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- 新型コロナウイルスと不動産市況
新型コロナウイルスを契機として、多くの企業が従業員の仕事の仕方を抜本的に見直しているようだ。特にリモートワークの活用は、平時に戻ったとしても続けられる可能性が強い。東京一極集中の下、都心部のオフィス市況は高騰してきたが、状況は大きく変化するのではないか。影響が本格的に顕在化するのは、今秋以降と想定される。
転換点となる新型コロナウイルス:多くの企業がリモートワークの活用検討へ
7月6日、富士通が「通勤という概念をなくす」として、グループ社員8万人に関し在宅勤務を標準とする働き方に移行すると発表した。結果的にオフィスの規模は現在の50%になるとのことだ。日立も同様の改革に乗り出すなど、ポストコロナ期における働き方を抜本的に見直す企業は少なくない。日本全国が緊急事態宣言の下にあった4月14〜17日、経団連が会員企業に実施した調査では、回答企業の97.8%がテレワーク・在宅勤務を導入しており、36.1%は対象が勤務者の8割以上に及ぶと回答した。つまり、企業には問題点の把握も含めてノウハウの蓄積が進んでいるのだろう。
これまでも技術的な対応は十分に可能だったはずだ。しかし、在宅勤務・テレワークを実現するには、1)時間管理をベースとする人事評価体系、2)印鑑など法令上の規制、社内の規定や慣例、3)管理職を中心とした心理的な抵抗‥などが障害となり、多くの企業において実現が見送られてきた。
しかし、新型コロナウイルス禍で止むを得ずリモートワークの実施に踏み切ると、問題も浮き彫りになる一方で、その効用が広く認識されるようになったのではないか。もちろん、全ての職種がリモートで対応できるわけではなく、人が物理的に集まることが必要な場面もある。それでも、在宅勤務やテレワークの活用は、生産性を改善し、コストを削減する上で、企業にとり重要な経営上の選択肢になったと言えよう。
不動産市況:今秋から本格的な影響が顕在化か?
総務省の就業構造基本調査を使い、事務従事者、管理的職業従事者、専門的・技術的職業従事者をオフィスワーカーと大雑把に定義した場合、 1992年に304万5千人だった東京都内の該当者は、2017年は1.5倍の449万5千人になった。年平均の増加率は1.6%だ。
全国的にみれば、生産人口は1995年の8,726万人をピークに年率0.7%のペースで減少してきた。しかしながら、企業による東京への一極集中は、バブル崩壊後も着実に進んでいるのである。
三鬼商事の統計では、リーマンショック後の最悪期に9.7%まで上昇した都心5区のオフィス空室率は、今年2月に1.49%へと低下した(図表)。需給逼迫を背景に賃料は高騰しており、2013年12月に1万6,207円だった坪単価が、この6月は1.4倍の2万2,880円だ。
不動産事業者のザイマックスによると、東京23区における企業の1人当たりオフィス面積は3.71坪なので、従業員1,000人をリモートワークに移行、オフィスを縮小したと仮定した場合、単純計算で年間10億円の賃料節約になる。さらに、保証金が不要になる上、水道光熱費や通勤手当などを考慮すれば、相当なコスト削減ができるだろう。
従業員にとっても、毎日の通勤から解放されるだけでなく、時間の使い方や居住場所の選択肢が拡がるなど、メリットは小さくない。もちろん、それで生産性が下がれば意味はない上、評価体系や就業規則、雇用契約の見直しなど、必要とされる作業は少なくない。また、企業としての一体感維持や情報の共有にも工夫が必要ではないか。そうした障壁を乗り越える決断をするか否かは、優れて経営判断の問題だ。
それでも、平時においてリモートワークを導入する企業は飛躍的に増えるだろう。当然、オフィス市況に与える影響は大きく、様々なビジネスが変化を求められることになるはずだ。
企業の意思決定や貸主への解約の告知期間を考えると、不動産市況への影響は今秋から本格的に顕在化するのではないか。
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