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- 公益株、年初来高値更新の理由と今後の見通し
●世界公益株式は現地通貨ベースで年初来高値を更新し、主要金融資産と比べて堅調に推移
●米国の長期金利急上昇一服、割安な株価水準、AI等の普及による電力需要の増加やグリーンシフトなどによる良好な利益見通しなどから、世界公益株式への投資機会であるとみる
■ 世界公益株式は年初来高値を更新し、主要金融資産と比べて堅調に推移
世界公益株式は、2024年9月に入ってからも年初来高値を更新し対世界株式相対パフォーマンスの直近のボトムから足元(2024年2月26日~9月12日)にかけては、主要金融資産を上回って上昇しています。
これまで足枷となっていた米国の長期金利の急上昇が一服したことや、膨大なデータを処理する生成AI(人工知能)の利用が広がり、電力消費の多いデータセンターの建設が相次いでおり、関連する公益銘柄に注目が集まったことや、また、世界経済の先行き不透明感が高まるなか、業績が景気に左右されにくく、見通しの安定しているディフェンシブ性が注目されたことなどが、株価の押し上げ要因になったと考えられます。
■ 公益株優位に転換した2000年当時と足元の市場環境が類似
過去の実績では、およそ2000年から2008年にかけて、世界公益株式のパフォーマンスは世界株や世界成長株を上回り、優位となりました。その後、2009年以降は成長株が優位となりました。
足元では、公益株優位に転換した2000年当時の市場環境との類似点がいくつかみられることから、再び公益株が優位となる可能性もあるとみています。
以下が類似している点です。
1)高い水準だった米国の政策金利の引き下げ開始
(6.5%をピークに2001年1月から利下げ開始、5.5%をピークに2024年9月に利下げ開始)
2)株価収益率(PER)は世界株式や世界成長株式と比べて相対的に割安な水準
3)世界の公益企業の設備投資の拡大(2000年代は石炭から天然ガスへの発電源のシフト、足元では、グリーンシフトやデータセンター増加による電力需要拡大)
■ 株価収益率(PER)は世界株式と比べて割安な水準
世界公益株式のPERは、2022年につけた最高値23倍から2024年8月末現在では17倍まで低下してきました。一方で世界株式のPERは、生成AIブームもあり、逆に2022年のボトム16倍台から2024年8月末現在の22倍へと上昇してきており、世界公益株式は相対的に割安感が高まっています。
世界公益株式のPERが低下してきた要因の一つは、長期金利の急上昇による株価の調整です。金利の上昇は、業績面への影響をみると、中長期的には規制下の公益企業の電力料金の算定ベースに反映され、タイムラグをおいて業績に中立ですが、一方で短期的には、公益株式は、安定した配当を提供することから債券代替としても考えられるために、高配当利回りの魅力を低下させ、配当や利益の現在価値を低下させ、株価の低迷要因となり、PERは低下することとなります。
その結果、世界公益株式の対世界株式の相対PERは、増益が予想されているにも関わらず株価の低迷により、割安な水準となっています。過去の実績では、世界公益株式の対世界株式の相対PERが底打ちした後に投資を開始した場合、その後の世界公益株式のパフォーマンスをみると、堅調に推移しており、現在は世界公益株式の中長期的な投資機会であると考えています。
■ 世界的に風力や太陽光発電中心に電力設備の拡大が予想される
世界的に、1)ネットゼロを推進する政策の動きや風力、太陽光発電などのクリーンエネルギーの発電コストの低下、2)AI(人工知能)関連、データセンターや電気自動車(EV)の増加などによる電力需要の拡大などを背景に、風力や太陽光発電中心に電力設備の拡大が予想されています。
風力、太陽光発電などのクリーンエネルギーの発電コストは技術革新による発電効率化や発電施設の大規模化等により低下し、これまでの石炭などの化石燃料による発電に対して経済合理性が伴う(=低コストで発電できる)ようになっています。
■ 公益株式の1株当たり利益は増加が予想される
データセンター拡大などによる電力需要の増加や、グリーンシフトの進展などを背景に世界公益株式の1株当たり利益(EPS)の市場予想(12ヵ月先)は、足元で増加基調が継続しています。
■ (ご参考)設備投資の拡大は、世界公益株式の業績、パフォーマンスに寄与
過去の実績では、世界公益株式のパフォーマンスは設備投資と連動性が高くなっています。この背景には、主な規制下の公益事業では設備投資による新規設備の増加により、電力料金認可の元になる資産額が増加することに加えて、多くの場合、発電容量も増加することから、設備投資の拡大は、増益につながりやすく、株価の上昇要因になると考えられます。
■ (ご参考)米国の規制下の公益事業では、設備投資の拡大は利益増要因に
一般的に世界の規制下の公益事業では、発電などのコストに加えて、そこから得られる利益水準も考慮して、電力料金などの公共料金が各国・地域の規制当局によって決められています。
規制下の電力料金をはじめとした公共料金の計算方法は複雑で国や地域によって異なりますが、当ファンドの投資比率の高い、米国の規制下の電力料金決定の例を簡略化してみると、料金は発電施設等の設備の金額(資産価値、レートベース)に対して一定の利益を確保する算定レート(長期金利の水準や利益率等などを勘案し算定)を掛けて、燃料費などのコストをプラスして設定されます。このため、設備投資を拡大し、発電施設の資産価値が増加すれば、増益要因となる仕組みになっています。
米国の規制下では、電力不足による停電や設備の老朽化による事故などを防ぐため、公益企業に設備投資を増やすと電力料金の値上げが可能になり、利益を増やすことができる仕組みを提供することで、状況に応じて公益企業の設備の更新や拡大を促しています。
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