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- 回復に向かう、世界の旅行需要
世界の旅行関連業界は、コロナ禍で苦境にたたされましたが、世界的な感染拡大による懸念が後退しつつある中、再生に向けて動き出しています。
旺盛な旅行需要、本格回復が期待される旅行関連業界
世界の経済活動・社会生活がコロナ禍から正常化に向かう中、世界の旅行関連業界は回復しつつあります。足元で先進国を中心に、景気の先行きに不透明感が残るものの、たとえ景気後退に陥ったとしても、旅行関連需要の回復は続くとみられます。短期的に、ビジネス目的の旅行に関しては慎重な見方をする必要もあるかもしれませんが、レジャー目的の旅行(観光旅行)に関しては旺盛な需要が続くものと予想されます。
コロナ禍において、人々は厳しい移動制限や渡航制限が数年にわたって実施されたため、消費者の旅行を再開したいという意欲が高まっていること、また、コロナ禍で家計における余剰貯蓄は積みあがっていること、引き続き労働市場は堅調であることなどを総合的に勘案すると、物価上昇や金利上昇といったマイナス材料はあるものの、旅行関連業界を取り巻く事業環境は良好であると考えられます。
主要ホテル運営企業における客室稼働率は、アジアを除いて、ほぼコロナ禍前の水準に回復しています。2023年1月に中国政府がゼロコロナ政策を終了したことで、回復の遅れていた中国を中心にアジア市場についても今後回復に向かうと予想されます。
米国をはじめとした主要中央銀行は、インフレ抑制のため金融引き締め姿勢を崩していませんが、こうした金融引き締めにより、景気後退も懸念されています。しかし、たとえ景気後退局面入りしたとしても、過去の景気後退局面に比べると、短期間で脱する可能性が高く、消費動向へのマイナスの影響は小さいとみられます。こうしたことから、特に、観光旅行需要については回復基調が続くものと期待されます。
多くのホテル運営企業は、客室料金を大きく引き上げてきましたが、このことも旺盛な旅行需要がある証左であると考えます。世界のホテルにおける宿泊料金は2022年において平均18.5%引き上げられたと推定されています。2023年にはさらに8.2%の値上げが予想されています。ちなみに、コロナ禍の2020~2021年の2年間では20%強の値下げが実施されたと推定されています。
地域別にみると、一足先に経済活動の正常化が進んだ地域では既にコロナ禍前の2019年の水準に回復しているところもありますが、2023年には回復が遅れていた地域も含めて、世界的にコロナ禍前の水準を上回ると予想されます。
観光旅行需要は旺盛で、これまでに大きく回復した地域もありますが、今後もさらなる拡大余地があるとみています。
2022年前半は米国の人々による欧州への観光旅行が、大きなトレンドとなりました。旅行者数としてはコロナ禍前の2019年の2/3程度の水準にとどまったものの、前年(2021年)同期比では大きく増加しました。
ビジネス目的の旅行も回復に向かう
2022年にみられた旅行需要の回復は、主に観光旅行がけん引役となりましたが、ビジネス目的の旅行についても、長期的にみれば良好な見通しが描けると考えています。ただし、短期的には、景気減速・後退などの影響を受けて回復がさらに遅れるリスクもあることは留意が必要です。
ビジネス目的の旅行に関連したいくつかの分野では、既に明るい兆しもみられています。会議や大規模イベントなどを手がける業界では、需要の回復に手ごたえを感じている模様で、2023年は繁忙を極める可能性がでてきています。開催される会議やイベントの数は増加し、また、これらに出席・参加する人数も大幅に増加するでしょう。会議・イベント開催のための予算が拡大する中で、開催費用などがさらに引き上げられる可能性があります。
コロナ禍では多くの会議やイベントが控えられてきましたが、その反動もあり、足元で大きく需要が回復しています。そのため、会議・イベントの開催費用は世界的に増加しています。2022年には出席者1人当たり平均費用はコロナ禍前の2019年比で約25%増加したと推定されています。2023年はさらに7%程度の増加の可能性があるとみています。
長期的な動向|サステナブルな社会の実現に向けた取り組みも
また、長期的な動向としては、サステナブルな社会の実現に向けた機運の高まりの中で「移動手段」の問題には焦点があたりやすく、このことは旅行業界にとって大きな影響を与える可能性があります。
飛行機、自動車など様々な移動手段は温室効果ガスを排出すること、また、昨今のエネルギー価格上昇などもあり、旅行関連業界は、環境関連技術(化石燃料を使わない電気輸送手段を含む)への投資を強化する可能性があります。
旅行関連業界は、短期的な景気の波を乗り越えて、長期的には良好な展望が描けるとみています。
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