- Article Title
- テクノロジー・セクターにはChatGPT以外にも投資の好機がある
生成人工知能(生成AI)は、投資家を熱狂させたかもしれませんが、テクノロジー・セクターが大きな進化を遂げるストーリーの、エピソードの一つに過ぎません。
子供の宿題、ソーシャル・メディアへの投稿、雑誌の記事や書籍の執筆等の全てをChatGPTがこなすことは明らかです。生成人工知能(生成AI)の登場は、人々の想像力をかきたて、投資家が改めてテクノロジー・セクターに注目するきっかけとなりました。とはいえ、生成AIは、明るいことは確かだとしても、拡大し続けるデジタル・ユニバースを構成する星の一つに過ぎない、というのが現実です。生成AIだけに気を取られていると、その他の豊富な投資の機会を見逃すことにもなりかねません。
ピクテ・アセット・マネジメント(以下、ピクテ)は、1997年以降、テクノロジーに特化したテーマ株式運用を手掛けており、真に投資可能な新しいテクノロジーと偽物を見分けられる豊富な経験を有しています。
投資家は、AIが新しいテクノロジーではないことを理解しておくべきです。人工知能の開発を目指す研究は、チェッカー(チェス盤を使ってするゲーム)用ソフトの開発を皮切りに、過去70年間続けられています。AI研究はその後、大きな進化を遂げたものの、課題は山積しており、ChatGPTの開発は長い道のりの通過点に過ぎません。
生成AIの実用例は、黎明期のイノベーション(技術革新)の多くとは異なって、現実的かつ具体的です。オンラインゲーム用のキャラクターやストーリーを考えたり、財務報告書を作成したり、カスタマー・サービスの一環として、複雑さを増す一方である顧客の質問に対処することなども可能です。とはいえ、生成AIのアウトプットの正確性や、使用に際しての倫理的な問題、さらに商用化の実現可能性等、解決すべき課題は山積しています。
長期的な可能性
生成AIは、テクノロジー革命で主要な役割を果たすことの出来る重要な開発ではあるものの、ディープラーニング(深層学習)の一部であり、ディープラーニングは機械学習の一部であって、世界のデジタル化を促進する多くの要素の一つに過ぎない、ということを理解しておくことが重要です。このように複雑な状況は、投資の機会が多くの人が考えている以上に、広範で具体的なものだということです。
生成AIの他に、自然言語処理(NLP)、機械学習、予測分析などを併せて考えると、AIには、生産性の大幅な向上を通じて世界経済を再構築する大きな可能性が秘められており、すでに、様々な業界で実用化されています。
例えば、オンライン・メディア業界ではターゲット広告やおすすめ商品に、eコマース業界では顧客体験の向上に、流通業界ではサプライチェーン管理の効率化に、旅行業界では顧客の需要に見合った宿泊価格の設定やイベントの予定作成などに使われています。
AIの普及は、経済に計り知れない程の影響を及ぼす可能性があると思われます。AI業界が、向こう10年で世界経済に及ぼす影響は7兆米ドルに達する可能性がある、とゴールドマン・サックスは試算しています。
テクノロジー・セクターの全体像
AIは、このように大きな可能性を秘めながら、技術革新の一部に過ぎません。
世界は、急速なスピードでデジタル化しているように見えても、この先の道のりは長いからです。
例えば、26兆米ドル規模の世界の小売市場で、eコマースが占める割合は全体の5分の1に届きません。また、クラウド・コンピューティングはIT支出全体のわずか10%、スマートフォンなどを使ったデジタル・ペイメント(電子決済)に至っては、カード取引決済全体の6%に留まります。
いずれも、向こう5年間で年率平均2桁台の伸びが予想されます。経済の低成長局面では、事業ならびに投資の両面で、魅力ある機会が呈されているということです。
AIや自動化を基盤とするデジタル社会も、生産性低下の解決という喫緊の課題に対する答えになり得ると考えます。
人口の高齢化と柔軟な働き方への移行が世界的な人手不足を悪化させる状況では、自動化の導入が急務になる、とピクテのマルチアセット運用担当ストラテジストは予測しています。また、サプライチェーンの再構築や、よりコストの高い国内や近隣国への生産施設の移転圧力が、こうした傾向に拍車を掛けることも予想されます。
戦術的な強み
テクノロジー・セクターは2023年の上昇相場を受け、わずか数ヶ月前と比べて、バリュエーション面での魅力が薄れています。とはいえ、上昇相場の一因が、ChatGPTが公開される前年にあたる2022年の出遅れ局面からの反発であることには留意が必要です。
テクノロジー銘柄のリターンの源泉としては、PER(株価収益率)の、もう一段の上昇よりも、企業の業績予想の上方修正の方が大きいと考えます。業績予想の修正は、株価の上昇(ひいてはPERの上昇)を後追いする傾向が強いのですが、これは、証券会社の株式アナリストが、特に、市場の上昇局面において、景気サイクルの転換点を早期に見極められず、予想の修正が遅れることが多いためだと考えます。ピクテが運用するファンドのテクノロジー・セクターについては、今後1年間のリターンの源泉は、EPS(一株当たり利益)予想の上方修正(+28%)がPERの上昇(+16%)を上回っています。MSCI世界IT指数と比べ、PERの上昇幅が小さく、EPS予想の上方修正幅が大きかったということは、アクティブ運用の価値を明確に示していると考えます。
テクノロジー企業の業績が、今後もコンセンサス予想を上回り、アナリストによる上方修正が続くと考える理由は次の通りです。ピクテの投資先企業は、営業レバレッジが高いことで大きな恩恵を受けること、換言すると、その大小にかかわらず、売上の伸びを営業利益の大幅な改善に転換する能力を備えている、ということです。売上の伸びが安定し、その後再び、伸びの勢いが増す状況は極めて重要です。さらに、メタ、グーグル、アマゾン、マイクロソフト、スプランク等ですでに起こっているように、営業費用の縮小によって、営業レバレッジは増幅します。
2023年4~6月期には、テクノロジー企業の約90%が事前予想を上回る決算を発表していますが、今後数四半期は、こうした状況が続くことが予想されます。
テクノロジー・セクターは、債務比率が低い等、足元の環境では、特に有効なその他の強みも持っています。ピクテが運用するファンドのテクノロジー・セクター組入銘柄は、全体ではネットキャッシュがプラスであり、EBITDA(金利・税金・減価償却前利益に対する純負債倍率)が1.6倍であるMSCI世界株価指数の構成銘柄と比較しても、金利上昇局面ではとりわけ魅力的です。
ピクテでは、投資対象の中でも先行きの見通しが特に明るい以下の4つの分野に注目しています。
・ パブリック・クラウド・プラットフォーム
AWS(アマゾン)、アジュール(マイクロソフト)、グーグル・クラウド・プラットフォーム(アルファベット)、オラクル等のパブリック・クラウド大手は、AIの導入を可能にすると考えます。コンピューティング、ストレージ、ネットワーキング等、クラウド・プラットフォーム企業が提供するサービスに対する需要は、AIを搭載したアプリケーションの普及に伴って、増す一方です。機械学習や(生成AIを含む)AIは、膨大なデータでの学習を必要とする、大規模で複雑なモデルの開発に伴って、拡大し続けています。このようなモデルのトレーニングには時間と高い費用がかかるため、パブリック・クラウド・プラットフォーム企業は、AI用半導体チップやインフラストラクチャー・オプションを用いてイノベーション(技術革新)を続けており、従って、他企業に先駆けて、AIの新しい波から、直接、収益を上げることが出来ると考えます。(IT調査大手の)ガートナーは、パブリック・クラウド市場は、年率平均20%前後の成長を続け、2032年までに2.5兆米ドル規模に拡大する、と試算しています。
・ eコマース
インターネットユーザー1人当たりの平均消費額は、2015年以降、倍増していますが、今後も増加基調が続き、向こう4年間の消費額は、1.4兆米ドルを上回ることが予想されます。ユーザー体験を改善し、売上を伸ばし、ブランド・ロイヤリティを支えるためのデータの活用には大きな可能性が潜んでいます。オンライン事業を展開する小売業者は、利益率の高いインターネット広告をプラットフォーム上に掲載するビジネスモデルを構築し、オンライン取引から収益を拡大しています。
・ アプリケーション・ソフトウェア
日常生活のデジタル化が進むに連れて、企業はソフトウェア投資を拡大し、より革新的なソリューションを求めていますが、成長が期待される投資対象分野の一つがクラウド事業です。自社のソフトウェアにAIを取り込むことが出来る企業は、競争優位の恩恵を享受する公算が大きいと考えます。ソフトウェア市場は、収益性ならびに営業レバレッジが高い成長市場であり続けると考えます。
・ 実現可能技術
AIやその他のデジタル技術が機能するには、これまで以上に高度な半導体が必要です。半導体業界は範囲を拡大し続けており、パソコン用事業は引き続き顕在ですが、モビリティ用半導体やAI用半導体が伸びの勢いを増し続けています。価格を抑えつつ、パフォーマンスやパワーの向上を促す鍵となっているのがイノベーションです。市場の統合や高い研究開発費用が、参入障壁、ひいては、価格決定力を高め、投資対象としての市場の魅力を増しています。
ChatGPTや生成AIの背後にあるテクノロジーは、デジタル・ユニバースの長期的な成長性を支える最新のイノベーションに過ぎないと考えます。ピクテの投資先企業は、高度で進化し続ける技術を可能にし、開発および利用の実績を持つ革新的な企業です。こうした企業は、ニュースの見出しを飾る次のイノベーションを有することから、生成AI市場が成熟するに連れて、その可能性を活かし、収益化する態勢を整えています。
アクティブ運用を行うピクテは、新しいアイデアや投資の機会を常に注視していますが、同時に、分散の効いたポートフォリオを構築し、城を敵から守る濠のような優位性に焦点を当てた運用を行うことが、長期的に優れた成果を上げる最善の道だと確信しています。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・グループの海外拠点からの情報提供に基づき、ピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集し、作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。
手数料およびリスクについてはこちら
個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。
MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。