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環境意識の高い中国のZ世代
2021/10/07

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概要

香港に拠点を置くサステナブル・ビジネスのコンサルタントであり、ザ・パーパス・ビジネスの創設者であるパトリシア・ドワイアー氏は、環境意識の高いZ世代の動向が、中国の競争力維持に及ぼす影響力を次のように述べています。



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中国企業は競争の優位性ををもつことの重要性を良く知っています。中国が世界第2位の経済大国になり急成長を遂げたのは、この競争優位性が前提となっています。世界のトップブランドは、低コストで高品質な中国のサプライヤーの門を叩いています。一方、中国の国内企業は、国際市場で他の新規参入企業を圧倒できることを証明しつつあります。

 

しかし、次の成長段階に進むには新しい競争力のある武器が必要です。「10年後、15年後にどうなっていたいか?は、すべての企業が考える課題です。」と、香港に拠点を置くサステナブル・ビジネス・コンサルタント、パトリシア・ドワイアー氏は語ります。「ビジネスを成長させたい、規模を拡大したいのであれば、価格は今後も重要な要素ですが、サステナビリティ(持続可能性)の重要性は時間の経過とともに高まるでしょう。」

 

これは、中国の若者と世界の若者を結びつけている新しい消費行動です。ミレニアル世代(80年代初頭から90年代半ばに生まれた人々)とZ世代(90年代半ばから2010年までに生まれた人々)の意識は、気候変動の危機によって形成されたものであり、ブランドや雇用者に対して、成長だけでなく良い行動を望む傾向が強くなっています。

 

アジア・ソサエティのフェローでもあるドワイアー氏は、ビジネスリーダーや投資家に対し、この世代交代の影響を無視することは危険であると助言しています。「彼らは声高で好奇心旺盛で、私たちが彼らの年齢のときにそうだったように、より多くを要求します。」と、彼女は言います。

 

インターネットのおかげで、彼らは環境問題や社会問題についてより密接につながり、より良い情報を得ている、と彼女は付け加え、「彼らは必要な時には、年長者や専門家に質問をすることを恐れない」と語っています。

 

2019年に9ヵ国を対象にした調査によると、中国のZ世代の消費者は世界で最も環境に配慮していることがわかりました。世界Z世代の平均13%に対し、中国の同世代の4人に1人が、「環境にやさしい消費に関心がある」と答えたのです。これらの懸念は、今後10年ほどで経済活動が活発になるにつれ、購買の意思決定に反映されていくものと思われます。また、国連の17の持続可能な開発目標(SDGs)については、欧米諸国に比べて、中国のあらゆる年齢層の人々の認知度が高いと言われています。また、あるレポートによると、中国の成人の90%がSDGsについて聞いたことがある、という結果が出ています。これに対し、世界平均では74%、米国では50%にとどまっています。

 

このような傾向を背景に、今こそESG(持続可能な世界の実現のために、企業の長期的成長に重要な環境(E)・社会(S)・カバナンス(G)の3つの観点。)を企業の経営課題に組み込むべきです。ESGを“あると便利”程度にしか認識していない企業は、中国に広がるグリーン投資の波がもたらすビジネスチャンスを手に入れることは出来ません。「サステナビリティのロードマップが必要であり、それがまだであれば、ビジネス戦略の中に組み込む必要があります」とドワイアー氏は語ります。

 

なぜなら、経験豊富な若い消費者や投資家だけでなく、従業員からの厳しい目にも耐えられるよう、サステナビリティは透明性が高く、一貫性がなければならないからです。「私のチームの約半数は35歳未満で、彼らはいつも『なぜ?』と問いかけてきます。レポート、トレーニング、戦略など、なぜ私たちはこのようなことをしているのか、そして、なぜ今の状況があるのか。これらの問いに対して、若い人材がますます答えを知りたがるようになっています」とドワイアー氏は語ります。これらの答えを提供できない企業は、ライバル企業に人材確保競争で負けてしまう危険性があります。

 

ドワイアー氏が2015年に成功していた企業でのキャリアを辞め、香港で「ザ・パーパス・ビジネス」を立ち上げて以来、多くのことが変わりました。サステナビリティのパイオニアとして、ドワイアー氏と6人のスタートアップチームは、まず、『目的に基づくサステナビリティの考え方』を市場に教育しなければなりませんでした。「私たちが起業したとき、“目的”というのは、非常に早すぎる理念でした。香港では、利益が目的ではないとは誰にも言えなかったので、最も難しいビジネスでした。」

 

しかし、初期の頃とは考え方が変わり、現在は機関投資家と個人投資家の両方がESGを意思決定に組み込んでいます。「ファンドがESG戦略を要求することが多くあり、それが主流になりつつあります」とドワイアー氏は言います。「アジアの企業では、“目的”という言葉が使われるようになっています。」

 

積極的に発言する若い世代の台頭により、サステナビリティが成長の鍵となる次の段階へと進んでいきます。サステナビリティがもたらす競争上の優位性を理解した、国際的な視野を持った優秀なビジネスリーダーたちが誕生しています。ドワイアー氏は、彼らを「グローバルシェイパー」と呼んでいます。若く、野心的で、ESGに触発された進歩の最前線にいる人々です。「彼らは、新しい製品やイノベーションの最先端にいます。私は、彼らが世界の状況を大きく変えると思います。意識と知識のレベルが高く、彼らはそれをやり遂げるだろうと楽観的に考えています」。

 

 

パトリシア・ドワイアー氏の略歴

2008年: シャングリラ・グループ初のCSR、サステナビリティのトップとして入社

2012年: グループ初のサステナビリティレポートを発行し、シャングリラが国連グローバル・コンパクトに参加し、ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックスの構成銘柄に認定される道を開く

2015年: 「ザ・パーパス・ビジネス」を設立。

オックスフォード大学「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ」修了

2016年:  世界経済フォーラム「海洋に関するグローバル・アジェンダ・カウンシル」参加

2018年:  ハーバード大学「21世紀グローバルリーダーシップと公共政策」修了

2019年:  香港に拠点を置くチャリティー・エンリッチの取締役会に参加

2021年: 「ザ・パーパス・ビジネス」、英国と米国に拠点を拡大

パトリシア・ドワイアー氏は、バーミンガム大学で「グローバリゼーションとガバナンス」の修士号を取得しています。

 

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