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- ロシアのウクライナ侵攻、エネルギー価格高騰で改めて注目されるグリーンシフト
● 欧州委員会は、ロシアの天然ガスへの依存を減らすための草案を発表し、グリーン・シフトの加速を示唆。
●クリーン・エネルギーや水素の開発加速は、当ファンドの中期的な投資にとってプラス。
●欧州各国政府は、欧州連合(EU)の新しい制限的なガイドラインの中で、エネルギー価格の高騰が消費者や企業に与える影響を軽減することを検討しており、当ファンドは2021年から電力価格上昇に対して政治的圧力がかかるリスクのある株式の組入れを削減。
●ロシアのウクライナ侵攻の影響を直接受ける銘柄への投資はなし。
●グリーンシフトが加速する中で、規制下の公益事業への投資は、景気減速の影響を受けにくく、見通しがしっかりしており、長期的かつ構造的な成長を見込む。
何が起きたか
欧州連合(EU)は、安全で安価なエネルギー供給を維持しながら、ロシアからの天然ガス輸入への依存を減らすための戦略を示した草案を発表しました。国際エネルギー機関(IEA)によると、欧州は2021年の天然ガス消費量の約40%をロシアからの輸入に頼っているが、報告書では「ロシアからの化石燃料への依存を段階的に減らすことは2030年よりかなり前に可能である」と述べています。欧州委員会(EC)の報告書では、2022年内にロシアからの天然ガス輸入量を2021年の70%近くまで削減することが可能であると試算しています。
グリーンシフトの加速
ウクライナの危機が、各国が再生可能エネルギー発電の開発を進めるグリーンシフトを加速させることになることは、非常に明らかです。EUはすべての加盟国に対し、再生可能エネルギー開発のプロジェクトが「利用可能な最も有利な手続きの対象となる」よう、許認可プロセスを短縮するよう要請しています。再生可能エネルギーは地産地消型であり、地政学的なリスクに価格が左右される燃料を必要としません。石油や天然ガスの価格が上昇したことで、クリーンエネルギーの経済性はさらに向上し、この技術に投資するケースが増加しました。EUの報告書にあるように、「グリーンシフトを加速することは、排出量を減らし、輸入化石燃料への依存度を下げ、価格高騰から守ることになる」のです。
このグリーンシフトの加速には、電力会社によるクリーンエネルギー発電、蓄電、それらを送電線に接続するための投資が必要です。2030年までに8,000万kWのクリーンエネルギー発電を追加することが目標とされています。これは、再生可能エネルギー発電に関わる電力会社とその送配電事業者にとって大きな機会です。 私たちは、2022年の早い時期に、オーステッド(デンマーク、電力)、ネクステラ・エナジー(米国、電力)といったクリーンエネルギーに焦点を当てた電力銘柄の株価下落局面を利用して組入比率を引き上げましたが、この動きは、これらの銘柄の株価が回復していることを考えると機をとらえていたことが証明され、再生可能エネルギー資産を有するRWE(ドイツ、総合公益事業)とイベルドローラ(スペイン、電力)を引き続き保有しています。
また、EUは既存の目標に加え、2,000万トンの水素製造設備を建設することを提案しています。水素の製造はクリーンな発電の需要を高め、再生可能エネルギー発電の需要を増加させることになります。当ファンドのグリーンシフト銘柄にとっては、さらなるプラス材料となります。
政策対応
EUは、エネルギー価格上昇の影響から消費者と産業を保護するメカニズムも検討しており、加盟国が家庭向けの小売価格を設定することや、影響を受ける企業に対して短期的な救済を提供することを報告書で明らかにしています。これらに関連するいかなる措置も、クリーン・エネルギーへの追加投資を引き続き奨励し、ヘッジをしていない場合、販売にのみ適用されるべきであるとしていますが、EUは、こうした措置の財源として、加盟国が電力会社の利益に一時的に課税できるとしました。このガイドラインは予想以上に厳しく、電力会社のリスクを高める可能性があります。当ファンドでは、2021年に最もこの課税リスクが高いと思われるフランス電力会社(EDF)を売却するなど、リスクの高い銘柄の組入比率を減らす方向に動いてきています。
従来型発電の延長
短期的には、欧州が既存の原子力発電所や既存の石炭発電所を延命させることで、エネルギー供給の安定性をさらに確保しようとする可能性を示唆しています。当ファンドでは、石炭や石油の発電に新規投資する企業には投資しないことにしており、通常、石炭発電所の延命を支持することはありません。しかし、現状では、欧州がエネルギー供給の安定性を維持しつつ、短期的にロシアへの依存度を下げるには、それ以外の選択肢はないと考えています。
当ファンドは、ロシアに資産を持つ企業(ユニパー(ドイツ、系発電・エネルギー販売)やフォータム(フィンランド、電力)など)は保有しておらず、ロシアの天然ガス供給の途絶が問題となる企業への投資も限定的です。エンジー(フランス、総合公益事業)は非保有であり、エーオン(ドイツ、電力)の組入比率は縮小しています。当社の英国の電力会社の保有銘柄(SSE(電力)およびナショナル・グリッド(総合公益事業))は、ロシアからの天然ガス供給がわずか1%であるため、供給途絶の影響は小さくなっています。
当ファンドでは、グリーンシフトの加速により恩恵を受けるまたは、グリーンシフトに大きく関与する規制下の電力銘柄に一貫してポートフォリオをシフトしてきました。その結果、当ファンドはここまで、2022年の株式市場および公益事業セクターと比較して高いパフォーマンスをあげました。ポートフォリオの約70%は、欧州の地政学リスクの影響を受けにくく、世界的なグリーンシフトの加速の恩恵を受ける米国の公益事業会社に投資しており、欧州ではクリーンエネルギー銘柄の組入比率を高めています。この業界の中期的なファンダメンタルズ(基礎的条件)は、ウクライナ危機とそれに伴うエネルギー価格の変動によって強化され、長期的に見通しのきく構造的な成長、つまりマクロ経済の減速による影響を受けにくい成長という、投資の好機を捉えることができる時期に入ってきているとみています。
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