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- グロイン | 運用の振り返りと市場のポイント
● 2024年4月~6月のピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)(以下、当ファンド)の基準価額は、長期金利急上昇の一服に加えて、AI(人工知能)の普及に伴う電力需要増大への期待や相対的に良好な業績見通しなどを背景に、上昇。
● 「グリーンシフト」を目指す公益企業は中長期的な成長が期待され、株価の調整は中長期的な投資機会になるとみる。
■ 当ファンドのパフォーマンス
■ パフォーマンスの変動要因
【2023年7月~2024年6月(過去1年間)】
当該期間でパフォーマンスへのプラス寄与度が大きかった主な銘柄はPSEG(米国、総合公益事業)、サザン(米国、電力)、センプラ(米国、総合公益事業)などでした。PSEGは、投資家向け説明会で、送電・配電ビジネスへの投資額増額を強調した今後の設備投資計画を発表したこと、また同社が将来恩恵を受けるとみられる、AI(人工知能)の普及に伴う電力需要増大への期待などを背景に上昇しました。サザンは、設備投資計画を上方修正したことや、2023年第4四半期決算において利益などが好感されたことに加えて、長期間延期になっていた発電設備の運転が開始されたことなども好感され、上昇しました。センプラは、地政学リスクの高まりによる欧州のLNG価格の上昇や、同社のLNG施設にサウジアラムコ(サウジアラビア)などが出資の意向であるとのニュースなどが好感され、上昇しました。
一方、マイナス寄与度の大きかった主な銘柄は、RWE(ドイツ、独立系電力・エネルギー販売)、エクセロン(米国、電力)などでした。RWEは、2024年に入り欧州の電力価格が下落したこと、また電力価格下落を受けて2024年の収益見通しをレンジの下限に引き下げたことなどを背景に下落しました。エクセロンは、当局の提示した電力料金の認可レート水準が低い水準であったことなどから下落しました。また、デンマークの電力銘柄も金利上昇、税額控除の変更などを理由に、米国の洋上風力発電開発に関連する減損処理が必要であると発表したことなどにより株価が下落しました。
【2024年4月~6月(過去3ヵ月)】
当該期間でパフォーマンスへのプラス寄与度が大きかった主な銘柄は、ネクステラ・エナジー(米国、電力)、サザン、PSEGなどでした。ネクステラ・エナジーは、2024年第1四半期決算の内容が好調であったこと、また米国における電力需要増大への期待などを受け、上昇しました。サザンは、長期間延期になっていた発電設備の運転が開始されたことなどが好感され、上昇しました。PSEGは、同社が将来恩恵を受けるとみられる、AI(人工知能)の普及に伴う電力需要増大への期待などから、上昇しました。
一方、マイナス寄与度の大きかった主な銘柄は、ナショナル・グリッド(英国、総合公益事業)、エクセロン(米国、電力)などでした。ナショナル・グリッドは、5月に増資を発表し株価が大きく下落したことで、マイナス寄与となりました。エクセロンは、電力料金の認可レート水準が予想を下回ったことや2024年第1四半期の決算内容が低調だったことなどを背景に、下落しました。
■ 2024年4月~6月(過去3ヵ月)の投資行動
当該期間の売買に関しては、バリュエーション(投資価値評価)水準が非常に魅力的であること、また再生可能エネルギー開発事業の見通しの明るさなどを評価してRWEを買い増しました。さらに、データセンターによる電力需要の増加などの恩恵を受けるとみられる米国の電力会社を新たに組入れました。
一方、DTEエナジー(米国、総合公益事業)、ネクステラ・エナジー、PSEGなどを株価の上昇を機に一部売却し、利益を確定しました。
■ 今後の見通し、運用方針
世界公益株式は、1)米国の長期金利は低下が予想されているなかで、2)株価収益率(PER)は過去平均や世界株式と比べて割安な水準であり、3)電気自動車(EV)やデータセンターの増加などによる電力需要増加、グリーンシフト(クリーンエネルギーによる発電への移行)による設備投資の拡大などを背景に、業績見通しが堅調であることなどから、現在の投資環境は、中長期的にみて、公益株式への投資機会であると考えています。
さらに、規制下の公益企業は、より強固なバランスシートを持っている企業が多く、資金調達や発電のコストの上昇をタイムラグを経て価格転嫁でき、物価の変動の影響を受けにくいことから、相対的に将来の収益見通しの確度が高く、配当や利益の安定が期待できると考えています。
当ファンドでは、グリーンシフトによる長期的な成長が期待されることから、クリーンエネルギーによる発電の割合が高い企業に注目しています。さらに、米国の規制下事業においては、金利上昇によるコスト増加を電力料金に転嫁する仕組みがあり、こうした規制下事業の比率の高い銘柄は収益見通しが安定していることから、組入れを高位にしています。
■ 中長期保有に当たってのポイント
中長期的には世界的に電力などの需要拡大が予想されており、公益企業の事業環境は良好との見方には変わりありません。
ウクライナ危機をきっかけとしたエネルギー安全保障問題などもあり、主要国・地域の脱炭素化に向けた政策強化の動きが進展しています。米国ではインフレ抑制法(IRA)、欧州ではFit for 55(温室効果ガス削減政策)やリパワーEUなどのクリーンエネルギーへのシフト(グリーンシフト)を促す政策が施行されています。これらの動きは、風力、太陽光、水力などのクリーンエネルギー発電の拡大やこれらの発電を支えるための送電網の拡大を後押しするとみられます。
当ファンドでは、公益企業のESG(環境、社会、ガバナンス)への取り組みを重視し、公益企業にエンゲージメント(対話)を行い、グリーンシフトを促していきます。主要国・地域のクリーンエネルギー政策強化の動きは、グリーンシフトを目指す公益企業の増益につながりやすく、株式にプラスになるものと期待されます。
(以下、当該期間の注目すべきトピックについて解説します。)
■ 世界公益株式は5月に年初来高値をつけ、主要金融資産と比べて堅調に推移
世界公益株式は、2024年5月に年初来高値をつけ、直近の対世界株式の相対パフォーマンスのボトムから足元(2024年2月26日~7月11日)にかけては、主要金融資産を上回って上昇しています。これまで足枷となっていた長期金利の急上昇が一服したことや、膨大なデータを処理する生成AI(人工知能)の利用が広がり、電力消費の多いデータセンターの建設が相次いでおり、関連する公益銘柄に注目が集まったことなどが、株価の押し上げ要因になったと考えられます。
■ 注目ポイント:足枷となっていた長期金利の急上昇の一服
2021年~2023年にかけて米国中心に長期金利が急上昇したため、世界公益株式のパフォーマンスの足枷となってきました。2023年10月には米国の長期金利は当面のピークをつけ、その後世界公益株式は再び上昇トレンドとなりましたが、足元では、AIブームで関連銘柄に資金が流れたことなどが、世界公益株式の上昇を抑える要因となっています。市場では今後、米国の金利は低下が予想されており、世界公益株式の金利面での懸念材料は後退するとみられます。
(ご参考:公益株式と金利の関係)
公益株式はディフェンシブ性(景気の変動に左右されにくい特性)が強く、株式のなかでも配当利回りが高い傾向があることから、債券の代替としての投資対象となる場合があります。このため、債券利回りが上昇すると、公益株式の配当利回りの魅力が相対的に低下します。また、金利の上昇は企業の将来の利益や配当の割引現在価値の低下要因にもなります。更に、公益企業は他の業種に比べて設備投資が多く、負債比率が高いことから将来の利払いや資金調達への悪影響が想定されます。金利が急上昇する局面ではこれらの点が投資判断に影響を与えるため、株価の調整が一気に起こると考えられます。
一方、金利上昇局面では、物価が上昇していることが多く、燃料費なども上昇している傾向にあります。また、利払い負担も増加します。しかし、規制下の公益事業では、通常、こうしたコストの上昇はタイムラグをおいて電力、ガス、水道などの公共料金に価格転嫁することになります。これらのサービスは日常に不可欠なことから、他の業種と比べて価格転嫁が容易です。また、米国では規制下の電力料金は長期金利の水準が料金決定基準の収益率のベースとなっています。このため、金利上昇はタイムラグをおいて公益企業の収益にマイナスの影響をカバーする要因となると考えられます。実際、中長期でみると、世界公益株式は金利の急上昇局面を経ながらも、利益成長とともに、上昇しています。
■ 注目ポイント~ 株価収益率(PER)は世界株式と比べて割安な水準
世界公益株式の予想PERは2022年につけた最高値19倍から2024年6月28日現在では14.3倍まで低下してきました。一方で世界株式の予想PERは、生成AIブームもあり、逆に2022年のボトム13倍台から2024年6月28日現在の18.7倍へと上昇してきており、世界公益株式は相対的に割安感が高まっています。
世界公益株式のPERが低下してきた要因の一つは長期金利の急上昇による株価の調整です。金利の上昇は、業績面への影響をみると、中長期的には規制下の公益企業の電力料金の算定ベースに影響し、タイムラグをおいて業績に中立ですが、一方で短期的には、公益株式は、安定した配当を提供することから債券代替としても考えられるために、高配当利回りの魅力を低下させ、配当や利益の現在価値を低下させることから、予想PERの低下要因となります。
その結果、世界公益株式の対世界株式の相対PERは、増益が予想されているにも関わらず株価の低迷により、2006年以降で最も割安な水準となっています。過去の実績では、世界公益株式の対世界株式の相対PERがボトムをつけた、2009年や、2020年に投資開始した場合、その後の世界公益株式のパフォーマンスをみると、しっかりとした推移を示しており、現在は世界公益株式の投資機会であると考えています。
■ 注目ポイント~良好な世界公益企業の業績見通し
世界の経済成長、生成AI等の普及などを背景にした電力需要と設備投資の増加、電力価格の上昇、グリーンシフトなどによる利益の拡大期待などにより、公益株式の1株当たり利益(EPS)の市場予想(12ヵ月先)は、足元で増加基調が継続しています。
生成AI普及によるデータセンターの需要拡大、電気自動車(EV)の普及などを背景に電力需要の増加が予想されています。電力需要の増加は電力価格の上昇要因の一つとなっています。
クリーンエネルギーの発電コストは、税額控除などの政策の後押しに加え、技術革新による発電効率化や発電施設の大規模化等により、低下しています。これを背景に従来型の石炭火力発電などから再生可能エネルギーによる発電への移行が進むことで、利益の拡大が予想されています。
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