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- グロイン | 運用の振り返りと市場のポイント
● 2024年10月~12月のピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)(以下、当ファンド)の基準価額は、AI(人工知能)の普及に伴う電力需要増大への期待や相対的に良好な業績見通しなどを背景に、上昇。
● 「グリーンシフト」を目指す公益企業は中長期的な成長が期待され、株価の調整は中長期的な投資機会になるとみる。
■ 当ファンドのパフォーマンス
※長期のパフォーマンスは本レポートの最後に掲載しています。
■ パフォーマンスの変動要因
【2024年1月~2024年12月(過去1年間)】
当該期間でパフォーマンスへのプラス寄与度が大きかった主な銘柄は、PSEG(米国、総合公益事業)、ネクステラ・エナジー(米国、電力)、アメレン(米国、総合公益事業)などでした。PSEGは、AI(人工知能)・データセンターの拡大や電化の進展によって、クリーンエネルギーを用いた電力需要増加の恩恵を受けると期待されることなどから、上昇しました。ネクステラ・エナジーは、2024年第1四半期および第2四半期決算の内容が好調であったこと、また米国における電力需要増大への期待などを受け、上昇しました。アメレンは、2024年第2四半期決算において2024年通期の業績予想と長期の1株当たり利益(EPS)成長見通しを再確認したことなどが上昇要因となりました。
一方、マイナス寄与度の大きかった主な銘柄は、RWE(ドイツ、独立系発電・エネルギー販売)、SSE(英国、電力)などでした。RWEは、2024年に入り欧州の電力価格が下落したこと、また電力価格下落を受けて2024年の利益見通しが予想レンジの下限になるとの予想を発表したことなどを背景に下落しました。SSEは、同社の洋上風力発電プロジェクトの遅延とコスト超過、また英労働党新新政権の予算に対する懸念などから下落しました。
【2024年10月~12月(過去3ヵ月)】
当該期間でパフォーマンスへのプラス寄与度が大きかった主な銘柄は、センターポイント・エナジー(米国、総合公益事業) 、センプラ(米国、総合公益事業)、アメレンなどでした。3社とも総じて、2024年第3四半期決算の内容が好調であったことなどが、上昇の背景となりました。センプラ、センターポイント・エナジーは、同年の業績予想を再確認し、設備投資の大幅な増額を発表しました。アメレンは、2025年の業績予想が市場予想を上回ったこと、資本計画の見通しの明るさなどが好感されました。
一方、マイナス寄与度の大きかった主な銘柄は、ネクステラ・エナジー、RWE、コンステレーション・エナジー(米国、電力)などでした。ネクステラ・エナジーは、米大統領選の結果を巡る不確実性や増資を発表したことなどを背景に、下落しました。RWEは、同社による米国の電力会社買収の噂や欧州の水素戦略策定に対する懸念などが嫌気されたことや、米トランプ次期大統領の政策による、エネルギー価格や再生可能エネルギー事業への影響の不透明さなどが懸念され、下落しました。コンステレーション・エナジーは、米国の原子力発電所からのデータセンターへの電力供給計画が、規制当局によって却下されたこと、年末にかけて利益確定の売りにさらされたことが主な下落要因となりました。
■ 2024年10月~12月(過去3ヵ月)の投資行動
当該期間の売買に関しては、電力需要の増加に伴い、短期および中期的には天然ガス需要が増加するとの見方からガス関連公益企業が恩恵を受けるとみて、米国の石油・ガス・消耗燃料銘柄などを購入しました。増資を発表したことにより株価が下落したPG&E(米国、電力)を買い増ししました。また、株価が下落した局面を好機とみて、コンステレーション・エナジーを買い増ししました。
その一方で、センターポイント・エナジーを利益確定のため、一部売却しました。また、米大統領選の結果による再生可能エネルギー事業への影響を考慮し、英国とスペインの電力銘柄などを、一部売却しました。
■ 今後の見通し、運用方針
主要国の金融政策動向、地政学的リスクなどの先行き不透明感が依然として残っているなか、株式市場や為替市場の値動きが大きくなる可能性があり、より慎重な投資姿勢が必要と考えます。
こうした市場環境下、世界公益株式は、(1)米国利下げ開始で金利面でのマイナス要因が後退していること、(2)株価収益率(PER)は相対的に割安な水準であること、(3)データセンターの増加などによる電力需要増加、グリーンシフト(クリーンエネルギーによる発電への移行)による設備投資の拡大などを背景に、業績見通しが良好であること、(4)市場の不透明感が高まるなかでは、特に当ファンドが注目する規制下の公益事業の、業績が底堅くかつその見通しの確実性が高く、ディフェンシブ性(業績が景気に左右されにくい特性)に注目が集まると考えられること、などが、公益株式の株価を下支えするとみています。
米トランプ政権のエネルギー政策による公益企業への影響に関しては、米国規制下の公益事業は、一定の利益を確保したうえで、税金や燃料費、資金調達コストなどの増加を料金に転嫁できる仕組みを有していることから、政策如何による利益への中長期的なマイナスの影響は少ないとみています。
■ 中長期保有に当たってのポイント
中長期的には世界的に電力などの需要拡大が予想されており、公益企業の事業環境は良好との見方には変わりありません。
ウクライナ危機をきっかけとしたエネルギー安全保障問題などを背景に、主要国・地域の脱炭素化に向けた政策強化の動きが進展しています。これらの動きは、風力、太陽光、水力などのクリーンエネルギー発電の拡大やこれらの発電を支えるための送電網の拡大を後押しするとみられ、長期にわたって公益業界の成長に寄与し、グリ-ンシフトを目指す公益企業の株式にプラスになるものと期待されます。
当ファンドでは、クリーンエネルギーによる発電の割合が高い企業に注目しています。さらに、米国の規制下事業の比率の高い銘柄は景気に左右されにくく、収益見通しが安定していることから、組入れを高位にしています。また、公益企業に対してエンゲージメント(対話)を行い、グリーンシフトを促しています。
(以下、当該期間の注目すべきトピックについて解説します。)
■ 米国のトランプ新政権下の政策の公益株式への影響と公益株式の見通し
世界の公益業界は、長期的に続く大きな「2つの波」による電力需要の拡大を背景に、今後数十年にわたり、成長トレンドが継続すると予想しています。
【第1の波】社会的な脱炭素化の動きや発電コストの低下によりクリーンエネルギーへの転換が加速する動き
【第2の波】生成AI(人工知能)普及の加速等によるデータセンター増加、電気自動車の普及、様々な電化の進展
米国次期大統領トランプ氏の公約による、公益業界のファンダメンタルズへの影響はこの2つの波により限定的と考えます。
市場の先行き不透明感が高まるなかでも、公益株式は、企業の業績見通しの確実性が高く、長期にわたる収益と配当の安定した成長を予想しています。
また、世界公益株式のバリュエーション(投資価値評価)は、高い利益成長見通しにもかかわらず、現在、魅力的な水準であることから、中長期的な投資機会を提供するとみています。
■ 公益企業の成長ドライバー|AI・データセンター拡大等による電力需要増
AI(人工知能)等の普及により、データセンターを中心に電力需要(消費量)が大幅に増加することが予想されています。生成AIの代表格であるChatGPTの1リクエストあたりの電力消費量を見ると、グーグル検索1回あたりの約10倍の差があり注、電力需要増大に寄与すると考えられます。
データセンターの電力需要増や電気自動車、IoTの普及など、経済の電化の加速を背景に、米国の電力需要の伸びは、過去20年間の+9%から今後20年間は+55%と、約6倍になると予想(2024年11月予想)されています。この予想は、電力需要の急拡大を背景に5ヵ月前の予想から大きく上方修正されました。
注:国際エネルギー機関(IEA)「Electricity 2024 Analysis and forecast to 2026 (https://www.iea.org/reports/electricity-2024) CC BY 4.0」のデータ)
■ 公益企業の成長ドライバー|安くて早いクリーンエネルギーへのシフト
当ファンドが注目している米国の太陽光や風力の発電コストは、火力発電などよりも低下していることに加えて、太陽光や陸上風力発電の施設の建設に必要な年数は、平均で1-4年と、水力や原子力などの場合と比べて短く、急速な電力需要の拡大に対応し易いことなどが、グリーンシフトが加速する大きな要因となっています。
■ 世界的に風力や太陽光発電中心に電力設備の拡大が予想される
世界的にネットゼロ(脱炭素化)を推進する政策や環境意識の高まりが広がる中、AI・データセンター関連の電力需要増加や電化の進展、そしてクリーンエネルギーの発電コスト低下や建設にかかる期間の短さなどを背景に、クリーンエネルギー発電施設の設備投資拡大が予想されています。加えて、大手テック企業中心に2030年までにクリーンエネルギーへ100%シフトする目標を掲げる動きなどもあり、クリーンエネルギーを中心に設備投資が拡大すると予想されます。
■ (ご参考)設備投資の拡大は、世界公益株式の業績、パフォーマンスに寄与
過去の実績では、世界公益株式のパフォーマンスは設備投資と連動性が高くなっています。公益事業では多くの場合、設備投資の拡大は、発電容量や電力料金収入の増加要因になることから、株価の上昇につながり易くなると考えられます。公益事業の設備投資拡大のトレンドは十数年おきに到来しています。
これまで、オイルショック後やシェールガスブーム時などにエネルギーシフトが起こり、設備投資が大きく増加しました。直近では、風力・太陽光発電へのシフトやデータセンター増加による電力需要増加などで設備投資が拡大しています。今後は、次世代エネルギーへのシフトも予想されています。
■ (ご参考)米国の規制下の公益事業では、設備投資の拡大は利益増要因に
公益企業の収益のもととなる、公共料金の設定の仕組みは国や地域によって異なりますが、米国の規制下の電力料金決定の例を簡略化してみると、電力料金はその企業の持つ設備(有形固定資産)の金額に長期金利の水準や利益率等を勘案し算定、認可される一定のレートを掛け、それに燃料費などのコストを加えて決定されます。つまり、一定の利益を確保した上で、燃料費や税金、金利負担等は電力料金に価格転嫁でき、設備投資が増え、資産が増えると増益要因となる仕組みです。このため、他の業種と比べて、規制下の公益企業の利益は、物価の変動の直接の影響を受けにくくなっています。
■ (詳細)米国次期大統領トランプ氏の各公約と公益株式への影響
米国次期大統領トランプ氏の公約による、公益業界のファンダメンタルズへの影響は限定的と考えます。
■ 公益株式の1株当たり利益は堅調に推移
データセンター拡大などによる電力需要の増加や、グリーンシフトの進展などを背景に世界公益株式の1株当たり利益(EPS)の市場予想(12ヵ月先)は、堅調に推移しています。
■ 株価収益率(PER)は世界株式と比べて割安な水準
世界公益株式の対世界株式の相対PERは、堅調な業動向が予想されているにも関わらず、相対的に割安な水準となっています。過去の実績では、世界公益株式の対世界株式の相対PERが底打ちした後の世界公益株式のパフォーマンスは、堅調に推移しており、現在は世界公益株式の中長期的な投資機会であると考えています。
■ (ご参考)米トランプ大統領就任による米国の風力発電開発事業への影響
米トランプ大統領は、2025年1月20日(現地時間)に、風力発電開発に関する大統領令に署名しました。洋上風力発電開発向けに連邦政府が所有する土地の新たなリースを一時停止することに加え、洋上および陸上風力発電開発に対する連邦政府によるリース、許認可の見直しを命じるという内容で、これを受けて、1月21日の株式市場では、最も影響が大きい米国の洋上風力発電事業を行うオーステッド(デンマーク、電力)の株価が大きく下落しました。一方、原子力発電関連銘柄などの上昇から、世界公益株式全体(MSCI世界公益株価指数)では小幅な上昇となりました。(株価、株価指数ともに配当込み、米ドルベース)
洋上風力発電開発に対する措置は、これまで市場で広く予想されてきたものです(7頁参照)。洋上風力発電が米国全体の発電容量に占める割合は2024年現在推定で0.03%とわずかであることや、運用チームでは洋上風力発電関連銘柄について慎重な見方をしており、マイナスの影響を大きく受けるとみられるオーステッド(2024年11月末時点で組入なし)などへの投資は控えるべきと考えていることから、公益株式市場全体や当ファンドへの影響は限定的であるとみています。
一方で、陸上風力発電開発に対する措置に対しても、共和党支持の州においても多くの陸上風力発電開発が進んでいることや、今回発表された見直しの影響度合いが不透明である(主に連邦政府所有の土地に影響し、米国内すべての土地には影響しない)ことなどから、運用チームでは、当ファンドへのマイナスの影響は限定的であるとみています。
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