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- 世界公益株式が軟調な背景について
●世界公益株式は足元、長期金利の急上昇を背景に相対的に軟調に推移
●株価の調整で世界公益株式全体のPERは過去平均や世界株式と比べて低い水準
●強固なバランスシートを持つ企業や、価格転嫁できる規制下の公益企業は相対的に優位
■ 世界公益株式の調整の背景
世界公益株式は長期金利の急上昇を背景に相対的に軟調に推移しています。足元では、主要米国公益企業、ネクステラ・エナジー傘下の、非規制下の上場子会社が金利急上昇を背景に、配当成長見通しの引き下げを発表した後、両社の株価が大きく下落、世界公益株式全体も下落しました。
長期金利の上昇は、公益企業の新規設備投資の資金調達に影響を及ぼすことや、債券の代替として配当利回りの魅力が薄まることなどから、公益企業の株価にマイナス要因となり、今後も注視が必要と考えます。
一方、株価の調整で世界公益株式全体の株価収益率(PER)は過去平均や世界株式と比べて低い水準となっています。
こうした環境下では、より強固なバランスシートを持つ企業や、資金調達コストの上昇をタイムラグを経て価格転嫁できる規制下の公益企業は、相対的に、将来の収益見通しの確実性が高く、安定しているため有利な立場にあり、金利急上昇による株価の調整は、中長期的な投資機会になるものとみています。
■ 長期金利の急上昇局面では、世界公益株式の株価が調整する傾向
過去の実績では、長期金利の急上昇局面では、世界公益株式の株価が調整する傾向がみられますが、中長期的には、世界公益株式の株価は上昇してきました。
■ 相対的に低い世界公益株式の株価収益率(PER)
世界公益株式は株価の調整により、世界公益株式のPERは対過去平均、対世界株式でみて相対的に低い水準となっています。
■ 世界公益企業の利益見通しは相対的に良好
世界公益企業の業績は、2020年から2022年はコロナショック、エネルギー価格の急騰を経ましたが、事業が日常に必要不可欠であることから、他の業種と比べて変動が小さくなりました。
今後の見通しは、1)電力需要の回復が期待されること、2)電力価格に対する政治圧力が少ないと予想されること、3)大口顧客が電力価格の更なる高騰リスクを懸念し2023年から2024年にかけて高い価格で電力購入契約を結んでいること、4)政策の後押しも伴い、グリーンシフトが進むと期待されることなどから、増収増益が予想されています。
■ 世界公益株式見通しと運用方針
経済活動の正常化の進展による景気回復が進んだ一方で、物価の高止まりや欧米の利上げの継続などを背景に、企業業績やマクロ経済見通し、金融政策などに対する不透明感が高まっています。
こうしたなか、公益企業は、発電施設などの長期的に運営される設備に投資し、日常に必要不可欠なサービスを提供することで、収益を拡大しており、短期的なマクロ経済の変動の影響を受けにくくなっています。
主要国・地域では脱炭素化に向けた政策強化の動きが進展しています。風力、太陽光などのクリーンエネルギーへのシフト(グリーンシフト)を促す政策は、クリーンエネルギー発電やこれらの発電を支えるための送電網の拡大を後押しするとみられます。こうした展開は長期にわたって、グリ-ンシフトを目指す公益企業の業績や株価にプラスに寄与するものと期待されます。
ただし、長期金利の急上昇は、公益企業の株価にマイナス要因となり、今後も注視が必要と考えます。
一方、バリュエーション(投資価値評価)は過去平均や世界株式平均と比べて相対的に低水準です。こうした投資環境は世界公益株式の中長期的な投資機会になるものとみています。
規制下の事業では、エネルギー価格や金利の上昇によるコストの増加はタイムラグをおいて、電力価格に反映されるため、中長期的には利益にマイナスの影響を及ぼしにくい収益構造となっています。また、非規制下事業でも、電力の販売価格は長期契約が多く、発電の燃料の調達なども長期契約やヘッジを行ない、大きな影響が出ないようにする仕組みもあります。
当ファンドでは、より強固なバランスシートを持つ企業や規制環境が良好で、収益見通しが安定している米国の規制下事業の比率の高い銘柄の組入れを高位にしています。組入れの約8割は規制下の事業比率が高い公益銘柄です(2023年7月末時点)。
■ (ご参考)金利上昇の公益事業への影響
9月27日に、主要公益企業、ネクステラ・エナジー(米国) (2023年9月26日MSCI世界公益株価指数構成比9.0%)の上場子会社であるネクステラ・エナジー・パートナーズ(米国)(非規制下事業)は、金利の急上昇下、増配目標を下方修正し、同時にネクステラ・エナジーはガス事業の売却を発表しました。この発表を受けて、ネクステラ・エナジーの株価や世界の多くの公益企業の株価も下落しました。
このニュースは再生可能エネルギー事業の資金調達やその成長のために保有する関連資産をその運営企業に売却する必要のある企業に、金利上昇が影響を与える可能性を高めるものとなりました。
ネクステラ・エナジー・パートナーズは再生可能エネルギー発電事業を親会社のネクステラ・エナジーから取得して運営し、親会社のネクステラ・エナジーと少数株主に配当を還元しています。このため親会社のネクステラ・エナジーは子会社からの減配分を自ら保有する資産(ガス事業)の売却により穴埋めし、かつ新規プロジェクトのための資金を株式発行により調達することを回避する動きであると見られます。
ネクステラ・エナジー・パートナーズが以前の増配目標を達成するためには、新規プロジェクトのための資金を負債か株式のいずれかで調達する必要がありましたが、金利の上昇と株価の下落により、資金調達コストが大幅に上昇し、株式発行に関する環境も悪化したため、ネクステラ・エナジー・パートナーズの経営陣は増配を行わない決定をしました。
ネクステラ・エナジーはガス事業の売却により、今後の成長計画のための資金調達リスクが軽減し、バランスシートも強固になったと言えます。同社は、成長パイプラインのための資金についての柔軟性ができ、当初の利益目標は継続するとしています。市場のアナリストの間では、今回の資産売却はネクステラ・エナジーにとってはポジティブであり、非中核資産を妥当な価格で売却する機会であり、財務上の影響は限定的で、基本的な成長見通しは損なわれていないという見方があります。
他のセクターと同様、金利上昇は一部の企業やビジネスモデルに短期的な不確実性をもたらしています。
資金調達コスト上昇と再生可能エネルギーへの旺盛な需要を反映して、電力販売契約(PPA)価格は上昇しています。このため、一部の資金調達に問題のない電力会社にとっては成長機会となり、他の電力会社にとっては、保有する再生可能エネルギー発電資産の運営企業への売却に影響を与える可能性があり、電力会社セクターでは稀な中期的な収益成長期待に不確実性の要素となっています。
こうした環境下では、より強固なバランスシートを持つ企業や、資金調達コストの上昇を価格転嫁できる規制下の電力会社は、優位であるとみられます。
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