- Article Title
- 安倍首相退陣論についてPart2
安倍晋三首相が辞意を表明したが、率直に言ってこのタイミングは意外だった。ここから自民党は総裁選挙が当面の焦点になり、特にその方式が注目されるだろう。もっとも、後継首相は早期に解散・総選挙の実施を検討する可能性が強く、財政策は一段の拡大、金融政策も大きな変化はないと考えられる。むしろ、米国大統領選挙の方が影響は大きそうだ。
安倍首相辞意:最初の攻防は自民党総裁選挙のやり方
安倍晋三首相が同じ病で2度目の辞任を余儀なくされた背景は、潰瘍性大腸炎の持病が想像以上に悪化していたと言うことだろう。次のポイントは、ポスト安倍となる自民党総裁選挙の方法ではないか。自民党の党則第6条第2項には「総裁が任期中に欠けた場合」の規定があり、原則として「(総裁公選規定により)後任の総裁を公選する」とある。しかし、ただし書きとして、「特に緊急を要するときは、党大会に代る両院議員総会においてその後任を選任することができる」と規定された。つまり、原則は党員投票を行うのだが、「緊急」ならば自民党所属の国会議員のみで次期総裁、即ち総理大臣を決められることになっている。
現在、自民党の国会議員は衆参両院で398名であり、このうち安倍総理の属する細田派が98名、安倍総理に近い麻生副総理率いる麻生派が55名、この2派を合計すれば153名で、全体の38.4%に他ならない(図表)。これに岸田派か竹下派が加われば、所属議員の過半数に届く計算だ。現在の主流派としては、石破茂元自民党幹事長が後継となることを避けるため、両院議員総会での次期総裁選出を目指すだろう。その場合、安倍首相に近い麻生太郎副総理兼財務相が有力候補となる可能性がありそうだ。岸田文雄政調会長も候補だが、主流派が結束できるか不透明と言えよう。
仮に公選法規定による総裁選になった場合、主流派は候補者を乱立させ、党員投票を分散させることで、石破氏が党員投票で突出することがないように努力すると見られる。
このケースでは、岸田氏の他、茂木敏充外相、西村康稔経済財政担当相、稲田朋美自民党幹事長代行なども立候補するかもしれない。
いずれにしても、総裁選挙は9月中旬以降と見られ、それまでは自民党内において厳しい闘争が行われるだろう。また、衆議院の任期が2021年10月であることは変わりない。次の内閣総理大臣は、就任後、早期に衆議院を解散する可能性があるのではないか。
政策:総選挙を意識して財政拡大か!?
今回の安倍総理の退任により、日銀の金融政策が大きく変わる可能性は少ないと考える。仮に内閣総理大臣に殉じて日銀総裁が交代したり、政策が変われば、それは日銀の独立性を自ら否定することになりかねない。また、新型コロナ禍がまだ続くなか、そもそも政策変更は難しいのではないだろう。
一方、政府は、総選挙を強く意識し、2020年度第3次補正予算の準備を進めることなどで、景気浮揚へ強い意欲を示す可能性が強い。国民への給付金や中小事業者への支援金などが改めて検討されることも考えられる。いずれにしても、当面、財政赤字の拡大には目を瞑り、歳出の拡大が行われるのではないか。
マーケットについては、7年8ヶ月に渡って続いてきた安定政権が終わり、また解散・総選挙の確率が高まるとすれば、その不透明感を嫌気する動きが出そうだ。ただし、財政の拡大が続き、金融政策もそれを支える方向で変化がないとの認識が広がる場合、早期に落ち着きを取り戻すだろう。
むしろ、市場の関心は米国大統領選挙にシフトするのではないか。トランプ大統領が再選されても、ジョー・バイデン前副大統領が勝っても、その政策の注目度は高い上、日本の新たな内閣総理大臣が米国大統領とどのような関係を構築できるか、これもマーケットは注視するだろう。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。