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- 「菅小劇場型政治」とマーケット
菅義偉内閣が発足した。閣僚及び自民党役員の人選は堅実である一方、最大派閥の細田派、そして安倍前首相への配慮が滲むものと言えよう。政策については、マクロ面での大掛かりな成長戦略ではなく、国民に分かり易いミクロ政策を積み上げる「小劇場型」を目指すようだ。当面の最重要課題は解散の時期であり、その判断が政権の安定度を決めるのではないか。
菅新政権の人事:滲む堅実さと細田派への配慮
菅新内閣の顔ぶれを見ると、第4次安倍第2次改造内閣からの再任8人、横滑り3人、同じポストでの再起用が3人であり、堅実さを意識した布陣に見える。また、総裁選での勝利を牽引した派閥の領袖である麻生太郎副総理兼財務相、二階俊博自民党幹事長の続投は、派閥に属さない菅首相にとり政権を安定させるための配置なのだろう。
自民党の主要5役は総裁選で菅氏を支持した5派閥が分け合い、閣僚は党内最大派閥の細田派から5人を起用した(図表1)。そのなかには、安倍晋三前首相の実弟である岸信夫防衛相も含まれ、細田派及び安倍前首相への配慮も滲み出る人事と言えるのではないか。
政策:小劇場型政治によるミクロ政策
自民党総裁選への立候補を表明した9月1日の記者会見以降、菅首相は、規制改革の重要性を強調、行政改革と合わせた担当大臣には、麻生派ながら自らに近く、突破力が強いとされる河野太郎氏を防衛相から横滑りさせた。
規制改革には、雇用制度などマクロ型規制と、個別産業・企業に関わるミクロ型規制がある。第2次安倍政権は、発足当初、マクロ型規制の改革を成長戦略の軸としていた。一方、菅首相は、携帯電話料金やダムの活用、地銀の再編など、ミクロ面での改革に注力する模様だ。
背景には、自民党内での基盤が強くない同首相が政権を安定させるめには、国民に分かり易く実現可能な課題を着実に処理することが必要との考えがあるだろう。それだけに、雇用制度改革や産業の新陳代謝促進などマクロ面での改革には消極的な模様で、マクロ経済政策は安倍政権から受け継いだ財政・金融政策を踏襲すると見られる。
外交では現実主義に徹した安倍前首相だが、基本姿勢は国家観に基づき、マクロ政策を重視する「理念型政治」だった。一方、小泉純一郎元首相は、大きな課題として郵政民営化を掲げ、それに邁進した「劇場型政治」だろう。
これに対し、菅首相の政策に取り組む姿勢は、ミクロに特化した「小劇場型」と言えそうだ。日本経済の成長率を引き上げ、株価が上昇軌道に乗るには、マクロ面での改革が必須と見られるが、菅政権に関し、この点への過大な期待は避けるべきではないか。また、菅首相は外交の経験が少なく、首脳外交なども不安材料と言えるだろう。
スタートダッシュの重要性:解散・総選挙の判断が鍵を握る
過去10人の首相は、内閣発足後1年以内に世論調査での支持率が20%台へ落ち込み、そこから引き上げに成功したのは小渕恵三元首相のみだ。その他の7人は、1年半以内に退陣に追い込まれた。一方、最初の1年間に内閣支持率が50%を切らなかった小泉、安倍(2回目)両首相は、長期政権を維持している。
つまり、菅首相にとり、スタートダッシュは極めて重要だ。特に、衆議院の任期満了まで1年に迫るなか、解散の時期の選択が、政権安定の鍵を握るのではないか。
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