこれらの点が投資判断に影響を与えるため、株価の調整が一気に起こる可能性が高いと考えられます。ただし、中長期でみると、世界公益株式は金利の急上昇局面を経ながらも、株価はこのような短期的な金利のマイナス寄与よりも、中長期的な利益成長を反映して、上昇しています。
■ 運用方針
当ファンドは以前から、米国は欧州よりも魅力的であると見ており、7割超を米国の公益株式に投資しています。当社が保有してきた欧州の主要公益企業(RWE(ドイツ、独立系発電・エネルギー販売)、イベルドローラ(スペイン、電力)、SSE(英国、電力)など)にとって、電力価格は短期的な収益に影響を与える可能性がありますが、再生可能エネルギー開発、ガス施設、水素発電、送電網への設備投資など、グリーンシフトにけん引される長期的な基本見通しは変わりません。
公益銘柄の中でも、セグメント別に短期的な影響が異なることから、米国大統領選後の株価の調整を投資機会と捉え、銘柄を厳選して投資を行っていく方針です。
■ 公益業界の長期見通し
【結論:公益業界の長期トレンドは需要にけん引され、政策の影響を受けにくいとみる】
今後、数十年にわたって、公益業界の成長をけん引すると考えている第1の波「グリーンシフト」や第2の波「電化の拡大」は、4年ごとの米大統領選のような政治サイクルを超越し、政策によって公益業界の長期的な成長トレンドは大きな影響を受けることはないとみています。
【第1の波:グリーンシフト】
グリーンシフトは、以下の理由で政策の影響を受けにくいと考えられます:
1. クリーンエネルギーはすでにコスト競争力がある
2.クリーンエネルギー関連の税額控除がなくなっても税金は電力料金に価格転嫁が可能
3.一度決定した税控除はすぐには撤廃できない制度
4.ハイテク企業中心に政策に関係なくクリーンエネルギー電力供給契約が拡大
5. 関連政策は主に、連邦レベルではなく州レベルで決定され、クリーンエネルギープロジェクトは主に共和党支持者の多い州において行われ、雇用を創出しており、これらのプロジェクトに反対するインセンティブが小さい
【第2の波:電化の拡大】
生成AI(人工知能)利用の拡大などによるデータセンター建設の加速や拡大、電化の拡大などは、需要の拡大が原動力となっており、政策の影響を受けにくいとみています。
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