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- 米国の大統領選結果と公益業界への影響
●11月5日に米国大統領選が行われる今回の大統領選では、7州が激戦州となっており、選挙結果による公益業界への影響が注目される。
●今後、数十年にわたって、公益業界の成長をけん引すると考えている第1の波「グリーンシフト」や第2の波「電化の拡大」は、4年の米大統領選のような政治サイクルを超越すると考える。
●短期的には政策によって、特定の技術が促進されたり、阻害されたりする可能性はあるが、公益業界の長期的な成長トレンドは、選挙の結果によって大きな影響を受けることはないとみている。
■米国、両陣営のエネルギー関連政策
•共和党トランプ大統領候補が掲げる政策は、一部の洋上発電に注力する一部の欧州企業にマイナス、ガス関連公益企業にプラスで、公益業界全体では中長期的な成長トレンドに大きな影響はないとみています。
•民主党ハリス大統領候補が掲げる政策は、基本的に、バイデン政権でのエネルギー政策を継続し、全体的に公益業界にとって良好な環境が継続するとみています。
■結論:公益業界の長期トレンドは需要にけん引され、政策の影響を受けにくいとみる
今後、数十年にわたって、公益業界の成長をけん引すると考えている第1の波「グリーンシフト」や第2の波「電化の拡大」は、4年の米大統領選のような政治サイクルを超越すると考えます。
短期的には政策によって、特定の技術が促進されたり、阻害されたりする可能性はあるが、公益業界の長期的な成長トレンドは、選挙の結果によって大きな影響を受けることはないとみています。
【第1の波:グリーンシフト】
グリーンシフトは、以下の理由で政策の影響を受けにくいと考えられます:
1. クリーンエネルギーはすでにコスト競争力がある
2.クリーンエネルギー関連の税額控除がなくなっても税金は電力料金に価格転嫁が可能
3.一度決定した税控除はすぐには撤廃できない制度
4.ハイテク企業中心に政策に関係なくクリーンエネルギー電力供給契約が拡大
5. 関連政策は主に、連邦レベルではなく州レベルで決定され、クリーンエネルギープロジェクトは主に共和党支持者の多い州において行われ、雇用を創出しており、これらのプロジェクトに反対するインセンティブが小さい
【第2の波:電化の拡大】
生成AI(人工知能)利用の拡大によるデータセンター建設の加速や拡大、電化の拡大などは、需要の拡大が原動力となっており、政策の影響を受けにくいとみています。
■ トランプ大統領候補の選挙公約と公益業界への影響
共和党トランプ候補が掲げる政策は、洋上発電に注力する一部の欧州企業にマイナス、ガス関連公益企業にプラスで、公益業界全体では中長期的な成長トレンドには大きな影響はないとみています。
【1 パリ協定からの離脱】
✓公益事業の中長期的な見通しに大きな影響はないとみる
ー 米国で事業を展開する再生可能エネルギー関連企業(ネクステラ・エナジー(米国、電力)、AES(米国、電力)、RWE(ドイツ、独立系発電・エネルギー販売)、イベルドローラ(スペイン、電力))などの株価に短期的にマイナスの影響を与える可能性があるとみています。
ー トランプ大統領は、米国における洋上風力発電の開発を抑制することを強く主張しています。洋上風力発電の許可は連邦レベルで決定されるため、トランプ候補が大統領となれば、ここに影響を与える可能性があります。しかし、洋上風力は米国の発電容量のわずか0.03%であり、基本的には重要ではないと考えます。
【2 液化天然ガス(LNG)の新規輸出手続きに関する現行の一時凍結を大統領再就任時に即時解除】
✓一部の関連公益企業にプラス、公益業界の全体に大きな影響はないとみる
ー 液化天然ガス(LNG)事業を展開する公益企業にプラス(センプラ(米国、総合公益事業)など)とみられます。
ー ガスパイプラインを運営する企業に小幅にプラス(ウィリアムズ・カンパニーズ(米国、石油・ガス・消耗燃料)、キンダー・モルガン(米国、石油・ガス・消耗燃料)、サウス・ボウ(カナダ、石油・ガス・消耗燃料) など)と考えられます。
ー LNG輸出を増加させることは、ガス価格を上昇させる可能性があり、天然ガスによる発電の相対的なコストにおいて太陽光や風力などのクリーンエネルギーのほうがより割安になるため、クリ-ンエネルギーの発電容量拡大を促すことになるとみられます。
【 3 アメリカの豊富なエネルギー資源の開発を阻止することを目的としたすべての政策に反対
4 天然ガス採掘とパイプライン開発に対する連邦政府の許可を早め、生産量を増やし、エネルギーコスト削減】
✓一部の関連公益企業にプラス、公益業界の全体に大きな影響はないとみる
ー 石油・ガス生産量の増加で、パイプラインを運営する公益企業にプラス(ウイリアムズ・カンパニーズ、キンダー・モルガン、サウス・ボウなど)と考えられます。
ー 石炭生産量の増加とコスト低下で、鉄道会社に短期的にプラス(ユニオン・パシフィック(米国、陸上運輸)、カナディアン・パシフィック(カナダ、陸上運輸)など)とみられます。
ー 米国の天然ガス価格はすでに底値に近いため、どのような政策を取ろうとも、石油・ガス会社は不採算なガスの増産はしないと予想されます。
【5. 1年以内、遅くとも1年半以内にエネルギー・電気料金を少なくとも半額にする】
✓中期的には規制下の電力会社にとってプラスになる可能性があるとみる
ー この政策は、トランプ候補のインフレ削減目標に関連しています。なお、インフレ率はすでに低下しており、米連邦準備制度理事会(FRB)の目標である2%を僅かに上回る程度で、エネルギー価格もすでに大幅に下落しており、今後大きくエネルギー関連の政策を転換する必要性が少ないと考えられます。
ー トランプ候補は、石油・ガス生産を奨励するための法律に署名することができますが、実際に増産するかどうかは、最終的にはエネルギー企業次第と考えられます。増産に経済的合理性が伴わなければエネルギー企業は増産することはないと予想されます。
ー 米国の規制下では電力料金の決定は連邦レベルではなく、ほとんどが州レベルで決定されているため、トランプ候補は直接電力料金を引き下げることはできない制度になっています。
ー 規制下の電力企業では、エネルギー価格(燃料価格)は電力料金に転嫁されているため、エネルギー価格の変動は公益企業の利益への直接の影響はありません。政策によってエネルギー価格が大きく低下した場合には、その分電力料金は低下しますが、電力企業の利益には大きな影響はないとみています。
【6.インフレ抑制法(IRA)(2022年8月署名)を廃止】
✓インフレ抑制法(IRA)とその中のクリーンエネルギー税控除を完全に廃止するのは非常に困難と考えられる
✓廃止されたとしても公益企業に大きな影響なしとみる
ー 多くの公益企業の経営陣の見解も同様です。
≪廃止されないとみる理由≫は以下の点です。
1.超党派の支持を得た法案であり、廃止には議会の支持が必要です。
2.共和党の上院議員や下院議員は、クリーンエネルギー産業における雇用創出など、IRAの恩恵の多くが共和党の支持者が多い州のものであることから、法律の廃止に反対するとみています。
ー 2024年8月18日、下院共和党議員18人が、IRAのクリーンエネルギー税控除廃止に反対する書簡を議長に提出しました。つまり、大統領が単独でこの法律を廃止することは不可能であり、共和党議員からも廃止についての支持を得るのは難しい。この法律は産業界からも広く支持を得ている。
ー インフレ抑制法は電力会社にとってわずかながらプラス要因となっているが、これが変わる可能性は低いとみています。
■ ハリス大統領候補の選挙公約と公益業界への影響
民主党ハリス候補が掲げる政策は、基本的に、バイデン政権でのエネルギー政策を継続し、全体的に公益業界にとって現行の良好な環境が継続するとみています。
【1. LNG輸出禁止】
✓一部の公益企業にプラス、全体には大きな影響なしとみる
ー 液化天然ガス(LNG)関連事業を展開する(センプラなど)、ガスパイプラインのインフラ企業(ウィリアムズ・カンパニーズ、キンダー・モルガン、サウス・ボウなど)に小幅にプラス。
【2. クリーンエネルギーの研究開発への投資を継続し、世界をリードする】
✓現在のポジティブな傾向が継続すると考える
ー 電力会社にとってはプラスであり、現在のポジティブな傾向の継続
ー 許認可改革は、再生可能エネルギー発電と送電網プロジェクトの迅速な開発を可能にし、プラスに働く可能性がある。許認可の迅速化は、実は超党派の課題であり、共和党と民主党の両方が支持している
ー ハリス候補はまた、送電税控除の延長も提案している
【3. 「フラッキング」と呼ばれる天然ガスを取り出す技術による採掘を禁止するつもりはないことを明らかに】
✓影響はないとみる
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