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米大統領選 「ブルーウェーブ」による増税は杞憂か?
田中 純平
2020/10/09

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概要

米大統領選における第1回目のTV討論会とトランプ米大統領による新型コロナ感染を受けて、マーケットではバイデン氏が大統領選に勝利する見方が強まっているだけでなく、民主党が上院と下院で過半を占める「ブルーウェーブ(青い波)」シナリオも織り込まれつつある。バイデン氏が公約として掲げる増税は、株式市場にとって杞憂に終わるのだろうか?



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「ブルーウェーブ」となればバイデン氏の政策が通りやすくなる可能性

 民主党のバイデン氏が大統領選で勝利し、さらに上院と下院でも民主党が過半を占める「ブルーウェーブ」シナリオとなれば、バイデン氏が打ち出す政策案が連邦議会を通過する可能性は高まるだろう。

 バイデン氏の政策案で注目されるのが「増税」と「インフラ政策」だ。バイデン氏は連邦法人税の引き上げ(21%→28%)や個人所得税の最高税率の引き上げ(37.0%→39.6%)、富裕層のキャピタルゲイン課税の強化などを公約として掲げており、実現すれば株式市場に対しては「逆風」になることが想定される。その一方で、バイデン氏は4年間で2兆ドルのインフラ政策案(主にクリーンエネルギー投資)も打ち出しており、これは株式市場にとって長期的には「追い風」になる政策だ。

 

 

なぜ増税の可能性がある「ブルーウェーブ」シナリオで株は上がるのか?

 端的に言って、バイデン氏の政策案は、株式市場にとって「増税」によるマイナス要因と「インフラ政策」によるプラス要因が入り混じった政策だ。しかし、マーケットは「ブルーウェーブ」シナリオの可能性を先取りするかたちで、足元で株式を買い上げている。なぜ、ここにきて「ブルーウェーブ」シナリオが株式市場にとって「買い材料」になったのか?

 要因としては3つ挙げられる。1つ目は、共和党と民主党との間でなかなかまとまらない「追加景気対策」に対する期待感だ。ホワイトハウスも連邦議会も民主党が制することになれば、「追加景気対策」もまとまりやすくなる。2つ目は、コロナ禍の景気悪化を懸念して増税を先送りするシナリオだ。大統領就任1年目のバイデン氏が、自ら景気腰折れのきっかけを作ることは無いとする楽観的な見方だ。そして3つ目は、そもそも増税による株式市場への影響は長期的にみれば限定的だということだ。戦後1945年から1968年にかけて連邦法人税率は40.0%から52.8%へ大幅に引き上げられたが、この期間S&P500指数は長期的には右肩上りで推移しており、増税が必ずしも長期的な株安を意味するわけではなかった(注:戦前はこの限りではない)。今回は巨額のインフラ投資も控えていることを考えれば、株式市場の反応にも納得ができる。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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