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- グロイン | 金利上昇局面で世界公益株式に投資すべきか否か?
●過去の実績では金利の急上昇時には短期的に世界公益株式は下落傾向
●中長期的にみると金利上昇局面では世界公益株式は上昇
●スタグフレーション時に相対的に強みを発揮する公益株式の見通しや投資方針に変更なし
米国の大幅利上げ懸念から世界公益株式は下落
金融市場では物価が高騰するなか、主要中央銀行の金融政策動向に一喜一憂する展開となり、株価の変動が大きくなっています。
当ファンドの投資対象である世界公益株式は、6月に入り、米国の更なる利上げを前にして長期金利が急上昇したことから、大きく下落し、基準価額の下落要因となりました。6月15日には米連邦準備制度理事会(FRB)による0.75%ポイントの利上げが実施されましたが、パウエルFRB議長は「この幅での利上げが普通になるとは想定していない」と発言しました。この発言が、市場に安心感をもたらし、金融市場は落ち着きを取り戻し、長期金利は低下、公益株式をはじめ、株式市場は反発しました。
過去の実績では、長期金利が急上昇した際には、世界公益株式は下落する傾向がみられました。ただし、中長期的にみると金利上昇局面では世界公益株式は上昇しています。足元では、世界公益株式はここ数日の安値から上昇しています。
今後の見通し~長期金利の急上昇局面では注意が必要だが、中長期的には投資機会を提供している可能性
長期金利の急上昇局面では、配当利回りが高い株式や金利負担の大きい企業の株式などが下落する傾向がみられ、注意が必要です。ただし、過去の実績では、金利急上昇による株価の調整はその後の長期金利の落ち着きとともに、比較的、短期間で終わったことが多く(下図参照)、金利急上昇による株価の調整は、中長期的には投資機会を提供している可能性があると考えることもできます。
公益株式はディフェンシブ性(景気の変動に左右されにくい特性)が強く、株式のなかでも配当利回りが高い傾向があることから、債券の代替としての投資対象となる場合があります。このため、債券利回りが上昇すると、公益株式の配当利回りの魅力が相対的に低下します。金利の上昇は企業の将来の利益や配当の割引現在価値の低下要因にもなります。また、公益企業は他の業種に比べて設備投資が多く、負債比率が高いことから将来の利払いや資金調達への悪影響が想定されます。金利が急上昇する局面ではこれらの点が投資判断に影響を与えるため、株価の調整が一気に起こると考えられます。実際、過去の実績では米国10年国債利回りが急上昇した際には、短期的に世界公益株式が下落する傾向がみられました(下図参照)。
一方、金利上昇局面では、物価が上昇していることが多く、燃料費なども上昇している傾向にあります。また、利払い負担も増加します。しかし、規制下の公益事業では、通常、こうしたコストの上昇はタイムラグをおいて電力、ガス、水道などの公共料金に価格転嫁することになります。これらのサービスは日常に不可欠なことから、他の業種と比べて価格転嫁が容易です。また、米国では規制下の電力料金は長期金利の水準が料金決定基準の収益率のベースとなっています。このため、金利上昇はタイムラグをおいて公益企業の収益にプラス要因となると考えられます。実際、中長期でみると、金利が上昇する局面では世界公益株式は上昇しています 。
長期金利と公益株式(中長期)~米国長期金利の中期的な上昇局面では、世界公益株式は上昇傾向
長期金利の推移を米国10年国債利回りでみると、1995年12月以降の実績において、米国長期金利の中期的な上昇局面(シャドウ部分)では、電力自由化の混乱局面①を除いて世界公益株式は上昇しています。
今後の見通しや投資方針に変更は?
今後の見通しや投資方針に変更はありません。引き続き、主要国・地域の脱炭素化に向けた政策強化の動きは、クリーンエネルギーへのシフト(グリーン・シフト)を目指す公益企業の株式にプラスになるものと期待されます。当ファンドでは、公益企業のESG(環境、社会、ガバナンス)への取り組みを重視し、公益企業にエンゲージメント(対話)を行い、グリーン・シフトを促しています。
ウクライナ危機を受けて将来的にロシアの天然ガスに依存したくないという欧州諸国の意向は、風力、太陽光、水力などのクリーンエネルギーの拡大を更に加速させることにつながるでしょう。英国やドイツなどでは既にクリーンエネルギーへの移行が進んでいます。当ファンドではそうしたなかでもクリーンエネルギーによる発電の割合が高い企業に注目しています。
物価上昇を伴う景気後退、「スタグフレーション」となった場合、投資対象の世界公益株式への影響は?
金融市場は物価高騰や利上げによる景気後退懸念に一喜一憂する展開となっています。公益セクターは株式市場の中で相対的に物価高騰や景気の影響を受けにくいセクターのうちの一つです。こうした観点から、物価上昇を伴う景気後退、「スタグフレーション」時でも公益企業の事業への影響は他の業種と比べて限定的なものにとどまると考えます。
過去数年間、当ファンドは、規制下事業の事業比率の高い銘柄に組み入れを絞ってきました。
発電燃料の価格や金利などの変動費は規制下事業では価格転嫁が容易にできるため、物価高騰は収益に大きな影響を与えにくい傾向があります。また、電力、ガス、水道は日常に不可欠であることから、景気後退時でも他の業種と比べて需要は大きく減少しないとみられます。
このため景気後退局面では、公益企業の他の業種よりも見通しの確実性が高くかつ持続的な成長は、収益が大幅に減少する他の業種と比較して、より魅力的になります。更に燃料価格が高騰しても、当ファンドが注目する、グリーンシフトに取り組む公益企業は、風力発電や太陽光発電では燃料コストがかからないため、逆に再生可能エネルギーによる発電のコスト優位性が高まります。
化石燃料による発電から太陽光・風力などのクリーン・エネルギーによる発電への移行、「グリーン・シフト」を加速させることは、物価上昇とエネルギー安全保障の懸念に対抗する政策を打ち出す主要国にとっても好ましい動きです。「グリーン・シフト」への政策による後押しが加速すれば、当ファンドが投資する公益企業にとっては、より多くの設備投資をすることが容易になり、より大きな収益を得ることができるようになると考えられます。
現在、運用チームでは当ファンドで組み入れている米国の公益企業各社と順次ミーティングを行っています。金利上昇は現在のところ問題ではなく、電気料金等への政治的介入のリスクは低く、規制当局も「グリーン・シフト」の加速を強く支持しています。各社の現在の市場環境における業績や設備投資計画などに対する見通しは底堅く、これまでのピクテの見解とも概ね一致しています。
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