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- 各国中央銀行の最新動向
先週の主要中央銀行の発表から、経済成長や金融情勢を犠牲にしてでも、インフレ抑制を優先する姿勢が強まったことが分かりました。
米連邦準備制度理事会:1994年以来の75bpsの利上げの次は?
6月15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)から、米連邦準備制度理事会(FRB)は依然として経済データおよび金融情勢の悪化に対して限定的な反応を示していることが分かります。ボルカー元議長が1980年代に行ったような極端な利上げをFRBが繰り返すことが懸念されており、燃料や食品価格を含むヘッドラインインフレ率の上昇がFRBの意思決定に大きな影響を及ぼしています。
7月に50bps、9月、11月、12月に各25bpsの利上げが実施された場合、2022年末のFF金利は2.75-3.0%に到達すると予想されます。これは、最新のFRBの「ドット・プロット」が示している2022年12月の中央値である3.4%を下回ることになります。今後数ヶ月の経済成長率はFRBの予想を下回るとみられており、2023年初旬から景気後退が緩やかに始まる可能性があります。非農業部門雇用者数を中心に、様々な経済データが景気減速の兆候を示していることから、FRBは最終的に利上げサイクルを終了させることになるでしょう。
しかしながら、FRBが市場の予想以上に金融引き締めを加速させる可能性もあります。例えば、7月に75bpsの追加利上げを実施し、その後の会合ごとに50bpsの利上げを実施するシナリオも考えられます。CPI(特に食品・燃料価格)、賃金上昇率、期待インフレ率(ミシガン大学調査に含まれる消費者主導のインフレ期待を含む)は、いずれも極めて重要な判断材料となります。
ECB:市場分断化防止策と利上げの見通し
直近の原油価格の動きと予想を上回る5月のヘッドラインインフレ率から、ユーロ圏のインフレ率は年後半にピークを迎えると予想されています。供給制約、対面型サービス(特に観光関連)の需要回復、エネルギー価格の高騰により、今後数ヶ月間インフレ圧力は継続すると思われます。
先週ECBは、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の償還金再投資に対して柔軟性をもたせることと、関連委員会に「新たな市場分断防止策設計の加速」を要請したことを発表し、債券市場に安心感を与えようとしました。
緊急会合で詳細の発表はありませんでしたが、市場分断防止策の実施は回避できないと思われます。新たな措置の導入により、ECBは利上げのペースを加速させることが可能となるでしょう。
短期的には大幅な利上げが実施される可能性もありますが(7月に預金金利の50bps引き上げ)、他方でECBの利上げが市場予想より早く終了する可能性もあります。
PEPP償還再投資可能額は小さくありませんが、深刻な市場分断が生じた場合、資金不足に陥る可能性はあります。ECBは新たな措置を導入する前に、毎月最大100億ユーロのPEPP再投資を周縁国で実施できると考えられます。ECBが中期的にPEPPをキャピタルキー(各国の経済規模に応じて定められたECBへの出資比率に基づいて国債購入の割り当てが決められること)の適用から除外し、中核国国債の償還金を周縁国国債に再投資することができれば、状況は一変すると思われますが、実施には大きな困難が伴います。
新たな市場分断防止策は7月21日の会合で発表されることが期待されており、無制限の国債買い切り制度(OMT)を参考に設計されると考えています。理想的には、この新政策には買い入れ総額に制限がなく、さらに国別債券投資額の制限を回避するため、他の資産購入プログラムと保有資産を統合することもないでしょう。このような設計によって、投資のタイミングや国別投資額には十分な柔軟性が与えられると考えます。またこの制度下では、加盟国がヨーロピアン・セメスターの下で欧州委員会の勧告に準拠していさえすれば、ECBの買い入れ対象となることが予想されます。またECBは、金融政策の伝達を強化する観点から、PEPPより短く、OMTよりも長い2年から5年満期程度の債券を中心に買い入れを行うことになると見込まれます。ECB関係者は、追加資産買い入れによる過剰流動性の影響を緩和するために、ECBがドイツ国債を含む他の証券を売却する可能性を示唆しています。その一方で、政治の観点からの反対意見ももっともであり、この措置は無秩序にすべてのユーロ圏国債の利回りを大幅に上昇させるリスクも孕んでいます。
最後になりましたが、ECBが最終的に「市場分断化」の定義と介入を正当化するスプレッドの水準、言い換えれば「秩序ある」スプレッド変動と「無秩序な」スプレッド変動を区別する方法を開示するかはまだ不明です。この点については、今後も不明確なままである可能性があります。
英イングランド銀行:大幅な利上げは実施されず
イングランド銀行(BOE)は他の主要中央銀行より先行して利上げを開始していますが、他の主要中央銀行に比べ、経済成長データに注目していることが分かります。英国経済が直面している厳しい経済環境を考慮すると、預金金利の引き上げは早い段階で終了する可能性があります。英国の月次GDPは特に低調で、4月は-0.3%、3月は-0.1%、2月は0.0%となりました。
スイス国立銀行:9月にも大胆な政策実施が期待される
スイス国立銀行(SNB)は6月16日、政策金利を50bps引き上げ、-0.25%としました。今回の利上げは2007年以来の利上げであり、7月に予想されるECBの利上げに先行するものでもあります。SNBがこれほど大胆な行動に出たのは、おそらく3つの要因があると考えています。第1に、先日FRBが75bpsの利上げを発表したこと、第2に、ECBが7月に市場分断化を防ぐための新しいバックストップ措置を導入する可能性(これによってECBはより速いペースで利上げを実施することができる)、第3に直近の為替市場の動きが挙げられます。SNBは、今回の利上げの目的は「インフレがより広く財やサービスに波及することを防ぐ」ことであると述べました。
SNBは条件付きインフレ予測を2022年の2.1%から2.8%、2023年の0.9%から1.9%、2024年の0.9%から1.6%に大幅に見直しました。リスクとしては、為替レートや他の中央銀行の金融政策に影響され、政策金利の引き上げがより大胆になっていることです。SNBは現在、量的引き締め(QT、バランスシートの積極的な縮小)を積極的に検討していますが、現段階でSNBが保有証券を売却する環境はまだ整っていないと考えています。
日本銀行:高まるプレッシャー
日本銀行は、非常に厄介な立場に追い込まれています。日本国内の経済状況は、日銀が超低金利の金融政策を維持すべき根拠が存在していることを示唆しています。内需によるインフレ圧力はほとんどなく、消費は回復し始めましたが、ペースはとても緩やかです。雇用市場も回復しつつありますが、依然として賃金の大幅な上昇はみられていません。また、外需(特に中国)が弱まったことにより、日本の輸出の成長率も鈍化しています。
その一方で、金融政策の点でのFRBとの乖離は、日銀が対米ドル為替で強い圧力にさらされていることを意味しています。3月上旬以降、円は対米ドルで約15%下落し、一時1米ドル135円台と1997年以来の低水準になりました。エネルギーや食料の価格高騰を招き、円安は国民の不安の種となり、政治的な問題にも発展しています。黒田東彦総裁は在任中初めて急激な円安は経済全体に悪影響を及ぼすと認めざるを得なくなりました。
以上を踏まえると、今後数ヶ月の間に日銀の政策が何らかの形で調整される可能性が高まっているといえます。一つの可能性として、イールドカーブ・コントロール(YCC)を満期がより短い債券を対象にすることです(例えば、10年国債利回りの固定から5年国債利回りの固定に移行し、長期金利の上昇を可能にする)。
もう一つの選択肢は、為替市場への直接介入です。これは財務省が決定権を握っていますが、日銀が実施することになります。一部の日本政府関係者は、これ以上円安が急激に進むことの危険性を警告しており、為替介入の可能性を示唆し始めています。為替介入のタイミングを予測することは難しいですが、介入前にはより頻繁な警告がみられると思われます。
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