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- 米金融緩和縮小による影響が相対的に小さい世界公益株式
コロナショック後の世界的な株価上昇の一因は、世界的な金融緩和による流動性供給の拡大だと考えています。過去の実績では、流動性の変化は世界株式の株価収益率(PER)の変化と相関が高く、株価の変動要因となっています。一方、世界公益株式は流動性の影響を受けにくく、相対的に株価もPERも安定して推移してきたと考えられます。
世界的に株価が大きく調整するなか底堅く推移する世界公益株式
2021年11月末の米上院委員会での議会証言で、物価上昇圧力の高まりを背景に、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が「物価上昇は一時的」としてきた表現を取り下げ、金融緩和縮小の加速を示唆して以降、これまで好調に推移してきた世界の株式市場は不安定な動きに転じました。
さらに、2022年に入り、FRBが公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で早期利上げの可能性が示され、予想より早い時期にバランスシートの縮小を始めるとの見方が強まったことを受け、米国の長期金利が大きく上昇すると、世界の株式市場はこれまで上昇をけん引してきた世界情報技術(IT)株式を中心に、急落する展開となりました。
一方、世界公益株式は、世界的な株価下落の中でも相対的に底堅い推移となりました。この背景には、これまで各国中央銀行が金融緩和を通じて行った「流動性供給の拡大」の結果、バリュエーション(投資価値評価)が拡大してきた業種とは異なることがあげられます。そのため、世界公益株式は金融市場参加者が現在、懸念している利上げや量的引き締めによる「流動性の縮小」の影響を受けにくい傾向にあるとみられます。
2022年|世界公益株式にプラスの投資環境となるか
2020年のコロナショック後の世界的な株価の上昇の一因は、米国をはじめとした主要国・地域の金融緩和による世界的な流動性供給の拡大だと考えています。景気を下支えするために主要国・地域の中央銀行が金融緩和策を打ち出し、資金を金融市場に大量に供給したことで、リーマンショック後の水準を大きく上回る水準まで流動性が急拡大してきました。
しかしながら、主要国の経済・財政、金融政策や新型コロナワクチンの接種などを経て景気回復がみられるようになったことから、主要国の流動性供給の対GDP比の水準は2020年9月(6ヵ月先行させた日付は2021年3月)をピークに縮小傾向となっています。
株式市場もこの流動性供給の動きにならうように、流動性拡大期には成長株中心に株価が大きく上昇し、株価収益率(PER)が急拡大(株価水準が割高になり)し、流動性縮小期には、成長株中心に株価が大きく下落し、 PERが縮小傾向(株価水準の割高さの解消)となっています。コロナショック後だけでなく、過去の推移を参照すると、リーマンショック時にもみられたように、この流動性の変化と世界株式の株価収益率(PER)の変化とは相関が高く、流動性の変化はPERの変化に数ヵ月先行していることが注目されます。
一方で、世界公益株式のPERの水準からは、流動性拡大や縮小の影響を大きく受けていないことがわかります。そのため、流動性拡大により株価の急上昇も見られなかった反面、足元の流動性縮小を受けた下落率も相対的に抑えられたものとみられます。
米国の金融政策の行方を今後も注視する必要がありますが、今後予想される利上げや量的金融引き締めのステージにおいては、世界の公益企業の安定的な業績に加え、世界公益株式のPERなどのバリュエーション(投資価値評価)の相対的な割安さは改めて評価されるものと期待しています。
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